先週の土曜日に行われた大阪市老人福祉施設連盟主催研修(於・大阪市立社会福祉センター)で吠えてきたことを少し書かせてもらう。

8/28に行われた社会保障審議会・介護保険部会は、社会保障改革国民会議の報告書の内容を踏まえ、今後の介護保険部会の予定についてという資料を示している。それが次の表である。

介護保険部会の予定
このように介護保険部会は11/27までに審議取りまとめすることが既に決まっている。この中で、

・地域支援事業の見直しと併せた地域の実情に応じた要支援者への支援の見直し
(要支援者のサービスを市町村事業に移行)

・一定以上の所得を有する者の利用者負担の見直し
(注:高所得者ではない:夫婦世帯で「年収三百数十万円以上」を軸に2割負担とする)

・いわゆる補足給付の支給の要件に資産を勘案する等の見直し
(遺族年金、障害年金等の非課税年金も所得とみなし、資産も所得勘案する)

.特別養護老人ホームに係る施設介護サービス費の支給対象の見直し
(入所要件を要介護3以上とする)

↑これらがすべて審議内容に含まれ、実質1回、多くて2回審議でこの方針がまとめられ、この通りの内容が通常国会に提出される法案に盛り込まれていくのである。この部分で、もう我々ができることはないというのが現状だ。

当然のことながら、これらの方針は消費税が来年4月〜8%になることを前提に立てられた方針だから、予定通りそれが実施されないということであれば、法案に盛り込む取りまとめができないということになる。しかし諸費税アップも予定通り行われるだろう。現時点で首相の腹は既に決まっていると思う。現在行われている有識者等の意見聴衆は、単にアリバイ作りのセレモニーに過ぎない。

ところでこのブログ記事では何回も指摘しているが、要支援者給付を市町村事業に移管する方針について、田村厚労大臣がNHKの政治討論番組の中で、「財源は今まで通り介護保険の財源から出す。市町村の負担は増やさない。」と発言したことを受けて、要支援者は今までと同じようなサービスを、市町村事業として使えると考えている人がいるとしたら、それはまったくの間違いである。

要支援者のサービスを、市町村事業にすることについて、国民会議報告書では明確に「要支援者に対する介護予防給付について、市町村が地域の実情に応じ、住民主体の取組等を積極的に活用しながら柔軟かつ効率的にサービスを提供できるよう、受け皿を確保しながら新たな地域包括推進事業(仮称)に段階的に移行させていくべきである。」と書かれているのである。

つまりこれは市町村が行う地域支援事業が名称を変えただけの事業であるから、財源は確かに介護保険から出されているが、介護予防サービスの給付とはまったく別物の給付である。

その財源は介護保険財政から出るものの、介護給付見込額の3%(介護予防・日常生活支援総合事業として厚労相の認定を受ければ4%)以内という上限がある。しかも8/8に田村厚労相自身が会見で、「地域支援事業は)介護保険の制度ではない」と述べているように、財源は介護保険から出したとしても、とてもじゃないがその事業は、現行のサービスを受けられるというような給付レベルではないのである。そしてこの事業が、新しく地域包括推進事業として再編されたとしても、この枠以上の財源を給付するということはあり得ないので、関係者はこのことを勘違いしないでいただきたい。

地域包括支援センターの職員に中には、いまだに市町村事業に移管されても、要支援者のサービスは何とかなると甘く考えている人が存在する。しかし田村厚労相は、この限られた財源で「市町村で知恵を絞って工夫して、ボランティアなどを活用しながら、質を落とさないでサービス提供しなさい」と丸投げしているだけなのである。このことを考えれば、地域包括支援センターの職員は、真剣に2015年以降の市町村の責任と地域包括推進事業を考えれば考えるほど、今から眠れないというのが本当のところではないだろうか。

このような重大な改正が、充分に国民に情報が伝えられないまま、何ら議論されることもなく、粛々と既定路線として決められているのが今回の改正議論の特徴である。

衆参のねじれもなく、絶対的な安定政権で、しかも今後3年以上に渡って国政選挙がないという状況で繰り広げられる財源論によって、介護保険制度はさらに厳しい風の中で、大事なものをどんどん削られていくというのが、今行われている改正へ向けた作業である。

そのことに対して我々のできることは限られてきてはいるが、第3者的な立場で何もしないということであってはならない。それは2015年だけではなく、その次の改正でも我々の声がさらに無視されることにつながるからだ。

大阪市老連のように、このことに危機感を抱いて、警鐘を鳴らしてほしいと僕を北海道から呼んで、関係者に情報を伝えようと頑張っている人がいる反面、改正議論がどう進行しているかも正確に把握せず、そのことに関心さえ寄せない関係者が多いという現状は、非常に嘆かわしいと言わざるを得ないであろう。
介護・福祉情報掲示板(表板)

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