参議院選挙が政権与党の圧勝で終わり、衆参ねじれ現象解消で絶対安定政権ができたことは、外交上のメリットとしては大きなものがあるだろう。しかし日本経済に影響するのは政策の中身がそのものであるから、その影響がどう景気等に反映されるのかは今後の情勢を見なければわからない。

当面の問題として、経済動向を睨んで来年4月から予定通り消費税を上げるか、それを見送るのかという政治判断が必要になってくるが、絶対安定政権を得た政府が、今後3年間は国政選挙がないと考えられる今この時期に、税の引き上げをしないという判断はありえないだろう。

消費税のアップが、国民の消費意欲を削いで、アベノミクスの足かせになるから、首相は税の引き上げに慎重になるのではと見る向きがあるとしたら、それは大間違いだと言いたい。

なぜなら来年度予算に関連する各省庁の概算要求は来月20日から始まるが、それは既に消費税がアップすることを見越した要求内容で組み立て準備を進めているではないか。秋になって消費税を上げないという政治判断がされたら、予算編成が止まってしまいパニックになるぞ。首相ともあろう人が、そんなことがわからないはずはないから、心の中に少しでも消費税アップを見送ろうとする気持ちがあれば、概算要求に向けて各省庁で進められている要望書の作成に対し、何らかの指示があるはずである。それがない現状は、参議院選挙の結果、ねじれが解消された後のスケジュールの中には、どのタイミングで、どのようなかたちで消費税を予定通り上げると表明するかという絵が描かれているはずである。

そもそも消費税は、8%から10%へと段階的に引き上げるのだから、10%になる前の時期には、10%になることを見越した先行消費意欲が消滅しないと想像できる。このことからも来年4月の消費税率8%を見送るという選択肢はないと言い切って良いだろう。

そんな中で一つはっきりしているのは、社会保障政策においては、プラーマリーバランス0政策の中で、高齢者の数が増え、年金給付とサービス給付が増えていくのだから、その中で議論される次期介護保険制度改正と介護報酬改定は、ますます厳しいものにならざるを得ないということだ。

要支援者の給付除外は否応なく進められていくし、利用者1割負担にしても、介護サービスの全利用者ということではなくとも、施設サービスのみになるか、あるいは一定所得者以上という括りになるかは別として、2割負担という方向に向かっていくことは間違いのないところである。

その中で、我々に何ができるかを早急に考えていく必要があるだろう。例えばインターネットのソーシャルネットワークサービスは、国を動かす大きな力にもなり得るのだから、自分と考えを同じくする人が、その方向に向けてアクションを起こしているならば、その活動をツイッターやフェイスブックなどを通じて、自分の周囲の人に情報拡散していくということだってソーシャルアクションにつながっていくかもしれない。

マザーテレサが残した名言の中に、「世界中の人が自分の家の玄関を掃除すれば、世界はもっと綺麗になるでしょう」というものがあるが、人間である以上、何かを変えたければ自分自身が出来ることで良いから、自ら活動しなければならないのである。自分ひとりでは何も変わらないと諦めて、何もしないことが一番ダメなことである。

何より求められるのは、今この瞬間も既に制度改正・報酬改定論議の渦中であるという理解であり、それはクライマックスに近づいており、物申す時間も限られているということを自覚することである。

国のスケジュールでは、今年中に一部の法案を作成して、来年1月の通常国会にそれを提出、可決するということになっているわけである。もちろん介護保険制度改正法案の骨格となるものは、2014年度の成立を目指すことになろうが、その前に先行して決まってしまうものもあるかもしれないという理解が必要だ。

そうであるがゆえに関係者すべてが、そのことに関心を持って、改正議論を国任せにせず、草の根からの発言が大きな声になっていくように、様々な場所と、様々な方法で声を挙げていくということが求められるだろう。そのためには、今なにが問題となっているかという現状認識をした上で、議論に参加していくという姿勢が求められる。

介護保険制度改正のたびに問題になることは、この制度の「持続可能性」である。

制度が続くためには、財源が必要であるが、サービスの利用量が増え続けることによって、介護給付費が膨れ上がり、この必要財源が膨れ上がるのは、子供でもわかる理屈である。

ところで介護給付費の財源構造は、公費50%(国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%)と保険料が50%(1号被保険者20%・2号被保険者30%)となっている。公費の中の国費25%の中には、調整交付金分(各市町村間には財政力に差があるために、これを調整するために国が負担している費用)としての5%が含まれている。

つまり介護保険制度における財源論とは、公費財源をどこから確保するかということだけではなく、公費以外に50%をまかなう保険料の額が、いくらまでなら利用者に負担してもらえるかという視点が必要になるということである。

2012年4月からの介護保険制度改正では、この1号保険料の額が、全国平均で5.000円を超えるのではないかということが問題視され、その額を超えないように、2012年度に限定した形で、都道府県が財政安定化基金の一部を取り崩し、保険料上昇の緩和に充てることができる特例規定が設けられた。

この取り崩しと、市町村の介護給付費準備基金の取り崩しで、保険料軽減効果が月額244円あったとされている。

しかしそれでも第5期(2012年4月〜2015年3月)の1号被保険者の平均保険料月額は、第4期4.260円から、全国平均で月額4.927円と、19.5%の大幅アップとなっている。

そのため2015年度以降の介護保険料は、全国平均5.000円を超えることは確実である。このままいけば2025年にはその額が10.000円を超えると言われている。

消費税が10%になるときには、上げ幅の5%のうち、4%にあたる10.8兆円が、社会保障の安定化財源として使われる予定になっているが、それで財源の全てをまかなえるという意味ではない。

だから次期改正論議も、財源が増えない中で給付も増やせないから、自然増に対応して、切り捨てて良い給付をどこに求めるかという議論が中心になってくるわけである。

そうした切り捨ての理屈に対抗するのであれば、それを切り捨てることの及ぼす社会への負の影響という理論武装が求められるし、将来的に持続可能な制度に出来るように財源をどうするかということを、我々も考えていかねばならないということだ。

このことに対する自分なりの考え方は、また別の機会に示したいと思っている。

介護・福祉情報掲示板(表板)

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