東洋経済オンラインというサイトで、転職に関する記事を読んだ。

35歳以上の人の転職が進んでいる現状をリポートした記事であるが、そこに書かれていることで、興味を引かれる内容があった。それは次の2点である。

・人材サービス大手、インテリジェンスの転職支援サービス『DODA』(デューダ)の調査によれば、2013年に異業種へ転職した人の割合は59.1%。半分以上を占める。

・幹部層の人材サービス大手、リクルートエグゼクティブエージェントのエグゼクティブコンサルタント、森本千賀子さんが、転職先として真っ先に挙げているのは、福祉・介護業界であり、「高齢化社会で業界全体の吸収力が断然違う。毎年、1000人規模で採用している企業もあり、あらゆる業種・ 業界から人材が流れている。リーマンショック後、求人が冷え切った不動産、建設、金融も復活し、2020年のオリンピックに向けて勢いを増すとみられる。」と発言している。

このように今現在、福祉・介護業界には、「あらゆる業種・ 業界から人材が流れている」というのである。

これは事実だろう。僕は、全国を講演で回っているが、そこで出会う福祉・介護業界関係者で、つい数年前までまったく異業種の職業に就いていたという人はかなりの数に昇ると実感している。

しかしそうであるにもかかわらず、この業界全体の人手不足感はますます増大しており、求人をいくらかけても、必要な介護職員や看護職員の数が揃えられないという事業者は多い。つい最近も、近隣の施設を経営している方が、求人に応ずる人がないことから、このままでは特定施設の指定を返上しなければならないとおっしゃっていた。

全国的に見ても同じような状況がみられ、例えば、せっかくユニット型特養の新設の指定を受けてオープンしたものの、職員募集に応募がなく、職員配置ができないため、一部のユニットをオープンできない施設があったりする。しかもそうした状況が全国津々浦々でみられている。

つまり福祉・介護業界には、「あらゆる業種・ 業界から人材が流れている」にもかかわらず、人材難・人手不足はますます深刻化しているのである。

これは進行速度の速い少子高齢社会において、それに備えた人員確保が何も対策されない中で、介護サービス事業者の数だけが増加し、サービスを提供する人の数の増加がそれに追いつかないということだろう。それがゆえに、福祉・介護業界に異業種からたくさんの人が流れてきているのに、なおかつ人手が足りないのである。

厚生労働省の「介護サービス施設・事業者調査」の介護職員数の推移をみると、介護保険制度創設当初(平成12年)に約55万人であった介護職員数は、平成23年には約130万人と、2.5倍に増えているのである。それでもその数は不足しており、団塊の世代が65歳に達した以後の不足感は、さらに深刻である。

そのような情勢の中で今後は、「リーマンショック後、求人が冷え切った不動産、建設、金融も復活し、2020年のオリンピックに向けて勢いを増すとみられる。」のである。

これは福祉・介護業界関係者にとっては脅威である。なぜならこの情勢は、今までのように福祉・介護業界に、異業種から人が回ってこなくなるだけではなく、逆に福祉・介護業界よりも所得の高い動産、建設、金融業界に人が流れる可能性が高いということだからである。

他の業界で求人がないから、介護の資格をとって、福祉・介護業界に流れてきた人々が少なからず存在するなかで、オリンピックや復興工事に関連して、建設業界の人手不足も深刻化しているが、そこにかけられる予算は莫大だから、建設業界は人件費にかける財源や予算は、福祉・介護業界所よりも潤沢である。

そうであれば、今後建設業界を中心に好条件で職員募集がかけられていく中で、福祉・介護の仕事が好きになってくれた人も、背に腹は代えられずに、福祉・介護業界から建設業に流れてしまう恐れが多分にある。

4日に行われた経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議の中で、阿部首相はインドネシアとフィリピンに限定して受け入れている外国人看護師や介護福祉士を、新たに外国人技能実習制度の対象とし、受け入れを拡大すべきだとしたものの、その具体的対策は、『今後は、開発途上国の経済発展を担うための“人づくり”に協力することを目的とした「技能実習制度」の対象とし、受け入れを拡大検討すべきと』としたに過ぎない。これが人手不足の解決策に直結していくかは甚だ疑問である。

現在経済連携協定(EPA)に基づきインドネシアとフィリピンに限定して受け入れている外国人介護福祉士も、「第26回介護福祉士国家試験結果」の合格者は、わずか78名である。しかも過去に介護福祉士資格を取得した外国人労働者が、短い就労期間で離職して帰国するという問題も出始めている。

外国人労働者の活用を拡大する緊急対策にしても、東京オリンピックの開催が意識されているからなのか、全国的な建設業の人手不足を解消することが一番の目的にされて、介護は二の次の感がある。

介護サービスの場で、日々人材確保に苦労する身としては、今後必要なサービスを提供するために、どのように人材を確保していくのかということが一番の不安要素である。何か根本的な対策を打っていかないと、この国の介護は壊れてしまうように思えてならない。

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