最初にお断りしておくが、この記事に掲載している画像は、撮影時に利用者や家族に、ブログ記事に使うことを承諾していただいている。しかし記事内容を考えると、この記事で紹介するケースの対象者の方と、そのご家族については、顔がわからないようにした方が良いという判断から、マスキング加工をさせていただいた事をご了承願いたい。(ご家族には、ネットには公開していない加工なしの写真を貼り付けた記事を記念に贈る予定である。)

さて本題。

ある方がターミナルケアの時期であることが、医師から家族に説明された。医療機関での対応の必要性も薄く、安らかに最期を迎えるための計画も具体的に説明されたことで、ご家族は看取り介護を当施設で行い、最後まで住み慣れた場所で過ごすという選択をされた。

ここまでは、いつもの看取り介護の確認と計画書の説明・同意と同じ経緯を踏んでいた。

少しだけ他のケースと違っていたのは、看取り介護計画の説明・同意の際に、誕生祝いをどうするのかということが話題になった点である。

看取り対象となった方は、この説明が行われた1週間後に99歳の誕生日を迎えられる予定であった。99歳のお祝いは「百」の字から一をとると白になる事から「白寿の祝い」とも称される。100歳以上の高齢者がかつてより珍しくなくなったと言っても、白寿を迎える人がそんなにいるわけではないということに変わりはなく、それは非常におめでたいことであるはずだ。

看取り介護対象となったご当人は、その時はまだ呼びかけに応ずることができる状態で、十分意思疎通可能な状態であった。しかし1週間後までにその意識が清明のままでいられるという保障はないし、残された時間があるかどうか微妙なところである。

そのような状況を鑑みて、ご家族の希望もあることから、看取り介護計画の説明同意をいただいた翌日に誕生祝いと白寿のお祝いを行うこととし、急遽準備を進めた。

その当日はご家族もたくさん集まってくれた。ご本人もお祝いの意味を十分理解して、嬉しそうな表情を見せてくれている。勿論、お集まりになったご家族・ご親戚はそれ以上に嬉しそうな表情を見せてくれている。
白寿祝い5
白寿祝い6
白寿祝い4
何度かこのブログ記事に書いているように、看取り介護とは、密室で行われてはならず、どのように施設の中で看取られているのかということが、第3者にも見える形が望ましい。しかし利用者自身が、「看取り介護の対象となっている」ということを認識しているとは限らないし、死の告知そのものである、「看取り介護の告知」をしないケースも多いために、終末期であるということを本人には知らせていないということを共通理解して関わらねばならないことがある。

本ケースもまさにそうしたケースであるが、だからと言って、施設の個室に利用者をひっそりと閉じ込めて、他の利用者が訪室さえもできないような寂しい状態にしてはならないと思う。

他の利用者の方が、対象者が看取り介護の時期であることを理解しつつ、そのことを本人には知らせない方が良いという事を理解し、実際に知らせていないことにも理解を示してくれるのであれば、看取り介護期であっても、施設の中の様々な場面で、看取り介護対象者と触れ合ってもよいわけである。

むしろ看取り介護期であるからこそ、対象となる方が最期の瞬間まで寂しくならないように、たくさんの人が訪室して、声をかけてくれることが望ましいと思う。だからこの会にも、仲のよいご友人として、緑風園で暮らしている人も何人か参加している。それらの人々も、お別れの日が近い事を理解してくれている人達である。

白寿祝い8
この方は、1週間後の99歳の誕生日も迎える事ができたが、その時はこの日に見せた嬉しそうな表情を引き出せるような状態ではなく、意識が混濁する時間が長くなっていたので、結果的に白寿のお祝いを早めたことは正解だったように思う。

99歳を迎えた数日後に旅立たれたが、ご家族も最後のセレモニーに参加し、ご当人の嬉しそうな顔を見る事ができたことで思い出が一つ増えたのではないだろうか。意識するしないに関わらず、命はこうしてリレーされていくのではないだろうか。

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