僕の講演デビューが、果たしていつのことだったのかは記憶にない。まだ元号が昭和の時代に、市内の総合病院の看護師研修講師を依頼されたのが最初であると思うが、その内容も時期も覚えていない。
しかし道外講演デビューは、平成18年7月31日に岩手県・アピオ会議場で行われた岩手県社会福祉協議会と岩手県高齢者福祉協議会が主催した「看取り・ターミナルケア研修」であると記憶している。(記録もあるので間違いない。)
この年の4月に介護保険制度の初めての制度改正が行われ(報酬改訂は2度目)、同年1月の報酬告示では、特養の報酬に「看取り介護加算」が新設された。そして加算算定には「看取り介護指針」の作成が必要とされたが、全国を見渡してもそのような指針を作っている特養は皆無であった。そのため僕は独自で「看取り介護指針」を作成し、それを当施設の公式サイトからダウンロードできるようにした。それは18年2月のことであった。
(参照:当施設の看取り介護に関する資料のダウンロード)
それは僕が、日本で最初に「看取り介護指針」を作成した人という意味にもなるのではないかと思っている。
そのようなこともあって、同年7月の岩手県講演の講師としてご招待いただいたと記憶している。それがきっかけとなって、今では全国各地で講演を行い、講演実績や予定のない県は、新潟・山梨・鳥取・島根・香川の5県のみとなっている。
道外講演デビューした18年度は、そのほかに長崎で介護保険制度改正について講演しているが、翌年も看取り介護や制度改正を中心に話をしていた。そのような道外講演の数は徐々に増え、講演テーマも、認知症の理解・施設サービス計画の作成・居宅サービス計画の作成・デイサービスやショートのケアプラン作成方法・ケアマネジメント全般・施設相談員の役割・介護サービス全般・介護施設における法令順守の視点など多岐にわたっている。
「看取り介護」は、それ以来現在までずっと続いている講演テーマであるし、今週の土曜日にも大阪でお話しする予定になっている。
(参照:看取り介護に求められる社会的使命)
その講演内容は、実践の積み重ねがあるので、18年度と現在とでは、内容はずいぶん変わってきているが、それは人生の最終ステージである「看取り介護期」に、どのような暮らしの支援を行うべきかという、サービス提供側の方法論を中心にお話しする内容となっている。
しかし最近、看取り介護を行う側ではなく、看取り介護を受ける人々が、その時に何をどうしてほしいのかということを考えるセミナー等が行われるようになった。それが「終活セミナー」である。
終活について、その言葉の明確な定義があるわけではないが、それは人間が人生の最期を迎えるにあたって行うべきことを総括した意味と考えらえており、自分がまだ元気で意思を伝えられる時期に、自分自身のための葬儀や墓などの準備や、財産処分の方法などを決めておくことであったり、終末期に意思を伝えられなくなったときに備え、リビングウイルの観点等から、どのような医療を受けたいのか、口から物を食べられなくなったときにどうするのかなどの、具体的な希望を第3者に伝えて記録しておくことなどを指している。
そのような終活を考えるセミナーにも、講師としてご招待を受ける機会が増えている。昨週土曜日も、岡山県倉敷市で行われた、人権啓発セミナー『人生の最終章を不安から「彩り」に変えるパスポート』 に、講師&パネリストとしてご招待を受けた。
当日は180名ほどの参加者があり、介護サービス関係者の方も数多く来場されたが、過半数は一般市民の方々で、しかも60歳以上の方が来場者の半数以上を占めていた。お元気な高齢者の方々が数多く、「終活」に興味を示されて来場されていた。(下記の図を参照いただきたい。)
そこで僕は、看取り介護支援を行う立場から、今後のわが国で求められる終末期の支援体制について説明するとともに、僕が経験してきた様々な終末期のエピソードをお話して、命のバトンリレーという意味を伝え、自らの死について語り合うことをタブー視しないことの重要性を説明してきた。そしてリビングウイルやエンディングノートを記録し始める時期に、「早過ぎる」という時期はないし、間に合わなくなる前に、自分が一番信頼できる、愛する誰かと、お互いの人生の最終ステージの過ごし方を確認し合っておくことが重要であるというお話をさせていただいた。
講演とパネルディスカッション終了後には、受講された方々から、「良い話を聴かせていただいて感謝します。」という言葉を数多くいただいた。声をかけていただいた方々の中には、僕よりずっとご高齢の方々がたくさんおられた。わざわざ声をかけていただき恐縮である。この場を借りて、感謝申し上げたい。
終活は自分の死を考えながら、残される遺族へのメッセージも含めて考えることができる活動だ。自分だけのためではなく、残された遺族への配慮も可能となる活動である。
そして自分の人生の最終ステージについて考えることは、自分の死までの生き方を考えることだ。そういう意味で、終活セミナーは今後ますます必要とされるのではないかと考えるし、そうしたセミナーのお手伝いも数多くできればと考えている。
誰かの人生が、最後まで彩(いろどり)に満ちたものであるために、我々にもできることを続けていきたいと思う。
※もう一つのブログ「masaの血と骨と肉」、毎朝就業前に更新しています。お暇なときに覗きに来て下さい。※グルメブログランキングの文字を「プチ」っと押して、応援よろしくお願いします。
介護・福祉情報掲示板(表板)
4/24発刊「介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料のインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
「人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。)