中村秀一氏が老健局長だった時に作られた、「2015年の高齢者介護」という報告書の中で、「地域包括ケアシステム」という言葉が国の資料としては初めて使われた。

これは広島県御調町(市町村合併後は尾道市)が昭和50年代前半から取り組んでいたシステムをモデルにしたもので、日常生活圏域で、急性期入院を除く医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスを一体的かつ適切に利用できる提供体制を全国につくるというシステムである。

旧御調町の場合は、このシステムの中心に国保病院の医師がいたわけであるが、介護保険制度では地域包括支援センターを中心に、医療・保険・福祉・介護のネットワークをつくるシステムを作り上げようとしているわけである。そのために2012年の制度改正では、「地域包括ケア」の仕組みを支える基礎的なサービスとして「定時巡回・随時対応型訪問介護看護」が新設された。これは新潟県長岡市の「こぶし園」が、特養の機能を地域に分散させて対応した方式をモデルに加えたものである。

しかしその体制づくりを行政主導で組みあげて、うまくいっているところはあるのだろうか?

地域包括ケアシステムの先進地域である、旧御調町にしても、長岡市にしても、多職種連携ができているのは、一医療法人内、一社会福祉法人内のシステムであったからであり、地域全体のネットワークとは必ずしもいえないのではないだろうか。

地域包括支援センターは、そうしたシステムを創造し、運営する中心的役割を担っていけるのだろうか。ここが一番の問題である。

そんな中、先日研修講師として招待を受けた仙台市の任意団体、「せんだい医療・福祉多職種連携ネットワーク ささかまhands」さんの取り組みは、我々に多職種連携のヒントを与えてくれるものであると感じた。

この団体は、もともと医療と福祉の関係者が「顔の見える関係」になって、連携に取り組もうということから始まっていて、小さな単位での「飲みにケーション」の会を発端に、少しずつその輪を広げ、現在では「顔の見える会」というオフ会と研修会をセットで行っている。

僕が招待をうけた研修会では、様々な職種の人々が200名以上集まって、講演を受講してくれたが、その後のオフ会にも150名近い人が集まって、立食形式の会場でたくさんの人々が名刺交換や情報交換を行っていた。そこに集った主な職種は、医師・歯科医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士(介護士)・ケアマネジャー・訪問マッサージ師・事務職・出版社の編集者、ゲーム機器開発会社の方など多種多彩であったが、こうした形で生まれた関係によって、日ごろの業務の中で、必要となる他機関の別の専門職との連携が構築された事例も、研修会の中で報告されていた。

例えば、褥創ができ急激に状態悪化した利用者の担当ケアマネが、顔の見える関係になった医師と連携できたケースであったり、座位姿勢がうまくとれない特養利用者の担当者が、シーティングが得意な福祉用具貸与事業所と関係ができたことで、座位姿勢の改善の具体策を教えられ、利用者の座位姿勢が改善し、そのことで職員の意識が向上した例であったり、まさに多職種連携の実例が数々生まれているのである。

3/8(土)に中津市教育福祉センターで行われる、「大分県介護支援専門員協会主催研修」では、「地域包括ケアシステムにおける専門職の役割」というテーマで講演を依頼されているが、そこでは、ささかまhandsの須藤さんのご協力をいただき、同会の活動内容について、須藤さんが作ったファイルを借用して紹介する予定である。

その理由は、地域包括ケアシステムの中での専門職の役割の一つに、多職種連携の取り組みが必須とされ、それが重要なピースになるであろうと思え、ささかまhandsさんの取り組みがヒントになると考えたからである。

ささかまhandsさんの取り組み等は、多職種連携システムが、行政が創り上げたシステムによって存在するのではなく、人間関係によって存在することを示唆している。その関係の広がりこそが地域包括ケアシステムの基盤となるという証明ではないだろうか。

むしろ行政が創り上げた多職種連携の実態が、声の大きな医師の指揮命令システムを地域全体に貼りめぐらして終わっているという地域も存在する。多職種連携という言葉で、福祉ケーサービスや、その担当者を、医療系サービスや、その担当者の指揮命令を受ける存在、あるいは下請け機関に貶めているケースである。

利用者の代弁機能を担う、介護支援専門員始め、ソーシャルワーカーがそうした存在になっては困るわけである。多職種連携は、あくまで対等の関係でチームを組み、それぞれの専門性を尊重し合いながらサービス展開するものでなければならない。

地域包括ケアシステムが機能するためには、本当の意味で所属機関を超えた多職種連携が必須だ。地域包括ケアシステムの基盤となるものとは、間違いなく多職種連携ができる関係づくりなのではないだろうか。それがないところでの「地域他つケアシステム」の実態は、「地域丸投げケアシステム」でしかないだろう。

そもそも我々に求められているのは「地域包括ケアシステム」を作ることそのものではなく、その先にあるものである。

求められるのは形式的な「地域包括ケアシステム」ではなく、地域の中で所属機関を超えた多職種が有機的に連携することにより、保健・医療・福祉・介護のセーフティネットを、地域全体に張りめぐらせて、その網の目からこぼれる人がいないようにすることだと思う。

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