指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準（平成十一年三月三十一日厚生省令第三十八号）において、（秘密保持） は次の条項で定めている。

第二十三条 　指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員その他の従業者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない。
２ 指定居宅介護支援事業者は、介護支援専門員その他の従業者であった者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことのないよう、必要な措置を講じなければならない。
３ 指定居宅介護支援事業者は、サービス担当者会議等において、利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならない。

この規定は居宅介護支援事業所の秘密保持義務を定めた規定であると同時に、この規定条項をよく読むとわかるように、個人情報を用いる方法を定めた規定でもある。

ところが勘違いしている介護支援専門員は、個人の秘密を明かさないことだけに神経を使い、ここで規定されているサービス利用のための適切な個人情報の用い方に気を使っていない人間がいる。そのために利用者に適切な社会資源をつなぐということに支障が出ることを理解できないケアマネが存在する。困ったことである。

例えば、当登別市の居宅介護支援事業所の介護支援専門員の幾人かは、この規定と個人情報保護法を盾にして、通所介護の利用希望者の住所を教えずに、サービス提供可否判断を求めてくるケースがある。

しかし送迎する家の所在地が正確に分からないと、送迎車両の手配等の細かな部分で判断できないこともある。居宅サービス事業所にも、業務上知り得た個人情報を守る秘密保持義務は課せられているのだから、適切な方法で個人情報を用いるのが筋ではないのか。

そう考えると当然のことながら、居宅サービス計画に新しいサービスを位置づける際には、利用者と結びつけるべき社会資源としての居宅サービス事業所には、その決定に関する問い合わせの時点で、居宅介護支援事業所のケアマネの義務として、利用者の住所等の必要な情報を事業者に知らせるという同意を利用者および家族から得た上で、その情報と共に利用調整をするのが本来のケアマネジメントのあるべき姿ではないのか。

そもそも第二十三条の３は、前述したように、｢指定居宅介護支援事業者は、サービス担当者会議等において、利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならない。 ｣としている。

↑ここでは｢サービス担当者会議等｣として、個人情報を用いる場合とは、サービス担当者会議に限らないことが示されているのである。当然｢等｣の中にはサービス計画を立案するうえでの調整段階における、サービス事業者への問い合わせが含まれるものと考えて良いものだ。

これについては解釈通知・老企２２号において

�� 同条第３項は、介護支援専門員及び居宅サービス計画に位置付けた各居宅サービスの担当者が課題分析情報等を通じて利用者の有する問題点や解決すべき課題等の個人情報を共有するためには、あらかじめ、文書により利用者及びその家族から同意を得る必要があることを規定したものであるが、この同意については、指定居宅介護支援事業者が、指定居宅介護支援開始時に、利用者及びその家族の代表から、連携するサービス担当者間で個人情報を用いることについて包括的に同意を得ることで足りるものである。

↑このように、あらかじめ包括的に同意を得て情報を用いても良いとしているのである。｢包括的｣とは、｢すべてをひっくるめているさま｣という意味である。そしてこのことは具体的なサービス事業者名を特定して、そこに個人情報を用いるという同意ではなくても良いということを意味している。

例えば居宅介護支援の契約時に、｢氏名、住所等の個人情報について、社会資源や居宅サービスを居宅サービス計画に位置づける際の可否判断のためなど、居宅介護支援業務に必要であると判断した場合、居宅サービス事業所等にその情報を伝えることを同意します。｣というような事前の包括的文書同意で良いわけである。これでサービス提供前の、通所サービス申込時点で、利用者の住所は、信用できるすべてのサービス事業者に伝えることができるわけである。

そうであるにもかかわらず、必要な情報を送るための、｢利用者の同意｣を得る努力もしないで、個人情報だから知らせられない、の一言で片付けるケアマネの性根はどうなっているのか？

しかもそういう介護支援専門員の中には、市の地域包括支援センターを受託し運営しているセンターに併設されている事業所の介護支援専門員も含まれている。それらの事業所の介護支援専門員は、主任ケアマネの資格を持った場合、地域包括支援センターに移動して、圏域内の介護支援専門員の指導にも携わる可能性のある職員ではないか。それがこうした低い認識で良いのだろうか？

個人情報保護は大事な視点ではあるが、通所サービスの利用可非決定に際して、個人情報保護を理由として、利用者の住所を明かさないということは、その言葉を大上段に振りかざすのみで、自分たちの職務を果たそうとせず、居宅サービス計画の扇のかな目であるという意味を、ケアマネが指導者であるかのように勘違いし、担当サービス事業者だけに過度の負担を強いるという姿にしか見えない。

個人情報の保護にしても、居宅サービス計画の立案にしても、それはマクロの視点から言えば、利用者の尊厳と暮らしを守るために保護されたり、計画されたりするものである。そうであれば情報を流さないことのみを目的とするのではなく、尊厳と暮らしを守るために、必要な社会資源と、利用者を繋ぐためには、情報の適切かつ有効な用い方という面にも配慮がされなければならない。

個人情報だから住所は教えられないと、通所介護の事業所選定時に、そうした情報を送らずに重要な決定を強いるケアマネに、こうした意識は存在するのだろうか。

それは単に責任逃れであり、アリバイ作りに過ぎない恥ずべき態度であると言っても過言ではないだろう。そこには社会福祉援助者としての専門性の欠片も感じられない。こういうケアマネがいるから、制度改正のたびにケアマネジメント批判が繰り返されるのではないだろうか。

対人援助サービスの専門家としての意識をもっと高めないと恥ずかしい姿にしかならないぞ。

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