僕は今、岩見沢市に来ている。
現在、岩見沢市民会館で行われている、「空知管内老施協相談員部会研修」で、午後1時30分から、「masaが語る相談員雑感〜相談員に求められる役割〜」というテーマの講演を行うためである。そのため昼前に施設を出て、今会場入りする前にお昼ご飯を食べるための休憩の最中に、このブログ記事を更新している。
慌ただしい中で、簡単に思いついたことだけを書こうと思うので、まとまりのない雑文になるかもしれないことをお断っておく。
要支援者を介護保険の給付対象から除外して、介護予防サービスを市町村事業とするという方針が明らかにされ、その方向で準備が勧めされている状況に対して、これは昨年の総選挙で、自公が圧勝し、政権交代が行われた影響であり、そういう政権を選んだ有権者にも責任があると主張する関係者がいる。
バカも休み休み言え。
昨年の総選挙で、社会保障費の抑制が焦点になったとでもいうのだろうか。そんなことはない。そもそも税と社会保障の一体改革の内容自体が政策議論となっていなかったではないか。そうであるのも関わらず、過去の自公政権の介護保険制度の改正における、特定の対応だけを取り上げて、この政権が社会保障の切り捨て政権だから、要支援外しという給付抑制は、その政権を選択した当然の結果であるかのような指摘は、あまりに短絡的で根拠のない指摘だ。
確かに安倍政権は、経済政策を優先して、社会保障政策には冷たいように思えるし、実際にプライマリーバランス0の政策を閣議決定して、医療や介護も聖域化しないとしているのだから、社会保障に対して厳しい姿勢で臨んでいることは事実である。
しかし要支援外しの方向性が、自公政権が政権を握ったから推し進めされたという考え方は違うと思う。そこまで政治主導で動いていないからだ。
以前から指摘しているように、厚生労働省老健局内部で、制度改正の一番のテーマは、保険料負担増をどこまで認めることができるかという問題であった。2011年改正ではその攻防の額が5.000円であった。その問題は、市町村の介護給付費準備基金の取り崩しで、なんとか全国平均の保険料額を5.000円以下に押さえ込んだが、要介護高齢者が増え続ける状況で、この額が2015年改正時に超えてしまうのは明らかだ。そして国の予測では、2025年にはその額が10.000円を超えるとし、そうなってしまえばこの制度は持続できないということで、要支援者の給付からの除外というのは、2011年改正の直後から、厚生労働省・老健局内で既に議論が始まっていた問題であり、政権が交代したから始まった議論ではないのである。
そもそも民主党政権の、社会保障についての功罪はどう考えるのだ?厳しい財政事情の中で給付抑制策が前面に出されて、制度改正議論が進んできたのは、以前の自公政権と、昨年までの民主党政権とで変わりがあったというのか?そんなことはない。同じように給付抑制の制度改正議論に終始していたではないか。
しかも事実として言えば、前回の自公政権下での2009年の介護報酬改定では、3%のプラス改定であり、なおかつ麻生政権では、経済政策としてではあるが、介護給付費に上乗せするかたちで処遇改善交付金が支給された。実質介護事業者の手にする報酬は、それ以前より5%以上アップしたのである。しかし民主党政権下の2011年改定では、その処遇改善交付金を廃止し、その分2%分を内包化しての介護報酬改定率+1.2%は実質マイナス改定であった。
こうした結果から論評すれば、野田前総理は財務大臣経験者でもあり、先の制度改正と報酬改定は、財政理論で終始した観が拭えない。
その政権が持続すれば、要支援外しの方向性はなくなったとでも言うのか?そんなことはない。同じことである。
こんなことに有権者責任が指摘されてはたまったものではない。そもそもあの総選挙で、政権を交代させたという国民の意思は、当時の政権に対するあらゆる失望感が根っこにあるもので、大震災に対する対応の緩さや、マニュフェストを守らないという政治への不信等々が重なったものだろう。介護保険制度だけをどうにかしようと思って投票行動をとる人間が何人いるのかという問題である。
そんな政権党に投票しなかったから悪いなどという言い草は、卑怯極まりない。時事放談みたいなことを、たいして政治を知らない人間が第3者的に語っている場合じゃないって。
だからといって現政権や、今の状況をすべて受け入れて良いというわけではない。我々には必要なサービスを受けられない人ができないようなアクションを起こす責務はあるし、その視点の一つとして、衆参絶対過半数の強力な政権が出来ることが、そのことにどのような影響を与えるかを考えながら、今後の様々な行動を考えていかねばならないだろう。
衆議院が政策のアクセル機能だとしたら、参議院はそのブレーキ機能を担うものだから、ブレーキが効かない暴走ということになっても困るわけである。特に安倍首相の道内での演説を聞くと、その内容の9割はアベノミクスを中心とした経済政策の話で、残りの1割は教育改革に関するものである。年金問題を含めた社会保障政策の話は全くない。このことを考えると、衆参のねじれがない絶対安定政権というものは、次期介護保険制度改正にとっては北風になるかもしれない。
少なくとも介護関係者にとって、現在の政権が選挙後に絶対的な安定政権になることによるメリットはあまり考えられない。
そうしたことを考えながら世の動きを見ることは必要だろうが、官僚機構という強靭なものの存在を抜きに、制度の方向性を政治の問題だけで考えるのは間違っていると思うし、ましてや現在の給付制限の動きを、前回選挙の結果責任などと烙印付けすることには、大いに異を唱えるのである。
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