2012年の制度改正直後に、「居宅介護支援費の改定状況から見えるもの」というブログ記事を書いて、居宅介護支援費の「退院・退所加算」は1入院中3回算定できるのだから、診療報酬の退院時共同指導料2の算定要件も踏まえたうえで、入院先の医療機関の医師とのカンファレンスに介護支援専門員が参加して、上限3回分をきちんと算定しようという記事を書いた。

リンク先の記事にも書いているが、退院・退所加算を3回加算算定することができるのは、医療機関等の職員と面談して情報提供を受ける3回のうち1回について、入院中の担当医等との会議(カンファレンス)に参加して、退院後の在宅での療養上必要な説明(診療報酬の算定方法別表第一医科診療報酬点数表の退院時共同指導料二の注3の対象となるもの)を行った上で、居宅サービス計画を作成し、居宅サービス又は地域密着型サービスの利用に関する調整を行った場合に算定可能というものである。

この算定要件が示された際に、僕が一番疑問に思ったことは、入院先の医療機関の医師が、忙しい診療の合間をぬって、わざわざ居宅介護支援事業所の介護支援専門員のためにカンファレンスを行ってくれるのかということであった。少なくとも介護報酬の加算算定に必要だという理由では、そのようなカンファレンスを行ってくれないだろう。

当然、退院後の支援委必要な情報をやり取りするというのは、医療機関側としてもその責任において行うべき行為であろうが、医師が参加してのカンファレンスがそのために必須条件だということにはならないだろうし、どうすればカンファレンスという形で、医師からの情報提供が得られるだろうかということが最大の課題だと思った。

ところが退院・退所加算を3回算定要件のカンファレンスにおける療養上必要な説明については、カッコ書きで次のような一文がある。

診療報酬の算定方法別表第一医科診療報酬点数表の退院時共同指導料二の注3の対象となるもの

つまり診療報酬の算定ルールをみなければ、この加算算定ルールの意味は見えてこないということだ。そこで早速診療報酬の退院時共同指導料二の注3を呼んだ。そしてこれを読んでなるほどと思った。

2012年は診療報酬と介護報酬のダブル改訂であったが、この時の診療報酬改定の退院時共同指導料2の注3の加算算定ルールの中で、「入院中の保険医療機関の保険医が、当該患者の退院後の在宅療養を担う保険医療機関の保険医若しくは看護師等、保険医である歯科医師若しくはその指示を受けた歯科衛生士、保険薬局の保険薬剤師、訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く。)又は居宅介護支援事業者の介護支援専門員のうちいずれか3者以上と共同して指導を行った場合に、所定点数に2,000点を加算する。」というルールが設けられているのである。

そうであれば、所定単位数に2.000点=2万円という高額な加算が算定できるというルールを利用しない手はないと思った。つまり退院・退所加算に必要なカンファレンスと、退院時共同指導料2の2.000点加算のカンファレンスとは別に行われるものではなく、ひとつのカンファレンスで介護報酬と診療報酬の加算がそれぞれ算定できることになり、居宅介護支援事業所と医療機関双方にメリットがあるのだ。

だから、医療機関が退院時共同指導料2を算定する場合、近い将来に退院が予定されている方の在宅療養を担う上記3者以上と会議を行えば、医療機関も3.000円の指導料に加えて、さらに2万円が加算できるのだから、ぜひその3者の中に、居宅サービス計画という在宅療養の中心となる計画を立案する担当ケアマネを含めてほしいとアピールする必要があるということを書いたのが、上に張り付けたブログ記事である。

ところで次期介護保険制度改正では、地域包括ケアシステムの基盤強化という目的が挙げられている。

地域包括ケアシステムは、「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみな らず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常 生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」(平成25年3月地域包括ケアシステム研究会)であり、「入院しても、円滑に退院が可能となる仕組み」がキーワードの一つになる。

そのために現在各地でバラバラに行われている退院支援について、統一の方法とルールを作るために、2次医療圏内の医療機関と居宅介護支援事業所をそれぞれ組織化し合意形成を図るべく、9府県でモデル事業が行われている。

このモデル事業の結果、新しい退院支援ルールに沿った介護報酬の加算報酬が新設されることになるだろう。それは地域包括ケアシステムの中で、求められる支援であり、このモデル事業の進捗状況は注目されなければならないし、新しい退院支援ルールに沿った援助ができるスキルを獲得していく必要がある。

当然のことながら、そこでは介護支援専門員が、その磯資格が医療系か福祉系かということに関係なく、医療関係者と対等にコミュニケーションを交わすスキルが求められているわけであり、医療や看護の基礎知識を今以上に求められてくることになるだろう。

同時に考えなければならないことは、地域包括ケアシステムの基盤は、行政主導のシステムではなく、専門職同時の人間関係を基礎としたネットワークであることを踏まえ、それは対立する関係性の中では決して形成できないものであり、介護の専門職が、特定の職種の指揮命令系統に埋没する関係性の中でも形成できないものであるという自覚が必要である。

さらに退院支援とは、本来入院患者や家族に向けた視点が最も重視されるべき事柄であり、利用者や家族が不在な場所で、居宅介護支援事業者と医療機関の加算算定ルールのために、退院支援ルールでは困るという理解も必要だ。

それは加算ありきのルールではなく、退院・退所する人が見える形の支援結果を担保するルールを構築する必要があるということだ。

和歌山地域ソーシャルネットワーク雅(みやび)の皆さんが、素敵な動画を作ってくれました。ぜひご覧ください。


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