京都の医療機関で、ノロウイルスの集団感染が発生し、少なくとも入院患者36人と職員11人が感染し、うち80代男性2人を含む高齢の入院患者4人が死亡したというニュースが昨日飛び込んできた。

病院は「直接の死因は別の病気」と説明しているとのことであるが、集団感染が死因となる病気の悪化の引き金になったことも想像でき、本当に恐ろしいことだと思った。介護施設のトップとして、こういうニュースは人ごとと思えず、感染症の予防対策に一層努めなければならないと感じ、今朝も朝礼であらためて手洗いがなぜ必要かということ、どういう手洗いの方法が求められているかということを詳しく説明した。

特に手洗いについては浜松市の集団感染を例に挙げて説明した。

月曜の記事に書いたように、浜松市のノロウイルス集団感染は、菓子製造業者の従業員が保菌していたウイルスが、従業員の手〜手袋〜検品中の食パンと伝播されて、感染者を大量に出す結果に繋がっていったと思われる。

そしてウイルスを保菌していた従業者本人は、体調不良などを訴えていなかったことから、症状の出ない不顕性感染だった可能性があり、保菌しているという自覚がないことで、手洗いが不十分になって、手に付着したウイルスが洗い流れず、パンに付着させてしまったものと想像できる。

しかしよく考えると、ウイルスが巣くっている場所は、人の体の中・腸内である。ということは、ノロウイルスは人の腸内で増殖するので、ウイルスが体外に排出される状態とは、便とおう吐物の中に混じって排出されるのであって、当然のことながら尿からノロウイルスが排出されることはない。

ノロウイルスに感染していた従業員が、家からずっと手にウイルスを付着させたまま工場にやってきて、パンにウイルスを伝播させたとは考えにくく、工場内で手にウイルスを付着させてしまい、それが洗い流されずにパンに伝播した可能性の方が高いであろう。

では腸内ウイルスがどうして手に付着するのだろうか?そのルートは様々であろうが、今回の感染源となった菓子工場では、感染が確認された従業員も使っていた女子トイレのドアノブや、スリッパからウイルスが確認されており、ここにヒントがあるのではないだろうか?

工場内のどこかで、腸内ウイルスが手に付着したとすれば、そういう状態が生まれるのはトイレの中が一番可能性としては高いだろう。

トイレで便をして、そこに含まれていたウイルスが手に付着するという可能性は、どのような場合に考えられるだろうか?勿論、直接便を触った場合は、確実に手に付着するだろうが、便に直接手を触れずに後始末することも可能であり、この場合は後始末によって手にウイルスが付着する可能性は低くなる。

一番可能性として高いのは、便を水に流す際の飛沫である。飛沫と言っても、目に見え、肌でぬれたのが感じられる飛沫ではなく、目に見えず、肌で感じることができない細かい飛沫があるそうだ。それが手などの肌に付着することが多いそうである。だから排泄後の手洗いが重要になるのである。便のなかのウイルスが手に付着したとしても、適切な方法で充分手洗いを行えば、消毒しなくともノロウイルス手から流れ落ちるそうである。今回の感染ケースでは、こうした排便後の手洗いが十分でなかったことが原因と考えられる。

手洗いが十分でなかったということは、見た目に汚いという意味ではない。ウイルスが付着していなければ充分な手洗いであるとしても、ウイルスを洗い流す手洗い方法は、それ以上のものが求められるということだ。

排便後は、このように水洗トイレの水を流す際の飛沫のほか、便が便器に落ちる際の飛沫、後始末する際に何らかの形で飛沫、空気感染等、様々な状況が考えられるので、手洗いの方法を確実に実行するということが唯一の感染予防対策である。

また水を流す際の飛沫リスクを減らすのであれば、洋式便器など蓋のある便器の場合は、水を流す前に蓋を閉めるという方法も有効になるかもしれない。当施設では、そのことも実施するようにアナウンスしている。

このように便からの目に見えない飛沫が感染拡大の原因ではないかと思うのであるが、そうであれば、感染していた従業員が本当に不顕性感染だったかは、さらに疑わしくなる。お腹がゆるくて、就業時間に便が出る状態であったのではないだろうか?この症状を感染と疑わずに油断したのではないだろうか。月曜日にも書いたが、そのあたりの検証作業は、今後も求められるであろう。

どちらにしても、確実で丁寧な手洗いを日常的に行うように癖をつけるということが一番大事になるであろう。そのことを徹底できない限り、感染リスクは減ることはない。

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