介護施設の相談員や介護支援専門員は、利用者100人に対して一人を配置するだけで、法令上の配置基準は満たすことになっている。しかも両者は兼務しても、それぞれ相談員常勤専従配置1名、介護支援専門員常勤専従配置1名と、一人で2職種2名分の常勤専従配置規定をクリアすることになっている。

実際上100人の利用者に対し、相談員兼介護支援専門員1名のみで対応することは困難であろうが、配置基準はそうなっているのである。

この配置基準からは、次の2点が見えてくる。

・相談員と介護支援専門員は、まったく同じ配置基準であり、それは両者の役割が同じであると考えられること。

・100人に対して1名しか配置しなくてよい職種は、介護サービスの場で「手足」となって動く役割ではなく、手足となって動く人々を、調整して効率よく、適切にサービス提供できるようにする、「頭脳」の役割を持つということ。
(※頭脳とか、手足という表現は、機能を現わすために浸かっている表現で、どちらも必要なものであり、どちらが上位であるとか、下位であるとかという意味を示すものではない事を断っておく。)

つまり相談員と介護支援専門員と、ソーシャルワーカーとして、施設サービス全体をコーディネートしながら、利用者に最も適したサービスを結びつけるために、指揮をとる役割を持っているのである。

そうであるがゆえに、ソーシャルワーカーである相談員や介護支援専門員が、ケアワーク実務を行うことは好ましいことではない。身体介護をできるというスキルがあることは良いことだが、相談員や介護支援専門員という職務に携わりながら、介護職員と同じように利用者の身体介護を行うことは良い事とは思えず、ましてや相談員や介護支援専門員が介護実務をこなさないと、施設サービスが回っていかないという状態は不健全である。

なぜならソーシャルワーカーとは、ケアワーカーより少しだけ高い位置にある木立の上に立って、看護・介護職員があまりにも利用者との距離が近いがゆえに、見えなくなっているものを、みつめる役割があるからだ。

施設や事業所の管理者は、一番高い木の上から、職場全体を眺め、財務・経理上の問題把握や人事管理等を行うわけであるが、ソーシャルワーカーである相談員や介護支援専門員は、介護サービスの品質管理の現場責任者として、管理者からは見えない介護サービスの現状も把握しながら、ケアワークを行っている人とは別の視点から、「変えなければならないこと」、「新たにしなければならないこと」、「やってはいけないこと」を把握し、サービスを作っていく為のコーディネートしていく役割があるのだ。

この際に、看護・介護職員と同じこと行いながら、ケアワークの主要な役割を担ってしまうと、実際に業務をやっているがゆえに見えなくなってしまうものがあるばかりではなく、業務を行っているがゆえに妥協的に考えて、変えなければならないものを、「でも仕方ない」とい考えてしまい、変えることができない理由を探してし舞う子tになりかねない。これではケアサービスの品質向上が図れなくなる。

介護支援専門員は、相談員以外の書看護職員や介護職員との兼務も認められており、その場合でも一人の職員で2職種の常勤専従配置規定を満たすことになっているがゆえに、介護支援専門員の資格をとった人を、そのまま看護・介護業務に就かせたままで、介護支援専門員と野兼務発令を行い、1日のうち何時間かを看護・介護業務から外して介護支援専門員の業務に就かせているという施設がある。

しかしその際、「介護業務から外して介護支援専門員の業務に就かせているという」という時間帯に、何をさせているかといえば、幾人かの利用者を、その兼務職員の担当にさせ、担当利用者のケアプランを作る作業を行っている場合が多い。

しかしこの実態は、ケアマネジャーでも、ソーシャルワーカーでもなく、単なるケアプランナーである。

施設サービス計画を作成するだけが、ソーシャルワーカーたる介護支援専門員の仕事ではない。

施設サービス計画を作成する過程で、アセスメントを行って利用者の生活課題を把握しながら、施設サービス計画という道具を使いこなして、その課題解決に当たるという一連のケアマネジメントを主とするソーシャルワークを行うのがソーシャルワーカーたる介護支援専門員の仕事である。これはケアプラン作成作業の他にしなければならない業務がたくさんあるという意味でもある。

業務区分ができない相談員と介護支援専門員の兼務は可能であるし、むしろソーシャルワーカーとして区分できない以上、両者の専任化など意味はないと思うが、しかし相談員以外の他の職種と介護支援専門員の兼務は好ましくないし、すべきではない。

ケアワーク業務と兼務させてしまえば、木立の上に立って全体を見渡す機能が低下し、ソーシャルワーカーとしての役割を果たせなくなるという理解を持つべきは、施設の管理者である。このあたりを分かっていない管理者が多いのが一番の問題である。

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