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来年4月以降、特養の入所については、原則要介護3以上の方に限定されることになる。

しかし要介護1又は2の方であっても、やむを得ない事情により指定介護老人福祉施設以外での生活が著しく困難であると認められる場合には、市町村の適切な関与の下、施設ごとに設置している入所検討委員会を経て、特例的に指定介護老人福祉施設への入所を認めることとしており、こうした入所を、「特例入所」と呼ぶことが、全国課長会議資料で示された。

このような特例入所が認められたが、特養への入所の原則が要介護3以上となったことは、どのような影響があるのだろうか。

結論から言うと、今までとほとんど変わりなく、影響は最小限だろうと思う。

現在特養入所者の88%は要介護3以上である。ということは残りの12%が要介護1もしくは2の方である。この数字は大きく減っていくのだろうか?12%という数字は一桁に減っていくと思う。しかしそれは特養入所を原則要介護3以上に限定した影響ではなく、特養の経営上の問題で、収入の低い要介護1と2の対象者をあえて入所対象にはしないという理由の方が大きく、今回の原則要介護3以上に限定する法改正がなくとも、その方向性は同じであったろうと予測する。

今回の資料では、特例入所の要件について、以下のように示されている。

要件(勘案事項)の案
1. 認知症であることにより、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態であるか否か。
2.知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られ、在宅生活が困難な状態であるか否か。
3. 家族等による深刻な虐待が疑われる等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態であるか否か。
4.単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により、家族等による支援が期待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が十分に認められないことにより、在宅生活が困難な状態であるか否か。


以上であるが、この要件は今現在の事情を何も変えるものではない。なぜなら、優先入所の対象になりづらく、介護報酬単価も低い要介護1と2の人が、入所判定の上位にランク付けさせられて、特養入所となっている理由は、上で示された要件の、1もしくは4に該当する例が大部分を占めている。

つまり新しい要件ができたといっても、今特養に入所している要介護1と2の人が、特養に入所した事情と、この要件にはほとんどかい離がみられないために、今回の制限で特養入所が難しくなる人はほとんどいないといってよいと思う。

ただし入所判定会議前に、施設は市町村に要介護1及び2の申込者の状況を報告する義務が課せられるのだから、事務負担は重くなるわけである。変わることといえばその程度のことである。

よって結論としては、このルール変更は、特養の運営に何ら影響を与えることはないだろうし、適切なルールを当てはめて対応すれば、入所の必要性がある要介護1と2の人の行き場がなくなるということではないだろう。

むしろ事務手続きの煩わしさを考え、あえて報酬単価の低い要介護1と2の人を入所判定会議にかけないという、特養側の怠慢行為が行われないかを心配したほうが良いかもしれない。

それと特養の入所要件を、原則要介護3以上としたということは、介護給付の制限という、「前例」になるという意味だ。それは今後の制度改正時に他のサービスにも、この利用制限は拡大される可能性があるという意味でもある。

介護給付費分科会等で軽介護者の利用制限が具体的に議論されたサービスは、「定期巡回随時対応型訪問介護看護」であり、あり方委員会の中間報告書では、利用対象者を「要介護3以上としてはどうか」という記述もあったが、要介護者の介護サービスを利用する権利との整合性が取れず、利用対象者は要介護者全てとした。

今回の特養の軽介護者の利用制限という前例が、次に「定期巡回随時対応型訪問介護看護」の軽介護者の利用制限につながるかと言えば、そうはならないだろう。なぜなら国が推進する地域包括ケアシステムにおいて、「定期巡回随時対応型訪問介護看護」はその基礎的なサービスとして位置づけおり、サービス参入事業者を増やさなければならないという側面がある。しかし実際には、このサービスは国が想定した数の増加とはなっておらず、そうした中での利用制限は、このサービスが浸透して数が増えることの弊害になるからだ。

そう考えると特養の利用制限の前例は別サービスの改正に向けられるかもしれない。例えば訪問介護の生活援助は、原則要介護3以上という方向性で議論がされていくことを否定できないし、給付制限の前例がある以上、そのハードルは低くなったと言わざるを得ないのである。

つまり今回の特養の入所ルールの変更とは、特養関係者だけの問題ではなく、今後の介護保険制度の向かう先を示しているという意味で、すべての介護関係者が注視すべき問題だということだ。

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