おったまげた報告書が日本総合研究所から出されている。

6/20に出された「平成24年度介護支援専門員研修改善事業報告書-事業実施結果及び今後の取り組みについて」である。

中身については、各自で読んでいただきたいと思うが、特に目を疑ったのは、参考資料2として示されている、「課題整理表(暫定案)」である。

その内容を例えるならば、大学事務局が目をつけた大学生に、「あんたの知的レベルと生活態度は、まだ大学生レベルに達していないから、これをチェックしなさい」と言って、高校の受験勉強のための手引きと、生徒手帳に書かれたあるべき生活態度の指導書を渡すような内容になっている。

ケアマネも随分馬鹿にされたものだ。これを見て便利な書式ができたと思っているケアマネがいるとしたら、自分のスキルを疑ってかかったほうが良いだろう。

報告書ではこの課題整理表の目的を、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)を抽出した過程を可視化するため」とし、モニタリングにおける適正な評価を推進するツールと位置づけ、活用方法については、「介護支援専門員の養成研修での活用」、「サービス担当者会議や地域ケア会議での活用」などが挙げられている。

可視化した先に、利用者の暮らしが良くなるというエビデンスがあるのか?可視化された変なニーズは正当化されてしまわないのか?そもそもそれって利用者のためじゃなくて、新しい地域ケア会議で、介護の知識のない行政職員が、ケアプランを評価しやすいようにアリバイ作りをしたっていう意味でしかないのではないか?

よく考えて欲しいことがある。それはケアマネジメントの一連の過程がどのようになっているかということである。

報告書の中で課題整理表は「モニタリングにおける適正な評価を推進するツール」と書かれているが、このこと自体が問題ではないのか?

なるほどモニタリング表とは、サービス計画2表に書かれたサービスの長・短期目標についてのみ評価して、そのサービスを中止したり、終了したり、継続したり、一部変更するという内容になっている。(参照:当事業所のモニタリング記載例、居宅版 ・ 施設版)つまりサービス内容として計画に載せていない項目の評価は、ここでは行われないという傾向があるために、定形化した基本項目チェックをあわせて行うという意味の課題整理表であるということだろう。

しかしこれっておかしくないか?

だってモニタリングとは、ケアマネジメントの過程の一部にしか過ぎないぞ、そこで評価は終わりではない。モニタリングの結果を踏まえて、サービス計画を見直す段階で、必然的に行われるものを忘れていないか?

ここでは再アセスメントが必ず行われるわけである。すると今回示された課題整理表の項目を網羅しないようなアセスメントツールなんてあるのか?

例えばインターライ方式で見ると、IADLの中の、「整理・物品の管理」と「ゴミ出し」という個別項目はアセスメント項目として存在していないが、その他の項目は、文言は違っていても、内容としては全て網羅しているぞ。その時に具体的項目として存在していない「整理・物品の管理」と「ゴミ出し」がないことで、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)を抽出した過程」が見えなくなってしまうとでも言うのか?

そんなことは有あり得ない。サービス担当者会議の活用にしたって、今までアセスメント結果を踏まえた話し合いがされているはずなのに、それに加えて9割以上アセスメント項目に含まれ、重複する課題整理表を使って話し合ったって、何が変わるというのだ?

むしろそれを説明する時間が増えるだけで、手間と時間が増えて、結果は同じということにしかならないのではないのか?

ほとんど同じ内容が網羅されているアセスメント表を使って抽出できなかったニーズが、アセスメント表の一部を簡素化して、定形化した課題整理表を使うことによって抽出できるという理屈がどうして成り立つのだ?

こうしたことを考えると、全く無駄で意味のない課題整理表だという結論にしかならない。これによって変わるのは、ケアマネの仕事量が増えるだけだということだろう。

そういう意味でこの報告書と課題整理表そのものが、知的レベルの低い資料だということができる。この資料を作成したシンクタンクの知的レベルも疑われる。

おそらくこの実証事業の途中で、担当者はこの整理表の存在意義に疑念を感じたのではないかと思う。感じないとしたらよほどの素人だからだ。しかし国の補助金によって成り立っている研究事業で、結果を出す必要があるから、こうしたくだらない知的レベルの疑われる整理表を作らざるを得なかったのであろう。国費の無駄遣い以外のなにものでもない。

それにしても、こうした報告書と資料を何の疑問もなく世間に公開する検討委員会の見識はどうなっているんだ。机上の空論という言葉があるが、その委員会の座長をはじめとしたメンバー全員が、その看板を背負って歩かねばならないほどの、ひどい報告書と言えるのではないだろうか?

介護・福祉情報掲示板(表板)

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