今朝の新聞報道等で、各社が一斉に次のようなニュースを配信している。
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厚生労働省は12日、介護保険の見直しで、介護の必要度が低い「要支援1、2」の人向けのサービス(予防給付)を市町村事業に全面的に移すとした当初案を見直し、対象を訪問介護やデイサービスに絞り込む方針を固めた。訪問看護やリハビリテーションなどは全国一律で定めるサービスを維持する。14日に開催する社会保障審議会の介護保険部会に提示する。
(共同通信社ニュースより抜粋)
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まさに寝耳に水の大方針転換である。

この問題については、「見えてきた新しい地域支援事業の姿」や、「地域支援事業の新総合事業には必ず格差が生まれる」で問題提起してきたが、ここに移されるサービスは訪問介護と通所介護など福祉系サービスだけで、訪問看護や通所リハビリなど医療系サービスは現行給付のまま継続される方針が示されたわけである。

訪問看護や通所リハビリが、市町村間格差の懸念される視聴新事業に移管しないということに文句をつけるつもりは毛頭ない。

しかしそうであれば訪問介護や通所介護という福祉系サービスのみを市町村事業にすることが果たして国が言うところの、「市町村が地域の実情に応じ、住民主体の取組を含めた多様な主体による柔軟な取組により、効果的かつ効率的にサービスの提供をできる」という効果が見込めるのかという再検証作業が必要ではないのか?

なぜ医療系サービスだけが、全国一律の基準が必要で、福祉系サービスがそうでない方が良いのかというロジックがあまりにも不明瞭である。

振り返って考えてみれば、10/30に行われた第51回の介護保険部会では、委員から予防給付の市町村事業への移管について、多数の反対論が出されていた。特にそれは上限設定に対してシビアな反対論が示されていたが、そうした声を無視できない国が、福祉系サービスのみを人身御供にして、なんとか財源削減につながる予防給付の市町村事業への移管を実現させようとしていると言えるのではないだろうか。

もちろんその背景には、給付費の増加の一番の要因が、小規模通所介護事業者の予測を超える増加であるという国の考え方がある。それは「地域包括ケアシステムの構築における今後の検討のための論点」(地域包括ケア研究会)を読めば明らかで、次期改正での最大目標は、通所介護費の削減であるということなのかもしれない。

しかし例えば、第51回の介護保険部会修徳大学の結城委員より懸念が表明された以下の点
第6期中は、さほどの制度の問題はないが、第7期、第8期になってくると、一般財源化されている今の独自サービスと、果たして生活支援サービスやそういうサービスの明確な分類が出来なければ、各自治体の厳しい財政予算化の中、それを振り替えて削減する事実になるのではないか。
市町村がやるということは、非常に小さい自治体になればなるほど、自治体職員と事業者が近くなる。親戚が自治体職員であったり、親戚が事業者であったり。今、地域包括ケアシステムということで、自治体はいろんな事業者やいろんなインフォーマルサービスの人に協力を求めなければいけまんせんが、片や協力を求めながら片や指導、監査が本当に出来るのかどうか。そういうこともあって、非常に分権化していくことによって、不透明な財政運営が懸念される。

これについては、福祉系サービスのみが市町村事業に移管されても同じく懸念されることで、これに対する答えは示されていないわけである。

どちらにしてもこの案は、居宅介護支援費に特定事業所集中減算というルールが導入された際に、減算の対象となるサービスが、医療系サービスを除外し、福祉系サービスだけを対象とし、それがずっと改善されることなく継続されているように、医療系サービスだけを優遇し、福祉系サービスの切り捨てていく考え方と同様であると思えてならない。

本来このような福祉系サービスの切り捨てについては、行動する老施協として、全国老施協が声を挙げなければならないはずだ。しかし既に全国老施協は、「介護保険制度の見直しについて(意見)」という文書を老健局長に提出しているが、その中で、予防給付の市町村移管について移行期間を設け、財政支援などの国の協力体制を整備することなどを提言しているだけで、市町村事業への移管そのものには反対していないのだから、今更、訪問介護と通所介護も国の事業として残せとは言いづらいだろう。

政治力を失ったことと合わせて考えると、次期改正における全国老施協の力には、あまり期待が寄せられないといったところが現状と言えるのではないだろうか。

どちらにしても、具体的にどのサービスが予防給付として残され、どのサービスが市町村事業に移管されるのか、介護予防短期入所生活介護と介護予防短期入所療養介護では違いが出てくるのかなど、今後の情報を注目していく必要があるだろう。

今日のところは、あまりに突然の方針変更で頭が混乱して、この問題のもつ意味というところまでは深く考え及ばないので、まとまりのない文章になっているかもしれない。

もう少しこの問題について深く考えた後に、この問題に筆を及ぼす機会は別にあるだろうことを書き添えておく。
介護・福祉情報掲示板(表板)

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