準詐欺罪(じゅんさぎざい)という罪は、詐欺罪とどう違うのだろうかと思って調べたところ、ウィキペディアにつぎのような解説が書かれていた。
刑法に規定された犯罪の一つである。未成年者の知慮浅薄又は人の心神耗弱に乗じて、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させることを内容とする(248条)。この犯罪を行ったものは10年以下の懲役に処せられ、犯罪行為によって得た物は没収、追徴される(19条、20条)。未遂も罰せられる(250条)。
欺罔行為が行われておらず、詐欺罪(246条)の規定で捕捉しきれないが、相手方の意思に瑕疵の有る状態を利用する点で詐欺罪に類似するという点に鑑みて、詐欺罪に準ずる犯罪類型として処罰することを目的としている。 なお、交付のための意思能力自体がない幼児や高度の精神障害者を欺いて財物を奪う行為は窃盗罪(235条)となる。
そうであれば、認知症で判断能力のない人の心神耗弱に乗じて財産を奪うような行為は、詐欺罪ではなく準詐欺罪になるわけであるが、「準」という文字が入っている意味は、その行為の悪質度が低いわけでもなく、刑が軽いわけでもないということである。よって準詐欺罪の法定刑も詐欺罪と同様である。
なぜこのような事に興味を持ったかと言うと、準詐欺罪容疑で介護施設の元管理者らが逮捕されたというインターネットニュースを目にしたからである。
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毎日新聞 2014年02月25日 12時34分(最終更新 02月25日 12時54分)より
北九州市若松区で施設に入所している認知症の男性(83)が現金1.000万円をだまし取られたとされる事件で、福岡県警若松署は25日、この男性からさらに約1.000万円をだまし取ったとして同市小倉北区高尾1、介護事業所の元施設管理者、松尾光信被告(48)ら3人=別の準詐欺罪で起訴=を準詐欺容疑で再逮捕した。同署は3人の認否は明らかにしていない。
他に再逮捕したのは、同市八幡西区藤原4の元介護職員、矢野みゆき(52)と、同区永犬丸2の介護職員、寺田香(30)の両被告。
逮捕容疑は、男性が入所している施設に勤務していた2010年11月、小倉北区内の金融機関に男性を連れて行き、男性名義の定期預金を解約させ、男性の心神耗弱状態を利用して現金1025万9302円を受け取ったとしている。
3人は10年8月に若松区内の郵便局で、同じ男性に現金1000万円を引き出させ、受け取ったとして準詐欺罪で起訴されている
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ここで書かれている「介護施設」とはグループホームである。不正が発覚したきっかけは、グループホーム関係者から警察署に「経理に不審点がある」とする情報提供が寄せられ事によるもので、グループホームを運営している株式会社は、すでに3人を懲戒解雇したうえ、運営資金を横領した疑いでも被害届も出しているそうである。3人はホームを辞めているが、矢野・寺田両容疑者については別の介護施設で働いていたという。
最初の逮捕は本年1月末で、今回は当初の1.000万円搾取とは別件で、さらに1.000万円を超える搾取に対する準詐欺容疑での再逮捕とのことである。
しかも県警は、ほかの利用者にも同様に詐欺した疑いもあるとして、詐欺・横領した金銭の使途や余罪について調べを進めていく方針とのことであるから、被害はまだ拡大するかもしれない。このグループホームだけではなく、容疑者が解雇になった後に働いていた介護施設の利用者も被害にあっていないか心配されるところである。
それにしても、介護施設で働く動機づけは様々だとしても、この人達はいったい何のために介護という職業を選択したのだろうか?まさかそこが人をだましやすい場所であると考え、最初から利用者の金銭を搾取する目的で就業したわけではあるまい。
そこは人の命と暮らしを守る場所であり、誰よりも我々自身が利用者の代弁者となり、守り抜く存在でなければならないはずだ。それは建前ではなく、この仕事の使命感や誇りを汚さぬために、我々自身が人間性を失わないために、絶対に揺るがせてはならない基本姿勢であるはずだ。
しかしそのようなことを何も考えず、業務上知り得た情報に基づいて、認知症の人のお金を奪うという行為を、グループホームの職員が共謀の上で行うとしたら、認知症の人や、その家族は何を信じたらよいのか分からなくなってしまう。
これは「振り込め詐欺」より悪質な犯罪だと思う。なぜなら認知症の人は、自分が預金を下ろして他人に渡してしまった事も忘れてしまう可能性が高く、被害意識もないまま、知らないところで無一文にされてしまい、その被害を訴えられない可能性が高いからである。そうした犯罪行為が、自らが暮らす場所で、日常的な介護を提供する人によって行われるとしたら、余計に犯罪被害は発覚せず、完全犯罪になる可能性も高くなる。
それを狙って介護という職業を利用したとしたら、この3名の容疑者は人として許されざる行為をした者として、徹底的に糾弾されて良いだろうと思う。
それにしても今後増え続ける認知症高齢者に対する生活支援の場で、必要な人材がそろわない状況が加速することへの対策が皆無な状態が続く限り、こうした犯罪被害者は増えてしまうのではないだろうか。しかも表に出ない罪を問えない犯罪行為が、世間の目の届かないところで増大してしまう恐れさえある。
我々がそれに対してできる事とはなんだろう。搾取される認知症高齢者を守るために何をしなければならないのだろうか。悩ましい問題である。
超高齢社会で、認知症の人が増えていくことが明らかなのだから、こうした犯罪を抑止するためにも、法定刑もより厳罰化の方向に見直していく必要があるのではないだろうか。
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悲しい事件ですね。
色々な犯罪がありますが、無垢な赤ちゃんの頃からの生活歴で何かがあったのでしょうか?
★昨日、勤務の合間でドタバタしながら「傾聴ボランティア研修」に参加しました。
「色々な考え方がある」ことを理解する目的のグループワークでしたが、キット色々な人生があったのでしょうね。
しかし、犯罪は許されない事です。
私たちの仕事は色々な誘惑があるかもしれませんが、常に心を穏やかに冷静に判断できる
心身の健康とエネルギーが必要な事も学んで参りました。
★勤務先でも色々な性格の集合体です。
自分の考えが正しいと思いこまず、一呼吸おいて相手の考えを冷静に「傾聴」できるようにエネルギーをためて出勤したいと思います。では、行って参ります。