その1から続く)
行列に並ばないと生活支援を受けられないという状態は異常である。そのような場所では、暮らしの質は低下せざるを得ないし、利用者に相当のストレスを生じさせているという理解が必要である。

すべての介護従事者が、毎日行列に並ばないと暮らしが成立しないことが異常であることに気がつくべきである。日常生活行為を受けるための施設の暮らしの中で、利用者が長時間行列に並んでいる姿は異様な光景だと感じ取る普通の感覚を持つべきである。

そうであれば行列に並ばずに済む暮らしをどのように創っていくのか?その答えは単純で簡単である。施設の中に行列を作らなければ良いだけの話である。しかしその答えは簡単であっても、どうしたら行列を作らずに済むのかという方法論の答えはさほど簡単ではないだろう。

現にできている行列を、一朝一夕でなくすということは難しいだろう。例えば、トップが「明日から行列を作ってはならない」と方針を示して、トップダウンで行列廃止を唱えても、職員はその意味も方法も分からず、戸惑うか、怒りを感ずるだけだろう。

ではどうしたらよいのか。まず職員には、毎日行列をつくって、そこに並ばなければならない暮らしは苦痛であるし、異常であるという意識をしっかり持ってもらうことである。そのこと自体はさほど難しくはない。なぜなら毎日行列に並んで暮らしている職員はいないはずだから、自分におきかけて考えて、「それって普通?」と問いかけるだけで、普通ではないと理解できるからである。

行列に並ばなければケアを受けることができない状態の施設であるなら、その現状とは、やむを得ず行列を作って、利用者はそこに並んで、ただ待つという無意味な時間を過ごしているという異常な状態が存在しているのだということを理解した上で、その行列を作らないためにどうすべきかを職員自身が考える癖をつける必要がある。

行列を作らないケアこそが、生活の場で求められるケアであることを、介護サービスの担い手である職員全員がしっかり理解した上で、暮らしの中から行列をなくす意味は、異常な状態を正常に戻すという意味だということを自覚するようにしなければ、行列を作らないという動機づけが生まれない。動機づけがなければ工夫が生まれない。工夫がなければ何も変わらないのである。

正常な感覚を持って、行列をなくす動機づけが生まれたならば、次は行列を作っている理由を検証することだ。その時には、3人以上並んでいる状態を、「行列」とは呼ばず、「我慢」若しくは「強制」という呼び名に替えて、ユニットごとにリーダーが中心になって、「この我慢の原因は何かしら?」、「この強制はどうして創られているのかしら」とメンバーに問いかけて、行列ができてしまう理由を具体的に明らかにする必要がある。

そしてその理由に別の方法で具体的にアプローチする方法を考え、並ばなくてもよい方法に替えていくことだ。一朝一夕で行列がすべて無くならなくとも、一つずつ無意味な行列をなくしていくことが大事だと思う。その段階で、職員は廊下やフロアに何人もの利用者が並んでいる姿は異常であり、異様な光景だということが十分理解できてくると思う。それが正常感覚であることに気がつくと思う。フロアリーダーや、サブリーダーは、それが異様な景色であることを常に気付くように職員に常に疑問の言葉を投げかけ、一つの行列がなくなるたびに、そのことを評価すべきである。

昨日の記事で指摘したように、ユニットケアとはまさに行列を作らないケアであるのだから、広域型の大規模な施設であっても、その方法論を随所に取り入れて、分業をできるだけしない方法、サービス提供側にとって不便と思われる方法を、あえて取り入れるという考え方も必要である。

業務の効率性を追い求めるあまり、利用者の暮らしが無視されては、我々が従事する介護サービスの目標である「人の幸福追求」に反するのだから、あえて非効率的なサービス提供方法を選択することがあってもよいのである。

その向こう側に、利用者の笑顔があるなら、職員のモチベーションは高まるのではないだろうか。行列に無表情に並び、言葉も発していなかった人々の表情が豊かになるだけで、職員のモチベーションは高まるのではないだろうか。行列の息苦しさから大声を挙げていた人々が落ち着いて暮らすようになれば、職員のやりがいに繋がるのではないだろうか。

目指そう行列に並ばせないケア。創ろう行列のない暮らしの場。

今このことを実現しないと、我々自身が介護支援を必要とするようになったとき、必要な介護を受けるために、廊下で何もすることなく、何十分もただ座って待たされるという状態を強いられるのだということを忘れてはならない。

それが毎日繰り返されることの「恐ろしさ」を考えていけば、必ず行列を作らない工夫が生まれてくるであろう。方法論は決して一つではないはずだ。

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