下記の図は、国資料の中の介護保険制度改正の主な内容を示した図である。

制度改正の主な内容
この中のどの部分が一番気になるかという点は、個人の立場や見方で違ってくるだろう。一定以上所得者の利用者負担割合の引き上げや、補足給付の支給決定に預貯金という資産要件が加わったことに注目している人もいるだろう。

従来型特養関係者でいえば、この図にはないが、先週の介護給付費分科会において、特養の多床室の家賃相当分(部屋代)の利用者負担が取り上げられたことに注目している人も多いだろう。

現在多床室は、家賃相当分を自己負担する環境にはない等として、居住費の自己負担は光熱水費相当分のみとされている。その見直しを行おうとする動きである。

その理由について、多床室はベッド周りをカーテンだけで簡易に仕切るタイプではなく、扉や窓が備わった個室のようなタイプの多床室もあることを挙げており、多床室のすべてが部屋代負担の対象となるのではなく、例えばカーテンだけで仕切るタイプの多床室のみ部屋代の自己負担足として、それ以外のパーテーションでベッド周りを仕切るなどの多床室は部屋代を自己負担とするということが考えられる。

しかしこのことは部屋代自己負担なしの多床室にとって良いことではない。自己負担ありの多床室は、その分の介護給付費は減額されるが、減額されたと同じ金額を自己負担分として徴収できるわけだから、収入上の減額はない。

ところが部屋代利用者負担なしの簡易仕切りの多床室は、それだけ住環境が悪いということで、現行の給付費のうち家賃相当分の費用を下げるという風に、給付費下げの材料にされるという可能性が高い。そうなると現行の介護報酬より低い額の収入ということになる。非常に厳しい報酬減がその先に待っているということだ。

また予防訪問介護や予防通所介護の市町村事業への移行という大きな改正もある。加えて通所介護は、規模別報酬から機能別報酬となり、小規模通所介護は地域密着型サービスとなり、レスパイト機能中心の通所介護については、大幅な介護給付費のダウンも予測されている。社会福祉法人に対する厳しい批判の論調と併せて考えると、関係者にとっては厳しい逆風の制度改正といえる状況である。

ところであまり大きな話題となっていないが、マクロな視点から、この制度改正を考えたときに、僕個人として一番の注目している点は、「低所得者の帆君量軽減を拡大」という中の、「給付費の5割の公費に加えて別枠で公費を投入し、低所得者の保険料負担の軽減割合を拡大」である。

ご存知のように、現行の介護保険制度財源は、公費5割・保険料5割である。そして介護給付費が膨らむと必然的に保険料が増えるわけであるが、制度改正の主な目的は、「制度の持続」であるため、国民の保険料負担がいくらまでなら制度が存続できるかという観点が主になる。

このため介護保険事業計画第5期に向けた2012年の制度改正の際、厚生労働省老健局内で一番苦心したのは、1号保険者の平均保険料月額を5.000円以内に抑えるということだった。

そのため2012年度に限定した形で、都道府県が財政安定化基金の一部を取り崩し、保険料上昇の緩和に充てることができる特例規定が設けられた。この取り崩しと、市町村の介護給付費準備基金の取り崩しで、保険料軽減効果が月額244円あったとされる。

そのことで第5期(2012年4月〜2015年3月)の1号被保険者の平均保険料月額は、第4期4.160円から、全国平均で月額4.927円に抑えられた。しかしそれでも前期比9.5%の大幅アップとなっている。しかも2013年度と2014年度は、すでに全国平均の保険料は、5.000円を超えているのである。

後期高齢者人口が最大値となる2025年からの15年間が、介護保険制度の正念場になるが、この時の保険料が10.000円を超えないように、今後様々な方策が立てられていくわけであり、特養の多床室の部屋代自己負担も、予防訪問介護と予防通所介護の地域支援事業への移行もすべて財源負担を抑えて、1号保険料を抑制するための対策であるが、それだけでは抜本的な保険料抑制対策にはならない。

前回の改正議論の中で、1割負担のない居宅介護支援費に自己負担導入が模索されたが、それが行われても保険料は月額20円しか安くならない。

2号保険料の負担額の基準を、現行の総人数割りから総報酬割に変えることは1.000億円を超える財源となるため、一定の効果はあるが、それとて限界がある。

そうなると、どうしても制度を持続させるためには公費負担割合の見直しということが必要になってくるのではないだろうか。しかし国全体の財源不足という状況から、この部分は聖域化する向きがあり、今までは公費負担割合の増加は、現実的な方策として議論とはならなかったわけである。

しかし今回、「別枠」とはいえ、公費5割・保険料5割という枠が崩れたわけである。そうなるとここを橋頭堡にして、将来的に給付費残帯の公費の割合を増やす方向性へ向けて、本格的な議論がすすめられる可能性がある。

同時に、国の財政事情が厳しい中で、介護給付費に対する公費投入を増やすには、新たな財源を確保することが必要とされるのは必然の結果で、経済状況を踏まえたうえで、将来的な消費税のアップ、15%〜20%という方向性が議論されることになるのではないかと予測できる。

※このたび、孤独のグルメ日記風に、新しいブログ「masaの血と骨と肉」を作りました。お暇なときに覗きに来て下さい。

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