先の参議院で圧勝した自民党のマニュフェストには、「国民会議の議論を踏まえ、社会保障制度について必要な見直しを行う」という一項が記されている。

国民会議とは、政府の社会保障制度改革国民会議(会長・清家篤慶応義塾長)のことであることは言うまでもない。

その国民会議が7月29日に開催され、8月6日にも取りまとめる予定の報告書案について議論し、総論部分を大筋で了承した。今後はこれを受けた政府が、改革の手順などを定めた法案の骨子を8月21日までに閣議決定した後、今秋の臨時国会に法案を提出する見通しとなっている。

つまりこの報告書が今後の社会保障制度、再来年4月からの介護保険制度改正に大きな影響を与えるということになってくる。

そしてその内容は、国民負担増加と給付削減という厳しいものである。

報告書では、要介護度が低い「要支援」の人を対象としたサービスを保険給付から外し、市町村事業に移行するとしており、予てより国の方針として報道されていた、要支援者の給付除外は、この報告書により確実に実施される方向となったといえよう。

社会全体の少子高齢化を考えると、痛みを伴う国民負担増はやむを得ないが、要支援1と要支援2の状態像の違いなどを全く議論することなく、要支援者は「予防給付だから」という括りだけで、一律に給付対象から除外することは「必要不可欠な削減」なのだろうか。

総論部分では、負担の在り方をこれまでの「年齢別」から「能力別」に切り替え、高齢者にも応分の負担を求めていくとしており、これにより介護保険制度利用時の利用者1割負担も見直されていくが、このことについて「高所得者の負担が2割とされる」という報道が目立っている。しかし負担率が上がるのは「一定所得者以上」であり、必ずしもお金持ちだけが負担増になるわけではない。この「一定所得者以上」の括りは、2012年の制度改正議論の中では、「年収320万、年金収入200万円以上または医療保険の現役並み所得者」という基準であった。今回は年金等との所得認定の基準と整合性をとった上で、これに近い括りで一定所得が認定される可能性が高い。

同時に報告書では、負担能力について、資産も勘案すると書かれており、土地・家屋等の資産も加味されるとすれば、この所得では生活費に多大な影響を与える世帯や個人がいることが想像され、経済事情を理由に、サービスを抑制せざるを得ない高齢者が増えることは容易に予測できる。

痛みを伴う負担増について個人的な意見を述べるとすれば、第2号保険料の算定方式を、給与水準に応じて決める「総報酬割」に変更する(現行は総人数割)ことは必要ではないかと思う。報告書では 高齢者医療の部分で、保険料の総報酬割りの拡大が必要とされているが、介護保険にもこの考え方が反映されていくのかは現時点で不透明である。

また、この報告書には医療法人改革と並んで、社会福祉法人改革が明記されており、非課税法人であることについて何らかのかたちで切り込まれる可能性もあると予測される。

国民会議の最終報告書は、税と社会保障の一体改革という視点で行われており、消費税率について、予定通り来年4月から8%、再来年4月に10%に引き上げることを見越してまとめられているものである。これと呼応するように、昨日、日銀の黒田総裁は、消費税率のアップは、アベノミクスの足かせにはならないと発言しており、税率の引き上げを予定通り実施することの外堀は、どんどん埋められており、いつその方針が明確化されるかという問題だけになっていると考える。

そのような中で、負担増と給付抑制がセットで、それもかなり大改革というかたちで行われる状況である。制度の光を浴びることのできない高齢者に、市町村がどう対応していくのかということが、今後は非常に大きな問題になってくるであろう。

間違いなく市町村格差ということが問題になり、その格差を原因にした転出や転入ということもあり得るかもしれない。

どちらにしても痛みを伴うことはやむを得ないが、大出血に対応しきれず、屍が累々と横たわる地域社会にしてはならないのだから、その中で何ができるかという知恵が求められていくであろう。
介護・福祉情報掲示板(表板)

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