介護保険3施設や特定施設、養護老人ホーム等に適用される「住所地特例」とは、ある人が住んでいた市町村以外の他市町村の介護施設などに入所して、住所が当該施設の市町村に変更になっても、サービスを受ける際の給付は、もと住んでいた市町村によって行われるという制度である。これは介護保険施設などが集中する市町村の財政悪化を防ぐための特例措置である。
ところで現在、サービス付き高齢者者向け住宅については、特定施設の指定を受けたものか、利用権方式のものしか住所地特定の対象になっていない。これは住所地特例対象施設の規定に、「特定施設入居者生活介護の指定を受けていない賃貸借方式のサービス付き高齢者向け住宅は対象外」という除外規定があるためだ。
そのため賃貸借方式のサービス付き高齢者向け住宅が建設されると、当該住所地の保険者の財政負担が増えるという問題があった。
このルールについては、サービス付き高齢者向け住宅ではない有料老人ホームであれば、すべて住所地特例の対象となっていることと比べても整合性が取れず不公平であるとして、来年4月の介護保険制度改正では、すべてのサービス付き高齢者向け住宅を、住所地特例の対象とすることとしている。(※ただし施行日以降の入居者に限り適用)
ただし従来のルールだと、住所地特例の対象になった場合は、保険者が出身市町村のままなので、地域密着型サービスは、出身市町村のサービスしか使えず、サービス付き高齢者向け住宅が存在する市町村のサービスが使えないということになってしまう。
しかしサ高住の利用者は、生活相談や安否確認の見守り以外のサービスが外付けであるため、住所地の定期巡回・随時対応型訪問介護看護などを利用することが想定されるために、サ高住の所在する市町村の地域密着型サービスが利用できないと、利用者の暮らしを支えるサービスが受けられず、要介護状態になった場合に、そこを退去せねばならない事態にもなりかねない。
かねてから指摘しているように、地域包括ケアシステムの定義は、「「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみな らず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常 生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」」(2013年3月・地域包括ケアシステム研究会報告書)とされているように、ニーズに応じた早めの住み替えを推奨することで、在宅介護の限界点を引き上げて、地域の中で暮らし続けるというシステムである。
そしてその住み替え場所として想定される「住まい」の主要な社会資源のひとつが、サービス付き高齢者向け住宅である。
そうであれば、要介護状態が重度化した場合に、その住み替え場所から、新たに住み替える必要性が生じては困るわけだから、住所地特例の対象者が出身市町村の地域密着型サービスしか利用できないという現行ルールは。地域包括ケアシステムを推進することの足かせになりかねない。
このため住所地特例の見直しと同時に、住所地特例の対象者は、地域密着型サービスと地域支援事業によるサービスについては、すべて転居先の市町村で実施されるサービスを利用できるようにルールを変更することとしている。
これによって来年4月以降に現在居住している市町村以外の市町村にあるサービス的高齢者向け住宅に入居した場合は、住所地特例で保険者は変更されず、かつサ高住所在地域の地域密着型サービス等を使うことができるようになる。
これによってサ高住が増えて、他市町村の住民が入居することで財政悪化が懸念されるという問題についても、一定の解決が図れることになり、ますますサ高住の建設が進むことが予測できる。
他市町村への住み替えが、地域包括ケアシステムといえるのかどうかという疑問は残るが、住み替え場所は、このように着々と整備されているのであり、地域包括ケアシステムとは、決して住み慣れた自宅に住み続けられるシステムという意味ではなく、新たな居所で、新たな暮らしをスタートさせるというスタイルも想定されていることを理解せねばならないだろう。
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