介護保険サービスは、介護報酬という公費を算定して運営するサービスであるがゆえに、法令ルールに基づいたサービス提供が求められる。
しかし法律・法令は文章の解釈が必要とされる部分があり、この部分の理解不足によって、法令を逸脱した不適切な費用請求が行われてしまう場合がある。そしてそれが意図的な不正行為であるとみなされれば、指定取り消しなどの処分につながってしまう。
そうであるがゆえに事業管理者やサービス担当者は、常に自らのサービス内容や、費用算定方法が正しいルールのもとに行われているのかをチェックする必要がある。そしてその際に必要となるのは、法令根拠の確認と理解であり、「実地指導で行政担当者が、こんな指導をしていたよ。」という情報は何の根拠にもならないのである。ここを勘違いしてはいけない。
そもそも過去の例を紐解くと、間違った行政指導が後に訂正されたという例はたくさんあるのである。そこでは、指導を受ける側が、行政担当者の価値観や意見を鵜呑みにして、法令根拠の確認を怠っているという問題もあるのだ。
つい最近も表の掲示板で、通所介護の個別機能訓練加算についての質問があり、それに対して通所介護に携わっていると思われる職員が、「居宅サービス計画に機能訓練の実施等の旨を記載してもらわないと、デイが勝手に進めていることになり加算を取れないと実地指導で指導を受けましたよ。」・「デイで機能訓練をする(文言は適当です)等の一文がないといけないのでは?」という意見を書き込んでいる人がいた。
実地指導担当者がどのように指導しているか知らないが、居宅サービス計画の通所介護に関連する部分に、必ず「機能訓練」という文言がないと、個別機能訓練を行って加算算定することができないと考えるのは間違いである。
なぜなら厚生省令第三十七号第九十七条 は、「指定通所介護は、利用者の要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう、その目標を設定し、計画的に行われなければならない。」とし、この計画的という意味については、同第九十八条「一 指定通所介護の提供に当たっては、次条第一項に規定する通所介護計画に基づき、利用者の機能訓練及びその者が日常生活を営むことができるよう必要な援助を行う。」と規定し、通所サービスで提供されるサービス内容は、通所介護計画で定めるとしているのである。この部分は「居宅サービス計画」によるものではないのである。
しかし同時に第九十九条2では、「通所介護計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該居宅サービス計画の内容に沿って作成しなければならない。」とされており、この規定をもって、通所介護で機能訓練を行って個別機能訓練加算を算定するのであれば、居宅サービス計画の、通所介護の利用目的等の部分に、「機能訓練が必要である」という文言が含まれている必要があると考える人がいるわけである。
しかしこの法令文をよく読んでほしい。求められているのはあくまで、「当該居宅サービス計画の内容に沿って」であり、居宅サービスに書かれているサービス内容だけを実施することではないのである。「当該居宅サービス計画の内容に沿って」という意味は、居宅サービス計画の通所介護の部分だけを見るということではなく、計画全体を見るという意味で、居宅サービス計画第1表の総合的援助方針の内容に沿ったサービス提供であれば、第九十九条2規定はクリアするということになるものだ。
そうなると居宅サービス計画は基本的に、「自立支援」を目的にしており、通所介護のサービスとして、自立支援を目的とした機能訓練・生活機能向上訓練を行うという計画が、「当該居宅サービス計画の内容に沿わない」とされること自体がおかしなことになる。
例えば居宅サービス計画において、通所介護の利用目的が、「家族のレスパイトケア」目的であり、利用者自身の機能訓練についての目標などが記載されていない場合はどうだろう。その場合も、「当該居宅サービス計画の内容に沿った」、通所介護計画への機能訓練の位置づけは可能である。なぜなら通所介護において家族のレスパイトケア目的の利用が必要であるということは、家族の介護疲れへの対策が必要であるという意味で、そうであれば通所介護利用は、単に家族が日中、自宅で介護する必要がない時間を作るだけではなく、通所介護を利用する中で、利用者自身の生活機能を高めて、利用者が暮らしの中でできることが増えたり、できる機能を維持することが、家族の休養・介護疲れの防止につながるからである。
具体例を示そう。生活課題として「家族に介護疲れがたまり、在宅生活が継続できない恐れがある」とされるケースで、通所介護の利用目的が家族のレスパイトケアであり、長短期目標が次のように定められている居宅サービス計画があるとする。
「長期目標」介護者に疲労感がたまらないことで適切な在宅介護が継続され○○さんが自宅で生活できる
「短期目標」介護者が日中定期的に休養でき在宅介護が継続できる
↑この場合、通所介護事業者は生活課題を解決するために必要な通所介護計画を立案すれば、「居宅サービス計画の内容に沿う」こととなり、そのために「家族の休養が必要な要因」を考える必要がある。具体的には、次の5点の考察が求められる。
・通所利用することで利用者が心身活性化でき精神的・身体的に安定して暮らす方法論
・通所介護事業所で身体機能等を活用して自分でできることが増える方法論
・介護の方法を工夫することで利用者自身や家族の負担が減る方法論
・通所介護を利用して、看護や介護の専門家が関わることで可能となる助言
・利用者自身の暮らしの質が向上するための方法論
その結果、次のような個別機能訓練計画を立案することとなる。

同じように「排泄行為」に支障を来たし、失禁があることが介護負担となり、レスパイトケアが必要なケースの場合、次のような通所介護計画になる。

このように、居宅サービス計画では、通所介護利用がレスパイト目的しか書かれていない場合も、レスパイトケアが必要な理由をきちんとアセスメントし、それに対応するためには、機能訓練が必要だという理由付けができれば、通所介護計画において個別機能訓練計画を載せ、それに基づいたサービス提供を行うことで、居宅サービス計画に沿った内容であると結論付けることが可能で、加算算定することも可能である。勿論、この場合給付管理が必要になるわけであり、利用表・提供表にそのことを記載してもらわねばならない。しかしこれは事前にサービス担当者会議等で、その必要性を示して載せてもらうだけでよい問題である。
そもそも介護支援専門員が特定の事業所のサービスにすべて精通することは不可能で、各事業所のサービスの処方にまで介入することはできるわけがない。常識的に言っても他事業所の職員が、職場内の指揮命令権と関連する個別の具体的なサービス内容まで指示命令ことはあり得ない。もっとわかりやすく言えば、通所リハビリの個別リハビリテーションの内容にケアマネがくちばしをさしはさむことができるのかを考えたらよい。それは医師の処方によるもので、ケアマネの権限は及ばず、ケアマネには指示できる資格も権利もない。福祉系サービスであってもこれは同じことだ。ここを理解しないとどうしようもない。
何度も繰り返すが、行政指導担当者の口にした言葉が、そのまま根拠ではないのである。しかし「指導担当者がこう言ってた」ということを根拠にして、その見解の法的根拠を考えない人が多すぎる。それは介護サービスの専門職として一番恥ずかしい態度だ。変な指導は頑として異議を唱え改善してもらうことも、ソーシャルアクションであることを忘れてはならない。
同時に、議論は対立ではなく、お互いのスキルを尊重したコンサルティングでもあるという視点から、自己主張に固執・終始しない建設的態度と、相手の立場やスキルを尊重するという視点も必要だということも忘れないでほしい。
どうしようもない指導には毅然とした態度で臨む必要があるが、建設的議論には愛を沿えて対応してほしい。
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★「ショートの計画書」の件で、私は、初めての施設勤務にて
この書式が、ショートの計画書で正しいのか?内容があっているのか?不安だったため、ある研修で、介護支援専門員協会会長、副会長、研修指導担当役員等、数名の方々に検討して頂きました。監査では、何の問題もない等の返答でしたが、・・・昨日は、先日監査があった施設で、どうのこうの言われた等混乱ぎみです。ショートには、介護支援専門員配置基準はないのに、私が作成したショートの計画書(内容は詳細)を元に介護職員が作成した別に個別援助計画書が別に必要だの何だの?・・・・有名な先輩方や施設長クラスの介護支援専門員研修担当の方々が、これでいいとおっしゃっているのに、・・・監査担当の方が、どうのこうの言われた等、・・・うぅ〜ん!訳がわかりません、・・・・「監査」って、現場を混乱させるためのものですか?と、言いたいくらいです。必須項目書類があれば、他はご利用者や御家族の対人援助業務を行いたい私ですが、雇われた身は、業務命令に従う、・・・辛いものがあります。「理想の施設」?をつくりたいなぁ〜と思っていたら、お金持ちと出会いました。夢はジックリ、シッカリ、叶えたい。