僕は今までに、出版社から共著本1冊(介護施設と法令遵守:ぎょうせい)と、自著本3冊(人を語らずして介護を語るなシリーズ:ヒューマン・ヘルスケア・システム)を出している。さらに福祉や介護の専門誌に連載をしているし、いろいろな出版社から依頼を受けてテーマに沿った原稿を単発で書く機会も多い。

それらはすべて印税や執筆料を伴うもので、書くことによっていくばくかの報酬を得ている。(僕程度が、そのことで得られる収入は知れており、それで生活ができるということではない。)

よって時々、「プロのもの書き」と言われることもあるが、それもあながち間違いではないのだろう。しかし僕は、書き手としての教育は一切受けていない。書くことを人から教わったことはないのである。そんな僕が書いた本を、たくさんの人々が購入して下さることに対して、感謝の気持ちしかない。本当にありがたいことである。

かつて司馬遼太郎さんが、小説のもっている形式や形態の無定義さ、非定型性について、「小説というものの表現形式の頼もしさは、マヨネーズを作るほどの厳密さもないことである。小説というものは一般的に、当人もしくは読み手にとって気に入らない作品がありえても、出来そこないというものはありえない。」というふうに語っている。

僕が書いて出版されているものと、小説とはまったく異なるものだが、書くことを教えられたことがない僕が、今までの業界本の形式にとらわれずに、自由に書いたという点では、今年4月24日に発刊される新刊本は、司馬さんのような精神を持って書いた本と言えるかもしれない。それは新しい形の本に挑戦して書いたものであるが、それが読者の皆様に受け入れられるかどうかは別として、僕としては快心の出来栄えと思っている。

ところで1冊の本が、世に出るまでの間には、様々な過程があるわけだが、本が作られる最初の出発点とは、必ずしも書き手が原稿を書きはじめた時点とイコールになるものではない。

特に今回の新刊本の場合は、昨年3年連続で出版されていた、「人を語らずして介護を語るな」シリーズの完結編が出版され、シリーズが終了したということから、すぐに新しい本の出版に向けて何かを書くという考え方にはならなかった。

しかし新しいコンセプトの本を執筆してみないかと、出版社から持ちかけられて、書けるものなら書いてみようという気になったのは、昨年3月16日に女性就業支援センター(東京都港区芝)で行われた、「人を語らずして介護を語るな THE FINAL 誰かの赤い花になるために 出版記念シンポジウム」の際に、出版社の担当者とそのことについて雑談した時のことである。

それが具体化したのは、5月の最終日曜日の事である。

僕はその前の金曜日5/24に、僕自身初めてとなる青森での講演のため十和田市に行き、24日と25日に2講演を行った後、午後7時台の新幹線で千葉県幕張に移動し、翌26日(日)朝8:30という、僕自身はそれまで経験したことのないような早い時間から、幕張メッセで行われた徳州会グループ職員研修で講師を務め、午後一番の飛行機で北海道に帰る予定であった。こんなに早い時間であったゆえに、羽田空港に昼までに到着でき、ゆっくり昼ごはんを食べる時間がとれた。

そのため、空港でお昼ご飯を食べる時間を利用して、出版社の社長と編集担当者と打ち合わせを行ったが、その時に僕のイメージにはなかった「新しいコンセプトの本」の企画案が示された。

最初にその案を聴いたときの僕の第一印象では、その企画通りの執筆作業は大変そうに思えたし、筆がスムースに進むような内容ではないと考えて、首をひねったというのが本当のところである。しかし話しあっているうちに、その考えは180度変わっていき、新企画案が非常に面白いと思えるようになった。いったんその方向性が良いと思えると、僕の中でイメージが膨らみ、書きたい文章がどんどん頭に浮かんできた。

そういう意味で、今度の新刊の誕生のスタートラインは、まさに羽田空港内の和食料理店(たしか京ぜんだったと記憶している)で、昼ごはんを食べながらの話し合いからと言ってよいだろう。

その後、僕は羽田空港で与えられた企画案から、自分自身の中で構想を練り、様々な角度と方向へと溢れだすアイディアを整理しながら、自分なりに「これだ」と思う方向性を見つけ出し、実際の原稿執筆作業にかかったのは、夏が終わりに近づくお盆が明けた頃である。それから昨年12月初めまでに原稿を仕上げ、12月いっぱいを推敲作業にあて、年末から年始の休みは、推敲を終えた最終原稿の取りまとめに費やし、年明け早々、出版社の正月休みが終わり、新年出勤第1日目に原稿をメールで入稿した。

原稿を出版社に送った後は、一旦僕の作業はなくなるわけである。今は初校ゲラが送られてくるのを待って、ゲラが送られてきてから校正作業を数回行い、本が出版されるのを待つだけである。この間、本のタイトルの決定等のため出版社との打ち合わせを行っているが、それも既に1/18(土)川崎講演の前に時間をとって終えている。

前述したように、校正作業は残っているが、今現在僕の作業はなく、全て出版社の編集者が本の刊行に向けた諸作業を行っており、その作業の中には、本のデザインを決めるなどの、製本に向けての作業が含まれている。

新刊イメージ3              新刊イメージ2
上の画像は、帯カバーなしと、帯カバー付きのイメージ画像であるが、これは最終決定されたデザインではなく、編集者がデザイナーに発注しているカバーデザインのイメージである。ここから専門家であるデザイナーの手が加わって徐々に完成に近づいていく。色も現段階では決まっていない。

デザイン第1案から徐々に完成に向けて仕上がっていくこの時期が、一番わくわくする時期でもある。どのような形の本として世に出ていくのか、僕自身も期待に胸を膨らませている。最終的にどのような本になるのか楽しみにお待ちいただきたい。

発売は4月24日。本のサイズは、やや大きめの新書版で、前シリーズの四六版よりは小さな本になるが、逆に文字の大きさは前シリーズ「人を語らずして介護を語るな」より少し大きくなって、読みやすくなっていると思う。そのために本文は216頁で3章立てとなっている。お値段は、できるだけ皆さんがお求めやすいように、1.000円+税という価格に抑えていただいた。

本の内容自体は、介護や人間に関する心に残る言葉を伝えようというコンセプトを持って書いたものだ。僕にとっては自信作で、全ての方にお勧めできると思っている。特に今回は、介護業界に従事する仲間のみならず、介護サービスを利用する人や、そのご家族、介護の職業に将来就きたいと思っている学生や、介護にまったく興味のない人までを含めて、「読んでわかる介護」を書いたつもりだ。

とても読みやすい本で、一気に読んでしまうと思うが、同時に何度も読み返すことができる本に仕上がっていると思う。特に介護サービスに携わる人には、明日の勇気に繋がる内容になっており、必ず読み返したくなると思う。どうぞ期待していただきたい。

介護・福祉情報掲示板(表板)

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