今後の介護支援専門員に求められる重要な役割は何かと聞かれたら、あなたはどのように答えるだろうか?

介護支援専門員が担うべき役割は様々で、答えを一つに絞るのは難しいかもしれない。しかし介護保険制度始まって以来の大改正が控える今、あえて一つの答えを出すとすれば、それは地域包括ケアシステムの幻想を振り払って、新制度の中で零れ落ちる住民ニーズを拾い上げる役割りであると言えるのではないだろうか。

そのためにはまず介護支援専門員が、地域包括ケアシステムの構築が急がれている背景には、財源論が存在するということを理解する必要がある。

地域包括ケアシステムとは、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみな らず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常 生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制(平成25年3月地域包括ケアシステム研究会報告書)とされているが、同時にそれは、団塊の世代が全て75 歳以上となり、医療ニーズを併せ持つ要介護者の増大が見込まれる2025年に向けて、保険料と公費で支えられている介護保険制度の持続可能性を高めるために必要とされているという側面があるのだ。

つまり地域包括ケアシステムとは、限りある財源を必要性の高い部分に効率的に投入するという目的があり、必要性の薄い部分へは、できるだけ公費を投入しないという意味につながる。

その中で医療と介護の役割分担と連携を強化するという意味は、2014年度の診療報酬改定において、地域包括ケア病棟の新設など医療機関の病床区分の再編を行い、入院期間の短縮を図り、在宅復帰機能を強化したという流れの川下に、次期介護保険制度改正が位置し、介護の分野でも在宅生活の限界点を更に高め、要介護度の高い高齢者が在宅生活を続けるための支援を強化するという意味がある。
(※なお、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本」という意味は、地域社会で在宅生活を送る場所は、必ずしも「自宅」とは限らず、要介護者の状態像に応じた「住み替え」を求めているということにも注意が必要である。)

このように地域包括ケアシステムとは、財源削減論と一体的に考えられるシステムであるということを理解せねばならない。このシステムが構築された先に、薔薇色の地域社会ができるなんて考えるのは間違いなのである。むしろ地域包括ケアが目指す在宅生活の限界点を更に高めるという意味は、インフォーマル支援の限界点を高めるという意味も含んでおり、それは家族などの介護負担が今以上に増える可能性を内包したシステムである。そして軽介護者(要支援者含む)については、できるだけ公費をかけずに、自己責任という名の自助を求めていくシステムでもある。

介護支援専門員にそうした理解がないと、インフォーマルな支援者の悲鳴に気が付かずに、システムの奥深くに、システムの光が当たらず泣いて暮らす地域住民を増やす結果になりかねないのである。

地域包括ケアシステムとは、少子高齢社会において十分な財源確保が難しい時代において、必要最低限のサービスを担保するというシステムでしかないことを十分理解しておいてほしい。

そこでは国がすべての介護ニーズに対応する財源を確保することは不可能なので、地方自治体に一定の財源と権限を与え、その限られた財源の中で、地方自治体ごとに知恵を絞って最低限のセーフティネットの構築することを促すシステムであり、そうであるがゆえに地域格差は確実に生じるであろうし、限られた財源であるがゆえに、そのシステムの恩恵を受けずに、自助が強く求められる住民も増えるのである。

地域包括ケアシステムという名のもとに構築される、できるだけお金をかけないシステムの中では、零れ落ちる住民ニーズが出てくるだろう。その時に介護支援専門員に求められる視点は、こぼれ落ちたニーズを、不必要な介護ニーズと決めつけない視点である。それは必要性が薄いのではなく、地域包括ケアシステムというものが対応していない瑕疵(かし)であると考える必要がある。瑕疵は繕う必要があるのだ。

その時に介護支援専門員には、利用者視点からの代言機能がより強く求められるだろう。

例えば、法制化される地域ケア会議を、行政によるケアプランチェックの場と勘違いせず、行政機関と一体となって個別課題の検討を積み重ね、地域課題を抽出する場であるという共通理解のもと、その課題を解決する社会資源を構築するソーシャルアクションにつなげていくという考え方が重要になってくる。

どちらにしても地域包括ケアシステムによって、要介護高齢者は地域の中で手厚く支援されるという幻想を持たないことが大事である。

介護支援専門員は、徹底的に利用者の視点に立って、システム上の瑕疵をみつけ、修正のためのアクションが求められることを自覚する必要があるだろう。
見えない涙
画像は、動画「LOVE〜明日につなぐ介護」の中のスライドです。

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