都道府県への登録が必要であるサービス付き高齢者向け住宅は、国土交通省と厚生労働省の共管である。

もともと介護施設が厚生労働省の管轄となっているのに対して、高齢者専用賃貸住宅(ケア付高専賃)が国土交通省の管轄となっており、サービス付き高齢者向け住宅の構想は、国土交通省の成長戦略会議(平成22年5月17日)において、『急増する高齢者向けの「安心」で「自立可能」な住まいの確保』の具体策として、「高齢者人口に対する高齢者向けの住まいの割合を欧米並み(3〜5%)とする。」という考え方に基づいて生まれたものだ。

そしてサ高住は、地域包括ケアシステムの基盤となる高齢者の「新たな住まい」として位置づけられ、高齢者の住み替え先として重要な社会資源とされるため、両省の共管という形で縦割りの弊害をできるだけなくして、両省の連携を促進したという意味があるのではないだろうか。

ところで安心して住み続けられるサービス付き高齢者向け住宅とは、どのような住宅だろう。

このことに関連して、今月8日に開催された国土交通省の有識者会議では、急速に増加しているサービス付き高齢者向け住宅の質の改善につなげるため、年末に向けて全施設を対象に実態調査を行うことを決め、必要に応じてサービスの基準を見直す方針を示した。その背景には、全国で増え続けているサ高住で、そこで暮らす人々の生活を支えるサービスに格差が生じており、生活にひずみが生じているという意味だろう。

有識者会議では、そこで問題になっているサービスの質の課題とは、入居者の安否確認・生活相談サービスを提供する体制の強化とされ、「職員のスキルにバラつき」、「大きな施設で体制が脆弱化しないか」とされている。

しかしこの見方は見当違いではないのか?

安否確認の見守り体制や、生活相談機能を強化して利用者の暮らしの質が上がるのは、要介護状態区分が軽度で、人の手を借り支援を受ける必要性が低い状態の時期であり、要介護状態区分が重度化し、外部サービスによる生活援助や身体介護が必要になる場合は、そのマネジメントや介護サービスそのものが生活の質を大きく左右する要素であり、安否確認や生活相談は必要とされるものであっても、その比重は前者より重たいものとは言えない。安否確認の見守り機能や、生活相談機能をサ高住の規模に応じて、いくら増やしても、それは生活の基盤を支えるサービスにはなり得ないのではないだろうか。

むしろ外部の介護サービスと、それを結びつけるマネジメントがどのようにサービス付き高齢者向け住宅内で展開されるかが大きな課題ではないのか?つまり今、サ高住で生じている問題は、サ高住の基本機能である「住まい」にかかわる問題ではなく、外付けサービスとして利用する、「ケアサービス」の問題ではないのだろうかという疑問である。

サービス付き高齢者向け住宅が誕生して3年を経た今、そこで加齢による身体状況の変化が生じている入居者も増えているだろうし、そもそも地域包括ケアシステムの中では、重度の要介護者がサービス付き高齢者向け住宅に住み替えて、看取り介護を含めた終生ケアを受けることができる地域を作ろうとしているのだから、サービス付き高齢者向け住宅の入居者の生活の質は、いかに外部のサービスを有機的に、適切に結び付けるのかということが大きな課題ではないのか。

その時に、サービス付き高齢者向け住宅の多くが、入居条件として、自法人内の居宅介護支援事業所による居宅サービスの作成や、サービス付き高齢者向け住宅に併設した、自法人の訪問・通所サービスの利用を条件にしているというケースをどう考えるのかという問題がある。

そのことが放置されると、「地域包括ケアに潜む盲点」・「地域を巡回しない24時間巡回サービスが生まれる」で懸念したような事態が生まれるだろう。

そういう意味では、サービス的高齢者向け住宅への住み替えを考える高齢者には、どのような住宅を選択することが望ましいのかという情報提供が必要だ。このことについて僕は、次のように考え方を示している。

・外部の介護サービス(訪問介護・通所介護・訪問看護など)を利用するに際して、関連事業所のサービスだけを使うような入所要件になっていないか。
・介護支援専門員(ケアマネジャー)を利用者が自由に選ぶことができるか。
・終末期援助(看取り介護)を受けることができる理念や方法があって、入所前にきちんと、その方法についての説明を受けることができる。
・病状が重篤になると退所しなければならないような契約内容になっていないか。


関係者の方々の意見としては、このことは求められる視点であるけれども、実際にはほとんどのサービス付き高齢者向け住宅は、これに該当しないという声も多い。そうであれば、この中のいくつの項目が該当するのかという観点から選択されることがあってもよいだろう。

しかし地域によっては、サ高住は作っても、部屋が埋まらないでダンピングされているような状態も見られてきている。そこでは上記に掲げた条件をクリアできない事業者の経営が行き詰まる可能性が高い。そういう意味で、今後は利用者の選択肢が広がっていくのではないだろうか。サ高住への住み替えを支援する立場の関係者は、このような観点から、利用者ニーズにより合致した住み替え場所の情報を提供する必要があるだろう。

そして、利用者ニーズとは今現在から将来に向けて、つながっているニーズだという観点から、安心して暮らし続けることができる居所選びが求められるであろう。

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