鹿児島県社協老人福祉施設協議会さんにはいつもお世話になっており、同会の主催する研修会には3年連続で講師としてお招きを受けている。今年度も昨年10月にホテル京セラ(霧島市)で行われた研修で、2日間講師役を務めさせていただいた。

その時は、漫画家のくさか里樹さんと講師・シンポジストを一緒に務め、夜もオフ会で盛り上がったりして楽しい3日間を過ごさせていただいた。その模様については「青森から鹿児島への素敵な出逢い旅」で楽しい画像と共に紹介しているので、是非参照していただきたい。

ところで、その記事の画像にも映っている鹿児島ハッピー園の松村施設長さんは、全国老施協の21世紀委員でもある。その松村委員から、全国老施協が主催する「平成25年度九州ブロックカントリーミーティングIN鹿児島」(3/3(月)〜3/4(火)鹿児島市のサンロイヤルホテル)でシンポジストをしてもらえないかという依頼を受け、その日鹿児島にお邪魔することになっている。

当初予定では、シンポジスト役だけを務めて北海道に帰ることになっていたが、それではもったいないということなのか、90分の時間をとるので、講演を行ってほしいとの追加依頼があった。

そこで「何について話したらよいのですか」と聞いたところ、いただいたテーマが今日のこの記事のタイトル、「支援という名の支配」である。強烈なインパクトのあるテーマであるが、これを考えたのは、先ほどリンク先を貼り付けて紹介した記事画像にも映っている吉満事務局長である。

ただし、吉満事務局長からはテーマをいただいたものの、細かな内容については特段の指定はなく、このテーマから僕がイメージを膨らませて、当日お話をすることになっている。そこで「平成25年度九州ブロックカントリーミーティングIN鹿児島」まで、あと約1月と迫った現時点で、このテーマで話す内容を考えており、最終的に「支援という名の支配〜介護サービスの現状と課題」というサブテーマを挿入し、内容を絞っている最中である。

そうすると、どうしても避けられないのが、「科学的介護と竹内理論に対する疑問」 ・ 「ご入居者はモルモットではないという叫び」で指摘した、個別のアセスメントのない状態で、全利用者に一律、食事以外で1.500mlの水分を摂取させるという考え方を押し付けている、全国老施協主催の「介護力向上講習」への疑問と批判である。そのため以下の画像で紹介しているファイルを1枚作った。
支援という名の支配
全国老施協主催のタウンミーティングで、全国老施協の主催講習への問題提起を行うことはどうかとも思ったが、全国老施協の役職についている方からも、「警鐘を鳴らしていただく機会は会員に提供されるべきです。きちんと咀嚼をした上での理論の踏襲をと願っています。」という言葉をいただいたので、あくまで個別のアセスメントに基づく水分摂取量の調整が大事ですよという形で、一律の食事以外で1.500mlの水分摂取の問題点を指摘したいと思う。

竹内先生が、「水が細胞を活性化させ、身体と精神の両面を活性化させていく」、「水が覚醒水準をあげ、尿意や便意を知覚することにつながり、排尿や排便の抑制が正常に作用する。」、「身体活動も変わってきて、水分が足りなくなることで、舌や口の動きが悪くなりむせやすくなり、誤嚥が増える。」と主張すること自体は分からないではないが、それがどうして、食事を除いて「1日1.500ml飲ませて欲しい」という指導に繋がるのかが理解出来ない。

1.500mlという量の根拠もまったく薄弱である。科学的根拠に基づいて考えるなら、この数字は多すぎることは、貼り付けた記事でも指摘しているところである。そもそも「水あたり」とか「水毒」という言葉があるように、脱水と同様に水分の過剰摂取は恐ろしいというのは常識であり、内臓ダメージを防ぐために適切な水分摂取量の調整や、水分制限が必要になるということは科学的根拠のあることだ。

そして事実として言えば、「介護力向上講習」を受けた人や、竹内理論を実践している施設の方々から、先に紹介したブログ記事のコメントや、それとは別の場所の拍手コメントに続々と声が届けられている。その一部を以下に紹介したい。

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・竹内さんの検討会に出席しましたが、発表者が竹内さんが怖くてなにも言えず言いなりになっているのはおかしい。私は反論しましたが、竹内さんも頭が固かったなー。

・講習会では毎回課題を提出して、進捗状況を報告・発表しますが、リウマチによる関節の変形や強い拘縮があって便座に座れない状態の方でも、「とりあえず座らせてみればいい」と言われ、水分1500ml以上摂取や、必ず便器で排泄する事をあまり良く思わない家族がいらして、同意が得られていないケースもあると発表すると、「いちいち家族に同意なんて取らなくていい。うちはこういう方針だからやりますと入居時に伝えればいい」と怒られます。何より講習会での怒号、罵り方が尋常でなく、内容もさることながら、参加施設に言う事を聞かせるための方法も疑問です。

・私は札幌の某特養勤務ですが、施設長が竹内先生絶対で、嫌なら辞めていいと言われ、介護員が次々去っている悲しい現状です。

・実はその理論に洗脳?!され同法人内の特養施設で『1500cc死守!食事よりも水分!』、『オムツは外す。5分前にトイレに行ってもタラタラと出てしまう人でも、尿意、便意がない人でもパッドはつけない!』と施設ケアマネと介護主任がやらせています。結果!
心不全で、不整脈者、全身浮腫者続室で病院送りです。さすがに医務が「この人は水分制限するように」と真っ向対決となっているようです。水分は必要ですが、その方の身体、持病等のアセスメントをしっかりし、医療チームと検討してから実施すべきと思います。ご入居者はモルモットではないのです!と思います。

・うちの施設は科学的介護を推進しています。理論上水分補給量を増やす事はわかりますが、やはり水責め!またはゼリー地獄に陥っています。学者が推奨する事には机上の空論があり、水神様を讃え祀る宗教団体のような特養に入りたがるご利用者様は居ませんよ。実際に、理論上正しいにしても職員は、こんな水責めの施設には家族は勿論知り合い等にも紹介したくないし、絶対いれたくないと言っています。健常者である竹内先生は、嚥下障害がある人の気持ちをわかっていないと思います。まぁ学者は、自分で試さないでただ論文を書くだけだから仕方がないとは思いますけどね。毎日提供される水分がゼリー状で、1日1500cc食べさせられる気持ちを、竹内先生ご本人が1週間でも体験してみたらいいんですよ。

・転職し就職した当施設でも(おそらく10ヶ所以上ある法人内の全ての事業所でもやってるでしょう)1日1500cc水分摂取と恥ずかしげもなくユニットのリビングに掲示しています。当然一度にたくさん水分をとれない高齢者ですから起きている時間は休むことなくなんらかの水分を飲まされ続けています。しかも三食全てに汁が付きます。当然これだけの水分摂取をさせられるわけですから食事がとれなくなります。そしてマズいソフト食やミキサー食に変更になり、ますます食事がとれなくなり弱っていきます。まさに拷問、虐待です。数百人いる職員はこれが正しいと信じています。
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脱水を防ぐ取り組みや援助は必要不可欠だが、それは個別のアセスメントに基づくものでなければならず、食事摂取量に関係がなく一律1.500mlの水分補給を強制するような根拠のない介護は、支援ではなく、支配であることを全施設のトップは理解すべきである。

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