一人では対応が難しい、体重が重い利用者に対して訪問介護を提供する場合や、エレベーターのない建物の2階以上の居室から歩行困難な利用者を外出させる場合など、利用者の状況等により、2人の訪問介護員によるサービス提供が必要となった場合は、サービス提供時間に応じた所定単位数の100分の200に相当する単位数である、「二人の介護員等の場合」のサービスコードにより請求することになっている。
しかし利用者の体重が二人で抱えるのにも不安があるほど重いなどの理由で、3人の訪問介護員によるサービス提供が必要になるという理由で、所定単位数の100分の300に相当する単位数を算定することはできず、介護保険制度上のルールとしては、「同時に二人を超える訪問介護員のサービスによる報酬の算定は認められない。」とされている。
2人の訪問介護員等によるサービス提供ができる対象となる事由とは、厚生労働大臣が定める者等(平成十二年二月十日 厚生省告示第二十三号)で規定されており、それは以下のように示されている。
二 指定居宅サービス介護給付費単位数表の訪問介護費の注7の厚生労働大臣が定める要件
二人の訪問介護員等により訪問介護を行うことについて利用者又はその家族等の同意を得ている場合であって、次のいずれかに該当するとき
イ 利用者の身体的理由により一人の訪問介護員等による介護が困難と認められる場合
ロ 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる場合
ハ その他利用者の状況等から判断して、イ又はロに準ずると認められる場合
最近目立ってきているのは、告示二十三号のイより、ロの理由である。認知症の初期で、一人暮らしをしているが、とられ妄想からヘルパーに暴言・暴力がみられるケースや、セクハラ行為がみられるケースなどである。
しかし介護支援専門員の中で、告示第二十三号のこのロ及びハの規定を知らない人がいて、ヘルパー二人対応すれば支援ができると思われるのに、体重が重くない、二人で抱えるようなサービス内容ではないという理由で、一人対応しかできないと思いこんで、適切な訪問介護計画を立てていないケースがみられた。これはまずい。
特にハについては、適切なアセスメントを行えば、イ又はロに準ずるという判断は、担当介護支援専門員によって行われ、その記録がしっかり残されておれば問題ないのであるから、認知症の方へのサービスなどで、一人対応では支援困難だが、二人対応で課題解決に結びつかないかなどのアセスメントをしっかり行ってほしい。
認知症の人が増え続けている現状で、そのことはますます必要になってくるだろう。
ところでヘルパーを二人派遣する場合、必ずしも同一事業所のヘルパーを派遣しなければならないとは限らない。二人対応が必要と思われても、現在サービス提供している訪問介護事業所で、同じ時間に派遣できるヘルパーがいないなどの場合は、その時間に別事業所のヘルパーを派遣し、2事業所の訪問介護員が協力し合ってサービス提供を行うことも可能である。
この場合の費用算定は、それぞれの事業所で訪問介護費を別々に算定することはできず、どちらかの事業所が、「二人の介護員等の場合」のサービスコードにより請求することになる。そして請求しない事業所に対し、請求事業所が費用を後に支払う事となる。この場合の具体的な分配は、事業所相互の合議で決めておくとされている。(通常は半々だろう。)
なお同一時間帯に複数の訪問介護事業所のサービスを計画し、A事業所が身体介護、B事業所が生活援助のように計画することは、告示第二十三号に該当しないとされており、保険請求できない行為である。またQ&Aでは、「例えば、2人の訪問介護員等が入浴介助を行い、その後、一人の訪問介護員等が生活援助を行う場合は、2人の訪問介護員等によるサービス提供時間が全体のサービス提供時間に占める割合が小さく、該当するサービスコードが存在しないため、便宜上それぞれの訪問介護員等のサービス提供時間に応じて訪問介護員等ごとに所定単位数を算定することとする。」とされている点にも注意が必要だ。
これらは、あらためて解説するまでもなく、介護支援専門員なら当然知っておらねばならない基本中の基本知識であるが、その知識を活用していない計画が目についてきたので、あらためて復讐の意味で本記事を記すものである。
なおこのことについては解釈通知老企36号においても
(10)2人の訪問介護員等による訪問介護の取扱い等
[1] 2人の訪問介護員等による訪問介護
2人の訪問介護員等による訪問介護について、所定単位数の100分の200に相当する単位数が算定される場合のうち、厚生労働大臣が定める者等(平成12年厚生省告示第23号。以下「23号告示」という。)第2号イの場合としては、体重が重い利用者に入浴介助等の重介護を内容とする訪問介護を提供する場合等が該当し、同号ハの場合としては、例えば、エレベータのない建物の2階以上の居室から歩行困難な利用者を外出させる場合等が該当するものであること。したがって、単に安全確保のために深夜の時間帯に2人の訪問介護員等によるサービス提供を行った場合は、利用者側の希望により利用者や家族の同意を得て行った場合を除き、所定単位数の100分の200に相当する単位数は算定されない。
なお、通院・外出介助において、1人の訪問介護員等が車両に同乗して気分の確認など移送中の介護も含めた介護行為を行う場合には、当該車両を運転するもう1人の訪問介護員等は別に「通院等のための乗車又は降車の介助」を算定することはできない。
以上の通り定められているので、今一度確認願いたい。
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