自分の思いが相手に伝わらない時があります。

伝わらないだけではなく、誤解されて伝わり相手に不快な思いをさせるときがあります。

介護サービスの現場で、そのような誤解が生じ、お客様が不快な思いを抱いた場合、どのような理由があろうとも、事業者が反省するところから始めないと、相手に事業者側の価値観を押し付けて、それを相容れないことも相手の責任だと決めつけ、関係が途切れて終わりという結果しか残せなくなります。

お客様に来て頂いてはじめて成り立つサービスなのですから、お客様の苦情は自身の問題として受け入れるべきです。それはサービス提供側の考え方やサービス提供方法に、顧客ニーズとは相いれないものが存在する結果であると考える必要があります。そう考えない事業者は、いずれこの厳しい時代の中で淘汰されざるを得ません。

お客様の声によって、自らのサービスの品質をアップするという気持ちが重要です。お客様の苦情は、我々のサービスの品質向上のヒントであると考えることが重要です。

勿論、理念は重要ですが、その理念を実現する方法を限定して考えてはいけません。理念を実現する方法は、顧客ニーズと別次元のところに存在するわけではなく、その実現には様々な方法があるのです。むしろお客様は、それぞれの個性を持った方々なのですから、その実現方法がたったひとつの方法であると考える方がどうかしているのです。

そのことは、お客様の要求がすべて受け入れられなければならないという意味ではないし、お客様に媚びることが事業者の責務であると言っているわけでもありません。

いくらお客様であっても、法律を犯す恐れのある要求や、社会通念上理不尽と判断できる要求に対しては、事業者はすべて応える義務はないし、自己決定と言っても、それはすべてが許可される無制限の自由のことではありません。個人の権利は、他者の権利を尊重する義務を伴っており、市民法や道徳法、機関の機能による制限が生ずるのですから、お客様が要求できることも、当然その範疇の中にあるものだという前提条件があります。

そういう前提を承知したうえで、お客様の苦情については、まず真摯に受け止めるというところから始めなければならないのです。

つい先日のことですが、当施設併設の通所介護事業所の担当者より、年末のイベントに関連して、景品を利用者の方々に渡したいので予算を計上したい旨の要望がありましたので、企画書を提出するように指示し、その内容を読んで必要な予算であるとして認めました。

通所介護事業所は、今年度に入って主要スタッフが変わったこともあり、サービス内容を全面的に見直している最中でもあり、この予算付けもその一環であると考えましたが、ふと思ったのは、いままではどうしていたのか?ということです。たしか利用者の方に景品を渡すというイベントは、この時期に毎年行っていたはずですが、あらためて考えると、そこには特別な予算付けはしておらず、通常の運営費の中で対応しておりました。

その理由は、昨年までも景品はお出ししていたのですが、それは職員手作りの何かで、例えばそれは道路に落ちていた野生の鹿の角を使って作ったコースターであったり、通常のクラブ活動の中で作る作品をそのまま景品にしていたりということでした。

その中にも利用者の方に喜んでいただけるものは多々あったのですが、昨年、利用者からクリスマスなどの特別な行事を行う際の景品としてはいかがなものか、もっと良いものが欲しいというクレームがあったそうです。

通所介護の職員からすれば、お店で売られている商品より、日常の中にある材料を使って手造りをしたものを渡す方が、心のこもったプレゼントになると考えた結果だろうと思われます。

その考え方自体は、どこからも批判を受けるものではありません。

しかしそれが本当に、お客様として来てくださっている方々をおもてなしするにふさわしいプレゼントであるのかということは別問題です。相手は立派な大人であり、社会人なのですから、手作り感を重視しすぎた結果、品疎なもの、幼稚なものになっていないかという視点も必要だと思います。

利用者の皆様は、当事業所を選択して通ってくれているわけですから、当事業所のサービスに対して肯定的な思いを持ってくれている方がほとんどです。そのような中からのクレームですから、これは重要な指摘であると考えるべきです。

そういう意味で、結果的にクレームにつながった送りものを見直して、少し予算をつけて喜んでいただけるものにしようとする考え方はあってよいと思います。そこからさらに工夫が広がればよいのですから。これは何もかもをお金をかけて解決しようとするという問題ではなく、少しの予算付けを行って、工夫をするという意味だと考えます。

その結果は、再度検証すればよいだけの話ですから

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