あの日からまだ3年なのか、もう3年なのか・・・。人それぞれに様々な思いはあるだろうが、一つだけ言えることは震災はまだ終わっていないということだ。

そして大切な家族や、友人や、知人など、様々なものを失った人々の哀しみは続いているということだ。

震災関連死を含めると、亡くなった方の数は2万人を超えるそうだが、亡くなった方々の関係者にすれば、自分の愛する誰かが亡くなったということは、2万分の1の死ではない。

震災直後に北野たけしさんが次のように発言している。
人の命は、2万分の1でも8万分の1でもない。そうじゃなくて、そこには「1人が死んだ事件が2万件あった」ってことなんだよ。

まさにあの日から今までに、「1人が死んだ事案が2万件以上あった」という意味で、ある人の死の周辺には、残された数多くの方々の哀しみが無数に存在していて、その傷跡がうずき続けているなかで迎える3年目のこの日ではないかと思う。

そうしたたくさんの人々が、頑張って前を向いて歩んでいるのだろうが、それらの人々の中にも、この日が近づくこと自体に恐怖を感じている方がいる。この日が近づくだけで、やるせない思いが湧き上がってくることに戸惑う人がいる。そうした人々の心の傷は、どうしたら癒すことができるのだろうか・・・。私達はそれらの人々にどう向き合っていけばよいのだろうか。どんな言葉をかければよいのだろうか。

答えを見つけられない自分がもどかしい。

直接被害にあわなかった僕らは、それらの人々に思いを馳せて、そっと見守ることしかできないのかもしれない。

復興支援に必要な事を、できる範囲で続けていくことしかできないのかもしれない。

あの日は金曜日だった。僕はその日、福岡市で「地域包括ケアシステムとは何か」という講演と、「介護保険制度改正」に関する講演を、午後から2本続けて行っていて、夜遅くにホテルに帰るまでそのような大災害が起きている事を知らなかった。テレビのニュース画像を見て、この日本に今起きている事だとは信じられなかった。

地震が起きた時間は午後2時46分18秒。そのとき被災地では我々と同じく介護サービスに従事していた仲間もたくさんいたはずだ。それらの人々の中には、あの震災で一瞬のうちに命を失った人もいる。たくさんの仲間が志半ばで天に還っていった。

僕たちはそうして失われていったたくさんの人々の魂に対して、安らかなれと祈りを捧げるしかないのだろうか。しかしあのような未曽有の災害があった国の民だからこそ、その時に命を失ってしまった人々が、この世でやり残したことがあるとしたらなんだろうかと考え続けるべきではないかと思う。

対人援助サービス・介護の現場で命を失っていった仲間は、何をしたかったのかを考え続けなければならないのではないと思う。

少なくともそれらの人々は、人を幸せにするために何をするべきかを考えながら、日々の業務に携わっていただろうということを信じ、それらの方々がやりたかった事を、後に残された我々の手で成し遂げていく必要があるのではないだろうか。

天に召された多くの仲間に対して、何か供養になるものがあるとしたら、我々自身の手で恥ずかしくない介護サービスを創り上げていくことしかないのではないだろうか。

僕のこのブログを読んでくれていた人の中にも、あの震災で命を落としてしまった人がいるかもしれない。その人達にできることは何か?恩をどのように返すことができるのだろうか。

それはきっと、それらの人々が共感してくれた思いを、文字にして伝え続けることなのかもしれない。僕は無力な一市民でしかないが、自分の無力さを恥じて何もしない人にはならないでおこうと思う。思いを伝えることだけはできるし、幸いにして毎日4.000人近い人が、その思いを読んで、何かを感じてくれているんだから、それらの人々に伝えることが僕の役割なのかもしれない。それが僕の使命なのかもしれない。そのことはできる限り続けていくべきなのかもしれない。あの日の直後に僕の本を避難所で泣きながら読んでくれた方もいる。(参照:たった1冊の大切な財産

伝えることが僕にできることなのかもしれない。その結果、亡くなっていった仲間たちが実現を目指したものに、少しだけ近づけるのであれば、それが僕にできることだろう。そのことを天から見守ってくれる人がいることを信じていたい。

そして、介護サービスの質を高め、誰しもが幸せになる介護を作っていったとしたら、神に召された多くの人々がよくやったと言ってくれて、また再び生まれ変わって、この国で介護という職業についてくれると信じていたい。

去年も、一昨年も同じことを考えながら過ごしていた。今日という日は、そういう日である。

今日のこの記事のタイトルは、「あの日に思いを馳せながら」としたが、あの日に思いを馳せることができる我々と異なり、あの日の事を思い出したくはない人々が被災地にはたくさんいるのだと想像する。思いを馳せるなんて甘い事を言ってほしくないと思っている人もいるのかもしれない。そんなこともふと考えたりしている・・・。それらの人々の心が安らぐために何ができるのかを考え続けていこうと思う。

合掌。

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