昨日の記事でお約束したように、看取り介護計画を紹介させていただく。取り上げるのは4人部屋で暮らしていた方が看取り介護の対象となったケースである。

本ケースは、医師よりご家族にムンテラを行った際、ご家族より最期まで緑風園での暮らしを継続させたいという希望が出され、自分達もできる限り最期の瞬間を看取りたいので、気兼ねなく対応できる個室に移りたいと希望され個室対応に切り替えた。

ご存じのように、看取りのために移動する個室が従来型個室である場合は、「感染症等により従来型個室への入所の必要があると医師が判断した者であって、当該居室への入所期間が30 日以内であるもの」に該当する場合には、多床室に係る介護報酬を適用することになる。

個室に移動する日の朝礼では、その方が新しい居室への移動することと、できるだけ訪室機会をつくって、声かけするようにアナウンスし、看取り介護計画の確認を行った。

その内容は以下の通りである。

(利用者及び家族の生活に対する意向)
ご本人の明確な意向を確認する事が難しいため、日頃の関わりを通して、『歌を聞く事が好きだった。居室に一人でいると不安になることがありできるだけひとりにしてほしくない。夜は暗いと不安になるので電気をつけて欲しい。時々眠れない時があります。』と推測しました。
ご家族より「ここで最期まで暮らしてほしい」、「最期の瞬間まで安楽に過ごせるように家族も見守りたいので個室で対応して欲しい」との意向を伺っています。

(総合的援助方針)
嚥下困難で誤嚥性肺炎を繰り返しており、全身機能低下し医師より絶飲食指示が出された。経口摂取が難しく、治療も困難な状態で、今後も経口摂取できる状態には回復しないと予見され、主治医の医学的見地からターミナルケアの状態にあると判断されました。医療機関での対応の必要性も低く、ご家族の意向のもと当園で看取り介護を行います。〇〇〇さんの尊厳を守り、身体的・精神的苦痛が出来る限り取り除けるように努めると共に、心地よく暮らすことが出来るよう清潔を保ちます。〇〇〇さんが少しでも安心して過ごすことが出来る雰囲気を作り、思いを受け止めるよう努めます。最期の瞬間まで寂しさを感じず充実した時間が過ごせるよう、心をこめて援助にあたります。

(解決すべき生活課題1)
・「不安なく暮らしたい。眠れないことがあります」と推測します。
・嚥下機能低下し全身状態悪化のため看取り介護に移行します。口からの食物摂取ができないために、唾液の分泌低下が懸念され、保湿と保清の支援が必要です。〇〇〇さんが安心して暮らせる支援が必要です。
(長期目標)
最期の瞬間まで安心して過ごすことができる
(短期目標)
・援助を受け、不安や寂しさを感じず過ごすことができる
・口腔内の清潔が保て、苦痛なく過ごす
(具体的な支援内容)
・訪室回数を多くもち、身体変化の早期発見に努めます(体温・血圧・呼吸状態など)
・手や肩をさすりながら、安心できるような声かけに努めます
・夜間は枕元の電気をつけます
・居室で、状態にあわせて好きな歌やDVDをかけます
・口腔内はこまめに清拭します。
・口唇・口腔内の保湿援助を行います。(保湿ジェルと、かんきつ系ジュースでの口腔清拭)
・加湿器を置き、終日作動させ乾燥を防ぎます

(解決すべき生活課題2)
「皆と一緒に過ごす事や歌や踊りが好きだった。娘たちが来てくれて嬉しい」と推測します。充実した時間が過ごせる支援に努めます。
(長期目標)
楽しいと感じる充実した時間が過ごせる
(短期目標)
・朝・晩の区別がつき、メリハリある時間が過ごせる
・不安な気持ちが和らぐ
(具体的な支援内容)
・『今は何時か』『何があるか』など時間や季節、天候などを分かりやすく伝えます
・個室使用します。○○○さんやご家族が過ごしやすいよう部屋の環境を整えます
・体調をみて、離床・活動参加機会を作ります
・活動場所まで誘導し、参加中はどんなことをしているか説明します
・フルリクライニング車椅子使用時、肘・背中にクッションを当てます。姿勢をこまめに調整します
・状態にあわせて、他利用者と一緒に過ごす時間を作ります。職員が他者との会話を取り持ちます

(解決すべき生活課題3)
「いつでも快適な状態で過ごしたい」(看取り介護に移行します。痛い思いや不快感のなく生活が送れる支援が必要です)
(長期目標)
最期の瞬間まで快適に生活できる
(短期目標)
・不快感が少なく過ごす
・皮膚の清潔を保ち、傷・変色を作らない
具体的な支援内容)
・オムツ交換援助、陰部洗浄を行います
・体の位置・痛みを確認しながら、体位変換と全身マッサージを行います
・電動エアーマットを敷きます
・皮膚の観察を、丁寧に行います
・全身に保湿剤使用
・脇下→タオル、両下肢→厚めのクッションを挟み拘縮予防します
・状態を見て、特浴入浴援助を行います
・体清拭を行います
・顔清拭をこまめに行います
・排便確認し、必要時座薬調整します
・右足尖足予防のためクッションで足先を良姿位、足首を90度の角度に保ちます

(解決すべき生活課題4)
「体を動かす時は、痛みが少ないようにしてほしい」と推測します。お身体の状態にあわせて無理なく楽に過ごせる支援が必要です。
(長期目標)
痛みが軽減でき怪我なく過ごせる
(短期目標)
・安全・快適な環境で過ごす
・援助を受け、負担の少ない生活が送れる
(具体的な支援内容)
・援助内容を分かりやすく説明し、対応にあたります
・点滴対応します
・必要時、酸素を使用します
・体温・気温・湿度・換気に配慮します(掛け物調整、湯たんぽ使用など)
・頭部の上げ下げの際は、体の痛みがないか声をかけながら対応します
・脱ぎ着しやすい衣類を着用していただく
・スライドボード使用し2名で移乗援助します
・ベッドは一番低くします。ベッド柵の位置に配慮します
・体調が安定するまで絶食対応します、状態をみて無理のない範囲で好みのものが摂取できないか、医師に相談、検討します

以上である。なお実際の計画書に記載されている頻度や担当者等は割愛する。

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