当施設の看取り介護の実践には、いくつかのターニングポイントがあった。
介護報酬に看取り介護加算が設けられた平成18年には、加算算定ルールを最低基準とし、看取り介護指針を独自に作り、それに沿って援助を開始した。そのことによって、 利用者が回復不能の終末期であるというコンセンサスを、職員全員と家族の間で得ることの大切さをあらためて知る事となった。
平成20年4月には、看取り介護指針内容を変更し、御家族にアンケートを記載して頂き、御家族の本当の声を聞く機会を持つようにしたその回答をもとに、各部署での評価・課題点を話し合う機会を設けた。。その取り組みをさらに進めて看取り介護終了後カンファレンス開始(デスカンファレンス)を開始し、ご家族にもできるだけ参加していただくようにした。そのことは看取り介護の結果責任を強く意識ることに繋がり、その実践評価を施設内部の人間だけではなく、家族にもきちんとしていただくことは、決して看取り介護とは終末期になった時期のケアとして考えるものではなく、看取り介護になる以前の日頃の援助こそが大切であることが再確認できることに繋がっていった。そのために普段からスタッフが進んで声をかけるようになってきて、ご家族のリアルな声を聞く機会が増えた。そうしたエピソードを集めながら、普段の援助に活かす事ができないかを具体的に考え、実行する意識が高まった。
平成22年には、施設で看取ることに同意したものの、いざ最期の瞬間を迎えるに当たって不安を持つ家族の気持ちが明らかになり『愛する人の旅立ちにあたって』というパンフレット作成しを看取り介護開始の同意時に説明 するようにしている。
(文字に貼りついたリンク先からダウンロードできるので参照していただきたい。)
このパンフレットの作成のきっかけになったのは、死の直前に唇や口の中が乾燥して、喉もとでゴロゴロという音がする「デスラッセル(死前喘鳴)」という状態になられた方がいて、その時に苦しそうに見えた家族が、デスカンファレンスの際に、「あのような状態になるのなら、ここではなく医療機関で亡くなる方が良かったのではないか」という疑問と後悔の念を示したことによるものだ。我々の予測の範囲であったデスラッセルという状態を、事前に家族に説明しておかなかった事で、いらぬ不安感を持たせたという反省から、デスカンファレンスの場でそのことを説明するのではなく、看取り介護を開始することの同意を得る段階で説明することの必要性を痛感して、 特別養護老人ホーム緑風園・看取り介護パンフレット「ご家族の皆様へ 愛する人の旅立ちにあたって」として作成したものである。
このパンフレットは、苫小牧訪問看護ステーションの所長を務めていた門脇所長(当時)の作成したものを参考に、同氏の承諾を得て、内容を当施設に合わせて変更し、僕が作成したものである。
ここの最後に、「終末期の呼吸について」という項目を設けており、ここでは下顎(かがく)呼吸について説明しているのであるが、それがどうもわかりづらいと思い、昨日新しい文章に変更更新した。
その部分が上の画像である。修正前の昨日までの文章は以下に示すので比較していただきたい。
(旧)終末期の呼吸について
無意識に吐く息と同時に、声が漏れることがあります。
呼吸のリズムが速くなったり、遅くなったり30 秒前後、呼吸を休むことがあります。残された力を使って呼吸するために、肩やあごを使って呼吸します。ご本人は苦痛を感じていないので、静かに見守りましょう。
↑どうだろう?新バージョンの方が分かりやすいのではないだろうか。下顎呼吸は苦しそうに見えるが、それは酸素が不足して喘ぐように呼吸している状態ではあるものの、そのことは同時に脳内麻薬物質の生成を生み、恍惚状態となって苦しくないもので、この際に無理に酸素を送ると麻薬物質がでなくなり、余計に苦しいという事を説明に加えたものである。ご意見がある方はお聞かせいただきたい。
(※なお、当施設のケアマネからは、「くどくないですか?」と言われた・・・。チッ!!)
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看取り介護の同意書だけの説明でなく、
このような具体的なパンフレットがあると、
なるほど、わかりやすいし、心の準備が出来ると思います。
家族を看取った経験のある人ばかりではないですし。
文章から、これから大切な家族との別れを迎える方への
思いやりの気持ちが感じられます。
大変勉強になります。