リハビリテーションの専門職といえば、理学療法士と作業療法士がまず頭に浮かぶが、両者の明確な違いを理解している人はどれだけいるのだろうか?

勿論、両資格をお持ちになられている当事者の方々は、その違いを明確に理解しているのだろう。しかし僕自身の中では、その違いはあいまいである。一般市民レベルでも、その違いを理解している人は少ないだろう。(というか、違いが分かっている人っているのかな?)

一般的には、理学療法士は筋力トレーニングなどを、マットや平行棒等を使って行う人で、作業療法士は手芸等の作業を取り入れた手指を使った訓練を行う人というイメージを抱いている人が多いようだ。

しかしそれはどうも誤った考え方らしい。少なくともそうした考え方は、両者の役割の実態を表すものではないようである。

介護保険制度が施行された当初、特養は機能訓練指導員を看護職員が兼務している施設が多かったが、常勤専従の機能訓練指導員を配置することによって、「機能訓練加算」が算定できるようになったことから、(現在は、配置基準のほかに、個別機能訓練計画の作成と、それに基づく機能訓練の実施により算定できる、「個別機能訓練加算」に変更されている。)専任の機能訓練指導員を配置する施設が、徐々に多くなった。しかしそれも看護師・准看護師を機能訓練指導員に専従配置して加算算定する施設が多かったように思う。

最近では、理学療法士や作業療法士を専従配置する施設が徐々に増えているが、作業療法士が配置されている施設や、通所介護事事業所では、作業療法士によるマット上の訓練や、器械を使った筋力トレーニングも行われているので、作業療法=手芸訓練という理解は、完全に間違っているということだろう。

ということで、インターネット検索で、両者の違いを調べてみた。ネット上のサイトによっては、いろいろな区分の仕方が掲載されているが、例えば、医療―教えてーgoo「理学療法士と作業療法士の違い」では張り付いたリンク先の回答がベストアンサーに選ばれている。

それらの情報から、両者の違いを簡単にまとめるとしたら、 理学療法士は、主に寝返りや起き上がり・立ち上がり・歩行などといった、人が起きてから寝るまでに必要な基本的動作の訓練や、温熱や電気などを使って、痛みなどにアプローチする専門職であるのに対して、作業療法士は、基本的動作を色々と組み合わせて、主に服を着る・調理する・趣味活動を行うなどにより、実際の生活を想定した応用的動作の訓練や、認知症を含めた精神の障害に対してのリハビリテーションも行うことができる専門家であるといえるのではないだろうか。

だからと言って、それらは微妙にまじりあっている部分があり、基本動作と応用動作を完全区分することも不可能だろうから、理学療法士が暮らしに応用する訓練を行うこともあろうし、作業療法士が基本動作の訓練に関わることもあるのではないだろうか。

例えば、転倒により大腿骨頸部骨折した高齢者の、入院から退院までの流れを考えると、骨折〜入院〜手術・治療〜リハビリ〜退院という流れになるのだろうが、この場合のリハビリテーションの開始期は、主に理学療法士によるリハビリテーションが行われ、退院に向けた終盤期は、主に作業療法士によるリハビリテーションが行われて、退院後の生活に結び付けていくことになるのではないだろうか。よってそのイメージは、骨折〜入院〜手術・治療〜理学療法士によるリハビリ〜作業療法士によるリハビリ〜退院となるのではないだろうか。

どちらにしても、僕の理学療法と作業療法に対する知識はこの程度である。つまりその知識は素人に毛が生えた程度にしか過ぎないというものであり、決して自慢できるような専門知識は持っていない。

にもかかわらず今年の2月、北海道作業療法士会の方から連絡をいただき、平成26年度室蘭支部企画研修の中で、作業療法士の方々に向けた講演依頼があった。研修会場は室蘭市で、すぐ近くだから休みの土曜日に数時間を割いてお話しすることはやぶさかではない。しかし作業療法の知識がない僕が、そのような場所で、専門職の方々にお話しできるようなことはないと考えたので、当初は丁重にお断りする方向でお話をさせていただいた。

しかし講演内容は、作業療法のことに関するものではなくてよいということで、たってのお願いということであった。そうであれば作業療法とは直接関連しなくとも、地域包括ケアシステムの中の保健・医療・福祉・介護連携という方向からなら、作業療法士の方々にも役立つお話ができるのではないかと考え、「地域包括ケアシステムにおける医療と介護連携を考える〜作業療法士に期待したい役割」というテーマで講演を行うことになった。

講演は8月9日(土)14:00〜16:00、室蘭市知利別町の老健施設・憩の講堂で行われる。

講演が近づき、テーマに沿った内容を考えてきたが、地域連携だけではなく、施設サービスや居宅サービスの中で、作業療法士が配置されている場合に、こんなことができるのではないかということまで含めた内容になった。

また、例えば高齢者が骨折等で入院し、リハビリテーションを行った後に自宅あるいは施設に帰ってくる際に、生活応用訓練として何がどのように行われているのかというリハビリ情報が入ってくる機会は少ないように思える。リハビリテーションの専門家ではない家族や、施設職員としては、どのような情報を求めているのかということも含めてお話ししようと思う。

作業療法士の方々がその専門性を、我々介護施設や介護事業者に適切に繋げてくれることによって、介護の質が向上していくのではないかという方向性も話してみたい。

その内容が、作業療法士の方々の研修会として的を射たものであるかどうかわからないが、自分なりに今考えていることをお話ししようと思う。

この講演会はオープンで、作業療法士会会員以外も、作業療法士ではない方も参加可能ということで、僕のフェイスブックでつながっているお友達の一人からは、事務局に問い合わせて参加することに決まりました、というメッセージが寄せられて来たりしている。

研修案内は、北海道作業療法士会主催研修からダウンロードできるので、参照いただきたい。

会員以外の方、介護関係者の方、一般の方で参加希望の方は、ここの下のほうに書かれている、「問い合わせ先」に連絡していただくと、参加できるそうである。

和歌山地域ソーシャルネットワーク雅(みやび)の皆さんが、素敵な動画を作ってくれました。ぜひご覧ください。


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