ソーシャルワーカーとは、人間の尊厳を護るために社会活動を行う人のことをいう。
しかしそのことが求められるのはソーシャルワーカーだけではない。対人援助に携わる人すべてにその心構えが求められてくるだろう。
そんなことは他者から言われなくても十分わかっているという人が多いのかもしれない。しかし本当の意味で、人の尊厳を護るという意味を分かっているのかと疑いたくなる人々が、この業界にはたくさん存在する。
それは対人援助の知識や技術がまったくない人という意味でもなく、全然仕事のできない人という意味でもなく、悪い人という意味でもないから厄介である。
ある場面を取り上げて、その人の仕事ぶりを評価すれば、なるほどたいしたものだと思える人であっても、特定の場面で平気で人の尊厳を損なうような言動をとっている人がいる。しかも当の本人には、その人の言動によって心を傷つけられている人が存在するという自覚がないから、問題はより深刻である。
専門職として適切な援助知識と技術を持っているのに、人の心の襞に気がつかずに、何気ない言葉で人を傷つけている人がいることは、対人援助という職業に対する信頼度を揺るがしかねない問題であり、すべての専門職がその問題の存在を意識すべきである。
「認知症をニンチと略すな!!」というブログ記事を書いたのは、もう4年も前のことだ。
この記事を書いたきっかけは、僕の管理するネット掲示板上で相談を受けたことによるものだ。
その相談とは、自分の親を在宅で介護をしている娘さんが、訪問介護や通所介護を利用しようと思い市に相談したところ、居宅介護支援事業所のケアマネジャーを紹介され、そのケアマネが、娘さんの自宅に契約に来た時の応対について、「このケアマネジャーを信用してよいのでしょうか?」という問いかけから始まった。
相談者である娘さんが問題と感じたケアマネジャーの対応とは、言葉の使い方に尽きる問題であった。その娘さんはアルツハイマー型認知症と診断されていた自分の親の相談をしているのに、そのケアマネジャーは、「ニンチの人をたくさん受け入れているデイサービスがあります。」、「ニンチであっても問題なく利用できますし、ニンチが進行しないような対応も考えてくれますよ」と言ったそうである。
彼女は、認知症をニンチと略して表現するケアマネが、あたかも年上である自分の親を見下しているように感じられ、認知症の家族を持つ者に対してあまりに配慮がない対応のように思え、信用できないと感じたのである。
「親の病気を略して表現するなんて、呼び捨てにしているのと同じではないですか?」、「介護の世界では認知症をニンチと呼ぶのが当たり前なんですか?」、「認知症という短い言葉を、なぜニンチと省略する必要があるんですか?」と嘆いていた相談者の訴えは、正当な訴えだろうと思って、その記事を書いたものである。
そして僕は、その記事を書いただけではなく、自分が行う認知症の理解に関する講演では、冒頭で必ずこのエピソードを紹介して、「安易に症状名を省略することで哀しんでいる人がたくさんいます。痴呆症という言葉を認知症という言葉に替えた意味は、痴呆という言葉には差別的イメージが含まれることから、呼称を別なものに変えて、認知症の人に対する差別や偏見が生まれないようにし、認知症の人やその家族の尊厳を護るためでした。それなのに新しい呼称を略して使う人がいます。しかしそのことで新たな差別が生まれるのではないでしょうか?」と訴えてきた。
あれから4年の月日が経つのに、いまだに「認知症」を安易に略す輩が存在する。先日もあるケアマネジャーが、自分がど忘れしたことを自嘲気味に、「俺もそろそろニンチが入ってきた。」と言っている場面に遭遇した。当人はジョークのつもりであろうが、僕は笑うことができなかった。その場所に、認知症の人を家族に持つ人がいないかと思って気を使うと同時に、すごく腹が立った。
当市の地域包括支援センターの職員や、認定審査委員の中にも、「あの利用者、ニンチではない」、「あの人ニンチだから」という言葉を日常的に使っている人がいる。恥ずかしことだ。何度指摘したらその恥に気がつくのだろうか。
認知症を、「ニンチ」と略して、その言葉が改まらない人に言いたい。あなたは対人援助に向いていません。すぐおやめなさい。
※次期介護報酬はどうあるべきかについてのアンケートを実施しています。是非回答協力をお願いします。(5/22回答締め切り)
介護・福祉情報掲示板(表板)
4/24発刊「介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料先行予約キャンペーンのインターネットでのお申し込みはこちらからお願いします。
4/24発刊「介護の詩・明日へつなぐ言葉」送料無料先行予約キャンペーンのFAXでのお申し込み。は、こちらから用紙をダウンロードして下さい
「人を語らずして介護を語るな 全3シリーズ」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。)
簡単だからこそ、難しく奥深い。日常生活で何気なく使うツールだから、言葉遣いを注意をしても届かない、逆ギレされる。そういう今に疲れ果ててます。