介護老人保健施設は、在宅復帰支援機能を中核機能として持つ中間施設(本来は、医療機関と居宅の中間施設という意味)である。

よってそこは、医療機関で急性期の治療を終えた人に対し、リハビリテーションを中心としたサービスを提供して、身体機能や生活機能等を向上させるという目的を持つ施設で、本来ならば一時的な滞在場所であり、特養のように「暮らしの場」とされているわけではない。

よって老健に入所するからと言って、生活の本拠は「在宅復帰する場所」であることが前提であり、老健に住民票を移す必要はない。しかしこのことは老健に住民票を移してはならないという意味ではないことにも注意が必要だ。

なぜなら、老健施設利用者の個別事情によっては、滞在場所である老健が生活の本拠とならざるを得ない場合があるからだ。例えば近い将来に老健から退所する予定はあったとしても、そこが自分の自宅とは異なる施設等で、今までそこで生活していたという実態がない場合は、予定を理由にしてその場所を生活の本拠とすることは不自然である。この場合は、今現に滞在している老健を居所と定めおくべきである。

表の掲示板に9月30日に建てられたスレッドは、まさにこのケースであり、もともと住所地特例が適用されて養護老人ホームに入所していた人で、養護老人ホーム入所前の自宅等がすでに存在していない人が要介護状態となったために、特養入所の経由施設として、養護老人ホームの住所地以外の老健に入所したケースである。このとき老健に住民票を置けないとして、老健所在地域の従妹の家に住所を移せと指導されているケースの質問である。
(※本来、老健は特養への経由施設としての中間施設ではないが、個々の事情でこのような老健利用も実際には多いし、それが即法令違反となるわけではない。)

この場合、従妹の家に住民票を移せば、住所地特例が適用されなくなり、従妹の住所地の介護保険の被保険者となるしかないが、そもそも将来的に居所を定める予定のない家に、そこに親類が住んでいるという理由だけで住民票を移すということの方が問題視されるべきである。

民法第22条は、住所について次のように定めている。
(住所)各人の生活の本拠をその者の住所とする。

この規定は、生活の本拠=実際に住み生活の中心となっている土地の住所を、その人の住所とするということである。質問ケースの利用者の場合、在宅復帰すべき住所地は存在せず、老健退所後は特養に暮らしの本拠を置いて生活することになるわけであるが、それは将来の話で、現在そこは生活の本拠ではないし、親類の家も同じ理由で生活の本拠とはならない。そうであるがゆえに、この場合は一時的な滞在場所である老健を生活の本拠とするしかなく、住民票は老健滞在中、当該老健に移すべきである。

表の掲示板の質問ケースは、この生活の本拠が、生活実態のない従妹宅なのか、数カ月といえども日常生活を送る老健なのかという選択だから、これは疑問をさしはさむ余地さえなく、老健を短期間の生活の本拠と考えなければならない。そして介護老人保健施設の支援相談員等は、そこに住所を移す支援を行うのが本来である。

にもかかわらず老健に住所を移してはいけないと頑なに指導する意味や理由はなんだろう。それは単に老健は生活の場ではない、3月後に退所が予定される滞在場所に住民票は移せないという根拠のない固定観念でしかなく、正しい知識がないということではないのか?

そもそも住所地特例対象施設に老人保健施設が入っているのは、そこに住所を移すケースが十分想定されているからであり、掲示板で質問されたケースのような場合は、住所を老健に定め、住所地特例を継続するのが本来である。

間違った指導で、保険者が変わってしまうことは、本来費用負担する必要のない市町村の財政負担を強いるという意味でも不適切である。

利用者が老健に住所を移したところで、老健にデメリットが生ずることもないだろう。それとも老健に住所を定めおくことが何らかの法律に触れるとでも勘違いしているのだろうか。いずれにしても頑なに老健へ住所を移すことを拒む権利は老人保健施設にはないし、頑なにそうしないように指導する老健関係者には、正義も知性も感じない。

老健の支援相談員は、ソーシャルワーカーとして、利用者の立場に立って支援する人であるはずなのに、こうしたケースに柔軟に頭を働かせて、臨機応変の対応ができないのでは、その存在意義が問われるだろう。

さらに言えば、当該スレッドで愚痴のような質問をぶつけるのみで、結局は老健側の理不尽な指導に従うことしかできず、何の具体的で建設的な対応もできない養護老人ホームの相談員も、ソーシャルワーカーとしての見識が問われるし、その力量が足りないと言われても仕方がないだろう。

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