看取り介護の場面では、さまざまな想定をしていても、必ずその想定を超えた状況が起こる可能性がある。僕たちはその想定外の状況にも冷静に対処する専門家だ。

・・・とこのように職員に訓示して指導している。看取り介護の場では、本当にいろいろなことが起きるが、しかし利用者を看取った後にも想定外のことが起きるとは思わなかった・・・。

某日午前6:45、看取り介護に移行して5日目の方が旅立たれた。小康状態を保たれていたが、その日の早朝、いよいよ呼吸状態が悪くなって、担当ユニットの夜勤者は、オンコール待機の看護職員と家族に連絡をした。その間、別ユニットの主任で、この日夜勤に入っていた職員が、当該利用者の枕元に座って最後の瞬間まで看取った。

早朝ということもあり、宿泊していなかったご家族は、最後の瞬間に間に合わなかったが、看取り介護に移行してから日中の面会を毎日のように続けていたし、主任から最期の瞬間の様子を丁寧に説明されて、安心していただいたようだ。

僕はこの日、朝7:00少し過ぎに施設に着いたが、その時は医師がまだ到着しておらず、死亡確認がされていない時間帯であった。そこでご遺族にまもなく医師が到着する旨を説明しながら、お悔やみの言葉を述べた。その際に、遺体を自宅近くの会館に連れて行きたいがどうしたらよいかという相談を受け、葬儀社に連絡して連れて行ってもらえるとお話しし、僕からご家族の希望する葬儀社に連絡できることをアナウンスした。

ご遺族からは、「それでは〇〇社さんにお願いしたい。」という希望が示されたので、医師による死亡確認が終わったら、葬儀社に連絡するとお知らせした。

そのときちょうど医師が到着し、看護師が状況報告するとともに死亡確認・診断を行った。

その報告を受け、僕は葬儀社に連絡を入れた。これが午前7:30過ぎのことである。

ところでご遺体は、食堂ホールに隣接した静養室に安置されていたが、この時間から死後処置を行うし、利用者の皆さんの朝食もこれからだ。よってあんまり早い時間に葬儀社が到着しても、食事中の人の間を通って出棺することになるし、日勤者が到着しておらずにお見送りができない職員がたくさんいることになるため、利用者と職員が最後のお見送りの時間が十分とれるように、葬儀社には9:00過ぎに施設に到着するようにお願いした。

まだ朝早かったため、事務関連職員は出勤しておらず、僕が医師を協力医療機関まで送り、死亡診断書を書いていただき、それを持って施設に戻った。その時間は8:10頃。

当施設は日勤者の勤務時間が、9:00〜18:00までで、8:30を過ぎたあたりから日勤職員が続々と出勤してくる。それらの職員は、遺体のある部屋でお参りして、出棺の際には正面玄関前でお見送りすることになる。

ところで死亡診断書を持って施設に戻った僕は、ご遺族に葬儀社の到着が9:00過ぎになることを知らせていなかったことに気が付き、死亡診断書を渡しながらそのことをお知らせした。すると・・・。

ご遺族も気が動転していたのか、後から気が変わって、僕に依頼した葬儀社ではない別の葬儀社に自ら連絡を入れてしまったとのこと。僕に依頼したことはすっかり頭の中から飛んでしまっていたようだ。

あわてたのは僕である。が・・・ご家族にはあわてた様子を見せられない。ここであわてたら、ご遺族に「すみません」といういらない気遣いをさせてしまうと考えた。

そのため「大丈夫ですよ。僕が連絡したほうは断っておきますから。」といって施設長室へ向かった。心の中では、「このままでは2社の葬儀社が、施設の中でブッキングする!!」と非常に焦っていたが、走ってはいけない!!そしてすぐに先ほど、僕が依頼したほうの葬儀社に電話を入れ、正直に状況をお話しし、平謝りに謝って、キャンセル(この言葉が当てはまるかどうかはわからないが)していただいた。もう会社を車が出る直前だったようで、ぎりぎりセーフであった。

こんな経験もよい経験であった。今後は最愛の人を看取った家族は、気が動転してしまうということを十分想定しながら、確実に物事を確認しながら、いろいろなことを進めなければならないなと思ったりした。

前述したように、この記事で紹介した看取り介護は、5日間という短い期間であった。ご家族が最後の瞬間には間に合わなかったが、夜勤者が協力し合って、最後の瞬間を寂しくさせず、傍らに職員が寄り添って手を握り、息を引き取るその瞬間まで看取ったケースである。

その翌朝の朝礼では、看取り介護終了の報告と、本ケースの終了後カンファレンスに備えて、各セクションで、PC上の共有ファイルに評価を書きこんでおくようにアナウンスされた。

過程と結果評価は、今後行われることになる。・・・が、この話は内緒。んっこの記事でばれたか。

和歌山地域ソーシャルネットワーク雅(みやび)の皆さんが、素敵な動画を作ってくれました。ぜひご覧ください。


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