僕の小さな失敗を告白する。すぐに誤解が解けたことで、笑い話になっているが、双方が行き違いに気がつかなかったら、笑って済ませない大問題になっていたかもしれない。
当施設では看取り介護を行う場合、そのことを密室化しないことが大事だと考えている。そのことは「看取り介護を密室化させてはいけない」でも書いているが、施設で暮らしている利用者の方々も、看取り介護の対象者の、親しい友人・知人として、その支援場面に積極的に参加することがあって良いと思う。だから決して看取り介護を行っていることを、利用者に秘密にすることが良いことだとは思わない。
しかし紹介記事でも書いているように、「この施設で看取ってほしい」と希望しているからといって、そのことが「まさに今、その看取りの時期である」と言うことを告げて欲しいということとはイコールではないのだから、死の時期の告知まで望んでいないと思われる人に対しては、看取り介護対象者本人には、「今から看取り介護を行います」というような告知をすることはないし、看取り介護計画書の同意も、本人ではなく家族にいただくことになる。
そうであるがゆえに、他の利用者に情報を伝え、協力してもらうとしても、本人に看取り介護を行うということを告知していない場合には、そのことに配慮ができ、一緒に秘密を守ることができる人であるということが絶対条件になる。そのため、この施設で暮らしている人全員に、ある特定の利用者が看取りの時期になったということを告げているわけではない。そのことは職員も十分理解していると思う。
もちろん職員は全員、看取り介護対象者がいる時期には、そのことを知っておかねばならない。直接介護職員以外も、看取り介護対象者には、そうした時期であるという細やかな配慮や声掛けが求められるかもしれないからである。
ところが、この伝達がうまくいっていないのではないかと思える状況にぶつかった。相談援助職員や看護・介護職員や栄養士が、「誰が、いつから、どのような状況で看取り介護となっているのか」ということを知らないことはないが、事務職員や営繕担当職員、清掃・選択担当職員等にその情報がリアルタイムに適切に伝わっていないのではないかと思える状況がみられたのである。
そのためある朝、主任ケアワーカーに、「利用者が看取り介護となった場合、その場で各セクションに連絡して終わりではなく、翌日の朝礼と引き継ぎの際に、そのことをあらためてアナウンスして、全員にそのことを伝えるように念押ししてください」と言った。
僕は確かにそう言ったつもりであった。しかし勤務時間が始まる前の朝の慌ただしい時間でも伝達であったためか、主任が怪訝な表情をしていることに気がつかなかったし、そのことに「・・・・して良いのですか?」と質問されたことにも、上の空で「はい」と答えてしまったようだ。(実は僕には、その記憶もないのである)
ところで先日、ある利用者が看取り介護対象となり、家族に同意をいただいて実施という運びになったのであるが、翌日の朝の引継ぎで、そのことがアナウンスされずにいた。しかしその場で、主任にアナウンスを忘れていると注意することもないだろうと考え、あとからあらためて注意した上で、アナウンスはその後に行おうかと思い、朝礼引継ぎ後に主任を呼ぶ止め話をしたところ、主任が慌てて、朝の放送担当者に、「放送中止」と呼び止めることがあった。(当施設では、毎朝その日の予定などを館内放送でアナウンスしている)
つまり、「利用者が看取り介護対象になったことを、職員全員にアナウンスする。」という僕の指示が、うまく伝わらずに、館内放送で全利用者にアナウンスする、という誤解が生じていたのである。
そしてそのことは前述したように、我施設の理念や方針と違うので、「本当に放送してもいいのですか」と僕に確認したところ、「良い」と答えたというのである。
後でわかったことだが、この際の誤解は、僕は「アナウンス」という言葉を「案内などを告げること」という意味で使ったのであるが、主任がアナウンスの意味を、「放送する」と勘違いし、朝の放送で利用者を含めた全員に情報と伝えるという意味にとられ、そのことが「おかしい」と感じたので、僕に念押しした際に、「それで良い」という言葉が帰ってきたため、その方が良い理由があるのだろうと考えたものである。
時間が十分あるときに、丁寧に言葉を伝えればその様な誤解は生じなかったであろうが、朝の忙しい時間に、十分時間が取れない中で、大事な連絡を、十分コミュニケーションをとって伝えなかった失敗である。
大事に至らなかったが、想定外の失敗が起こったことを反省して、今後、このようなことがないように、大事なことは、お互い納得するまで確認しあわなければならないと思っている。
それにしても恥ずかしいことだった。自戒の意味を込めて、ブログ記事にしたためておこうと思う。
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