当施設で44日間の看取り介護を行って、旅立って行かれた92歳女性のデスカンファレンスの結果を報告したい。

(家族の評価)
ご家族からのアンケートより
1.職員の対応について:『満足している』(理由:食事・寝具など用意してくださりとてもうれしかったです。みなさんに見送りしていただいてありがとうございました。)
2.医療・看護体制について:『満足している』
3.介護サービスについて:『満足している』
4.設備・環境について:『満足している』
5.全体を通して:『満足している』

・長女より「本当に長くお世話になりました。みなさんにみてもらっていたので、安心でした。ばあちゃんも幸せだったと思います。」とのお話を伺っています。

・孫より「看取り介護をして本当に良かったと思っています。兄(もう一人の孫)が北海道に着いた午後5時くらいから無呼吸状態が続いて間に合わないかと思ったけど、そのあと呼吸も落ち着いて兄に会う事ができて良かった。あの日みなさんが帰りますと挨拶をして帰ったあとのことだったので、ばあちゃんは、みなさんが帰るのを待っていたのかもしれません。あの後も呼吸状態は落ち着いていたのですが、兄と話をしていてふとばあちゃんのほうを見ると呼吸が止まっていて…。まるで眠るように亡くなりました。一緒の時間を過ごす事ができたので良かったと思っています。ありがとうございました。」とのお話を伺っています。

(看護部門の評価 ・ 課題)
〇〇〇〇〇により全身レベルの低下、摂食障害あり今後の回復見込みなく、〇〇〇より看取り介護開始となる。ご家族も施設でできる範囲以内での処置希望しており、点滴と酸素実施したが、ご本人の苦痛を最小限に防ぐことができたと思います。また息を引き取る際には、ご家族付き添いのもとご本人にも最期まで安心できる環境だったと思う。

【担当ユニットケアワーカー】
・もともと他の方と関わることが好きな方だったので、少しでも寂しくない様にと思っていたが、看取りが開始になる前から状態が悪くなかなか離床出来ず、部屋にいることが多かったので寂しい思いをさせてしまったかと悔やまれる。ただ、状態が悪くなってからは他ユニットCWや他職種の方、家族の方が顔を見に来てくれることが増えた面では、部屋に居ても一人ぼっちではなかったのかと思う。

・亡くなった日に、家族の方が面会に来られずっと〇〇〇さんの側にいてくれ亡くなる時もお孫さんに看取って貰えたこと・亡くなってから翌朝まで一緒に過ごせた事は本当によかったと思う。

・今回、担当CWだけではなくユニットのCW全員が〇〇〇さんの事を考え、対応の相談や検討をすることが出来ていたように思う。その部分は、今後もどの利用者に対しても続けて行っていけたらと思うし、他ユニット利用者が看取りになった時に、そういう想いで訪室する事に繋がっていけたらと思った。

・〇〇〇さんが亡くなってから、静養室で家族の方と一緒に過ごされていた。和室に布団を用意したり、静養室の畳に横になれる準備はしていたが、〇〇〇さんの側を離れたくないという家族の思いから、翌朝まで家族の方も静養室で過ごされていた。翌朝ユニットCWが静養室に行き「少しでも休めましたか?」と声を掛けると、「ソファーを持って来てくれたから休めたよ」との事。〇〇〇に確認すると、夜中椅子を並べて横になっていたからソファーを運んでくれたとのこと。家族の方がとても喜ばれていたので感謝です。

・看取りが開始になる前から、臥床して過ごされる時間が多く、食事が摂取出来ない時間が長かったので「誰よりも傷が出来やすいし、出来たらもう治らない。絶対傷を作らない様にしよう」という思いが、ユニットCW全員が思い行動に移せていた様に思う。結果傷ひとつ作らずに最期を迎えることが出来た事は良かった。ただ拘縮が強かった為、オムツ交換や体交時に苦痛表情が見られる事が多く、痛い思いをさせてしまった。今後、拘縮予防や拘縮が強い方への対応の仕方を学べる機会があったらと思う。

【担当ユニット以外のケアワーカー】
・スタッフの心に“やらされている”という受け身の気持ちが無いように感じました。“〇〇〇さんの為にやってあげたい”“〇〇〇さんの為にきちんとやろう”という自主的な気持ちで行っている姿勢を随所に見ましたし感じました。

・常に“看取りになったから行う”のではなく、“いずれは看取りになってしまうだろう”ということを意識しているから“今、出来ること、してあげられることを考え行う”という〇〇〇の一念がユニットスタッフに響き、今回も〇〇〇さんにとって最も良い看取り介護に結び付けることが出来るのだと感じています。この流れを他ユニットにも広げるためには、先ず私自身が何をすべきかが自身の課題となりました。

【ケアマネジャー】
・看取り介護となる前より全身状態が徐々に低下していたが、それに伴い周囲の環境を整える等の準備をして看取り介護の移行を迎えられていた。援助内容に関しても、少しずつ看取り介護を意識した援助内容になっていたため、大幅な変更等なく援助を実践することができていたと思う。食事面に関してはシリンジを使った援助を取り入れた。おやつなど、数口でもスプーンで摂取できるようになった時期もあった。ただしこの援助が本当に妥当だったのか、今でも考えてしまう事がある。一口でもおいしいと思える時間が、少しでも長く味わえたと思いたい。

・ご家族の方に対する対応として、担当の〇〇〇より度々相談があった(急変時の連絡の流れはどうしたらいいか等)。本来であれば、私が気にかけなければならない事であったと反省する。しかし相談を持ちかけてくれたことで看護師にも協力を得ながら、ご家族と最期について相談をすることができ実際最期にお孫さんたちが傍にいるところで静かに最期を迎える事ができた。家族との関わりが多かった職員だからこそ気づく事ができた部分であり〇〇〇さんの代弁者としての役割を十分果たすことができたのではないかと思う。今後は私も一人ひとりのご家族に対して細かな配慮を忘れず関わっていきたいと思う。しかし一人では手が回らない事や至らない事もたくさんあるので、どんな小さなことでも構わないので教えてほしい、相談してほしいです。

・和室の準備をしたが結局使わず最期を迎えた。片付けをしようと思っていたが、すっかり忘れてしまった。気づいたときは進んで手伝おうと思うが、もし忘れている等あれば、遠慮なく声をかけてほしい。

(給食部門の評価 ・ 課題)
訪室時、声がけに対して反応が薄く、顔を見に行ってもなんて声をかけたら良いのか戸惑うことが多かったです。看取り介護になってからも初めのうちはジュースを提供していましたが、間もなくして食止めになり、食事での援助が出来なくなってしまったことが残念でした。看取り介護中は食止めになることが大半で、体調の良い時の為にと用意している食べ物も、一度も口にすることなく亡くなる方が多いですが、必要とされた時にはすぐに提供できるよう常に準備だけはしていきたいと思います。

(施設長の評価・課題)
担当ユニット職員が、小さな変化に気づきながら対応している姿が印象的でした。一番近くで気づこうとする姿勢が見られました。〇〇〇さんは訪室しても反応がない状態のときが多く、声もかける機会が少なかったのですが、担当ユニットの職員がこまめに声掛け対応していたように思えます。

(総合的な評価 ・ 課題)
・〇〇〇さんの身体的負担ができる限り軽減できるような、細やかな援助ができていた看取り介護であったと評価する。特に、担当の〇〇〇を中心に〇〇〇ケアワーカー一人ひとりが〇〇〇さんの事を心から思い、援助を丁寧に実施していたことが随所に感じられた。他ユニット・他職種からも保清面・環境面においての評価が高く、ケアが行き届いていたということが誰の目から見ても明らかであり最期まで苦痛が少ない生活が送れたのではないかと評価する。ただし昔からみんなと一緒に過ごす事が大好きだったが、看取り介護移行後はあまり離床する事や他者と過ごす時間を作れなかったとの反省が挙がった。同室者も状況を理解し声をかける等はしていたものの、その時間はあまり多くはなかったのが残念だったとのこと。同室者間の関係性を看取り介護に関係なく適度に図るよう、働きかける事も大切ではないか。

・今回の看取り介護に関しては、1年ほど前より経口摂取が難しくなり度重なる体調不良を経ての移行であった。ご家族の意向のもと、シリンジでの食事摂取援助を取り入れたことは妥当だったのかと思うとの話が出た。好きだった甘いものを少しでも長く味わえた事、また看取り介護移行時期がここまで伸びた事を評価として挙がった。今後は酸素や点滴に関してご家族の意向により対応しない選択をされる方も出てくるかもしれない。それだけ意向は様々であり、時には自然な形で最期を迎えるというケースが出てくる可能性もありうることを、今後私たちは受けいれていかなければならないという意見も出てきた。

・拘縮の強い方への対応について、オムツ交換や体位変換などが大変だったとの意見があった。また〇〇〇〇〇との病名がついている方は、体動時に嘔気みられる傾向があった。もっとほかにできる対応はなかっただろうか。今後そのような方に対する具体的援助内容について学ぶ機会がほしい。拘縮に関しては、体位変換時に体交枕を使うと自然と身体が曲がった状態になる事から寝たきりになると徐々に進行してしまう。疾病にもよるが、拘縮の進行をできる限り遅らせる方法を学ぶことも必要ではないかとの意見も挙がった。研修について、どれだけの希望があるのか各ユニットで確認し、その結果で役に立つ研修等への参加を募る等、学ぶ機会が持てないかを考えたい。

・担当以外のスタッフの訪室について、朝の引き継ぎの流れが変わった事により看取り介護者の状況や訪室依頼についてより詳しく聞く事ができるようになった。そのため以前よりスタッフの訪室はできていたのではないかとの意見が挙がった。今後は、その引き継ぎの内容を現場のスタッフに伝達する手段・方法を各部署で検討し実践してほしい。身辺援助を各ユニット単位で行う事が多い現在では、他ユニットの利用者の状況を把握する事がなかなか難しいという現状があり、声をかけたくてもどんな内容を伝えていいのか分からない事もあると思う。『訪室してください、訪室してください』と言われてただ訪室する事に意味があるのか、との意見も挙がった。そのため今回は『一緒に行こう』とスタッフにかける言葉を換えて共に行動することで、意識を高めていくよう努めたとの話も挙がった。顔を見に行く事だけに限定されるのではなく、時には担当のユニットスタッフが少しでも長い時間を看取り対象者と過ごせるよう、例えば見守りを交代する等でフォローにまわる事でもいいのではないかとの意見が出た。何よりもスタッフ一人ひとりの意識と、行動が、その方の生活を支える大きな力になることを実感する機会を、すべての職員にわかってもらえるよう働きかけていきたい、またスタッフ各自で考えて行動してほしい。

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