本題に入る前に今週の出来事について、2つほど報告をしておきたい。

秋のこの時期、恒例となっている兵庫からのプレゼントが先週末に届けられた。
丹波黒豆
丹波篠山市役所の皆さんが参加しているNPO法人では、「社会的ひきこもり」対策の支援事業として「丹波黒豆」を栽培している。そこで収穫した「丹波黒豆」が緑風園の利用者のみなさんのために送られてくる。もう10年以上続いている活動である。もともとはこの活動のリーダー役を務めている丹波氏のM部長と、僕がネットを通じて個人的に親交があったことからの縁である。

今週月曜からの1週間、デイサービス利用者の皆様の昼食時に提供した。特養にお住いの方には、昨日木曜日のおやつの時間に提供させていただいた。皆さん大変喜ばれていた。丹波篠山市役所の皆さん、一緒に黒豆を栽培してくれた皆さん、本当にありがとうございます。

もう一点の報告は、昨日ご来園いただいた韓国・ソウル市老人福祉協会の皆さんのことである。

36名の見学のご案内をさせていただいたが、当施設内で使用している機械設備をカメラで興味深く写している姿を拝見すると、介護用の機械設備のスタンダードは日本の方が進んでいるのかもしれないと思った。しかし質疑応答では鋭いご質問などもあり、情熱をもって高齢者介護に携わっていることがよくわかった。

韓国の老人専門療養院認知症の方が徘徊したらどう対応するのかとか、コールを何度も押す場合にどうるのかという質問に対し、「私たちは、認知症の方が歩き回る理由を考え、その人が一番良い状態になるように対応することを心がけますが、歩き回ることをすべて否定せず、歩けるということを肯定的にとらえる必要もあると思いますし、歩き回っていた方が歩けなくなることの方を哀しみます。ナースコールについても、用もなくコールを押すことを問題視するより、コールをご自分で押す能力のあることをポジティブに良しと考えるし、むしろコールを押せなくなることを哀しみます。」と答えたら拍手が沸き起こった。お国は違えど介護への情熱と使命感は同じだと思った。

政治レベルでも、もっとお互いの国民性を尊重し合いながら、仲よくできないものかと思う。少なくとも今日お逢いした方々は、皆さん素敵な方で、介護にという職業にを誇り持っている方々であると感じた。
(※左の画像は、見学者の方からいただいたソウル市の施設の日本語版パンフレット。お返しに僕の著作本をプレゼントしたら予想以上に喜ばれて恐縮した。)

さて話題を変えて、本日のタイトルに関することを書く。

明日、僕は福井県美浜町で講演を行う予定になっている。福井県は初めて訪れる県であるが、日程はタイトで、講演当日移動なので、明日は早朝5:55発の高速バスで新千歳空港に向かい、新千歳8:40発〜セントレア10:30着〜名古屋駅10:19発〜敦賀13:25着〜15:00美浜町保健福祉センター「はあとぴあ」で120分講演の予定である。翌日の日曜日も敦賀駅を9:12に経って逆ルートで北海道に帰るので、いつもながら会場と駅を往復するだけで、初めて訪問する地を観光している時間は取れない。

二州地区ケアマネジャー連絡会主催・講演会の受講対象者は、介護支援専門員である。テーマは主催者の希望で、「明日へつなぐ介護〜地域包括ケアシステムにおける介護支援専門員の役割〜」とした。

そこではまず地域包括ケアシステムとは何かを明らかにせねばならないが、医療・介護・予防・住まい・生活支援が、包括的に確保される地域包括ケアシステムが全国各地で機能するのかという問題もあるが、それよりも重要な点は、地域包括ケアシステムが機能したとしても、その実現によって、地域住民の高齢期の暮らしは、決して薔薇色になるものではないという理解が必要だ。

なぜなら地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が全て 75 歳以上となり、医療ニーズを併せ持つ要介護者の増大が見込まれる 2025 年(平成 37 年)に向けて、、保険料と公費で支えられている介護保険制度の持続可能性を高め、限りある資源を有効に活用するために、より効果的で効率的なサービスを提供することが求められるという面から必要不可欠とされているからである。

つまり限りある財源を、効率的に必要不可欠な部分に投入しようというのが、地域包括ケアシステムの目的であり、医療と介護の役割分担と連携を強化するという意味は、平成 26 年度の診療報酬改定において、医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実という名のもとに行われた入院患者の退院勧奨、在宅復帰という流れの風下に、次期介護保険制度改正が位置し、在宅生活の限界点を更に高め、要介護度の高い人(中重度者:概ね要介護3以上を指す)が施設に入所したり、入院しなくてもよいシステムを地域ごとに作りなさいという意味である。

財源削減論と一体に考えられるシステムであるのだから、在宅生活の限界点を更に高めるという意味は、インフォーマル支援の限界点を高める必要性も生ずることとなるだろうし、ターゲットにしていない軽介護者(要支援者含む)については、できるだけ公費をかけずに、自己責任という名の自助を求めていくシステムでもある。

そのことは、「予防サービスの新総合事業への移行について」において指摘しているように、「親和性」という理由をつけて、新総合事業に予防訪問介護と予防通所介護を移行させる最大の目的が費用の効率化=費用の削減であることでも証明されている。

つまり地域包括ケアシステムとは、少子高齢社会において十分な財源確保が難しい時代において、必要最低限のサービスを担保するというシステムでしかないのである。

そこでは国がすべての介護ニーズに対応する財源を確保することは不可能なので、地方自治体に一定の財源と権限を与えるから、あとは地方自治体ごとに頭を絞って住民に必要な最低限のセーフティネットを構築する工夫をしなさい、というシステムであり、当然のそうした制度になれば、大きな地域格差は生じるだろうし、限られた財源であるがゆえに、そのシステムの恩恵を受けずに自助が強く求めらえる住民も増えるということである。

お金をできるだけかけないシステムとして行く中で、「こぼれて消える見えない涙」を見逃さないケアマネジメントが求められることになるが、介護支援専門員という職種だけが、この責任を負うわけではないはずで、真の地域包括ケアシステムとは、そのシステムの中で零れ落ちた住民ニーズを、単純に不必要な介護ニーズと決めつけない視点が、地域全体、専門職横断で求められるという視点が必要だろう。

どちらにしても、地域包括ケアシステムによって、要介護高齢者は地域の中で手厚く支援されるという認識ではなく、そのシステムの中で頑張らさせられるのだから、頑張りの限界点を超えない支援や、ソーシャルアクションが、対人援助の専門家には求められていくということを理解しておらねばならない。

それでは明日、福井県美浜町保健福祉センター「はあとぴあ」でお逢いするみなさま、よろしくお願いします。当日はメッセージ動画「明日へつなぐ介護〜福井県バージョン」を初お披露目する予定です。こちらの方もどうぞお楽しみに。
無題2敦賀


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