介護保険サービス事業において、運営に関わる管理者だけではなく、実務に携わる人々の中で、異常に実地指導を恐れている人がいる。実地指導で指摘事項があれば、重大な責任問題になるのではないかと考えている人がいる。

しかしそれは違うと言いたい。

もちろん不正請求や不適切運営を行っているような場合は、それが実地指導で発覚し、実地指導から監査に切り替わることを恐れるのは当然であるが、そうではない事業者の管理者や実務担当者までが、実地指導を恐れるのはどうかしていると思う。

実地指導はあくまで「制度管理の適正化とよりよいケアの実現」のために行われるもので、法令基準を満たす適切な運営が行われているかを、行政職員が定期的に確認し、必要な指導を行うものである。はじめから不正があるという前提で、それを見つけるために行うものではないし、不正とは言えない間違いについては、改善指導を行うことが目的としてあるのだから、指導事項が何もないという結果を求める必要はないのだ。ある意味、指摘事項や口頭指導はあって当然である。行政担当者もいつも何もないでは、実地指導に足を運んでいる意味がないということになってしまうので、重箱の隅を楊枝でほじくりたくなる気持ちも分かってやってほしい。

そもそも些細な記録ミスや、さして重大ではない書類の不備は、指摘され指導を受けた後に、正しく整備し、誤った運用方法になっていた部分は、直せば良いだけの話である。

この時に、報酬返還に繋がるような重大なミスがあっては困るから、「実地指導対策講座の功罪」でも指摘したように、その対策講座をあらかじめ受講して、請求ミスを起こさない方法を伝授してもらいたいというニーズが高いのだろう。

しかし対策講座を受けなければ、報酬返還につながる重大なミスを犯すかもしれないという考えも被害妄想と言って良い。普通に運営基準を読んで、そのルールを真摯に守ろうとする気持ちがあれば、報酬返還に繋がるような基準違反を知らぬ間に犯してしまうことにはならない。

居宅介護支援事業所で、管理者兼任で介護支援専門員の業務を行っている人は、特にこの運営基準違反を気にして、実地指導対策として研修を受けなければと考えている人が多いように思えるが、居宅介護支援費の算定と減算ルールは、さほど複雑なものではない。

平成24年からの介護報酬告示では、減算については一部変更が有り、従前は一月目が所定単位数に70/100を乗じた単位数を算定することがでいたものが、改正後は所定単位数に50/100を乗じた単位数に変更され、運営基準減算が2ヶ月以上継続している場合には、従前は所定単位数に50/100を乗じた単位数が算定できたものが、所定単位数は算定しないに変更されている。しかし減算対象となるものに変化はない。老企36号でその内容は示されているが、それをまとめると
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(1)居宅サービス計画の新規作成及びその変更に当たっては、次の場合に減算されるものであること。
当該事業所の介護支援専門員が、利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接していない場合には、当該居宅サービス計画に係る月(以下「当該月」という。)から当該状態が解消されるに至った月の前月まで減算する。
当該事業所の介護支援専門員が、サービス担当者会議の開催等行っていない場合(やむを得ない事情がある場合を除く。以下同じ。)には、当該月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで減算する。
当該事業所の介護支援専門員が、居宅サービス計画の原案の内容について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得た上で、居宅サービス計画を利用者及び担当者に交付していない場合には、当該月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで減算される。

(2)次に掲げる場合においては、当該事業所の介護支援専門員が、サービス担当者会議等行っていないときには、当該月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで減算する。
居宅サービス計画を新規に作成した場合
要介護認定を受けている利用者が要介護更新認定を受けた場合
要介護認定を受けている利用者が要介護状態区分の変更の認定を受けた場合

(3)居宅サービス計画作成後、居宅サービス計画の実施状況の把握(以下「モニタリング」という。)に当たっては、次の場合に減算されるものであること。
当該事業所の介護支援専門員が1月に利用者の居宅を訪問し、利用者に面接していない場合には、特段の事情のない限り、その月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで減算する。
当該事業所の介護支援専門員がモニタリングの結果を記録していない状態が1月以上継続している場合には、特段の事情がない限り、その月から当該状態が解消されるに至った月の前月まで減算する。
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以上である。別段誰かから解説してもらわないと理解できないような文章ではないし、読めば、どういう場合に減算になるか理解できる内容だ。そうであればこのことを行って、その記録を残しておれば良いだけの話だ。この減算規定に該当しないように、日頃の業務を正しく行い、その記録を残しておくことなど何が難しいというのだろうか。なんの対策が必要だというのだろうか。そのような「実地指導対策講座」を受けなければならないというのだろうか。

この部分は別に巧妙なる記録方法とか、合理的な方法で対応する方が良いというわけではない。真面目に自分の方法で行っておれば良いだけの話で、対策講座などで巧くなる方法を知る必要もない。自分の方法を作り上げる方が大事だ。なぜならオリジナリティこそが、個別のニーズに対応できる支援方法を探り当てるスキルだからだ。

繰り返しになるが、書類の一部不備などは、指導を受けて改善すればよいもので、それは文書指導もしくは口頭指導にとどまるもので、指導を受けて改善するっていうこと自体はあっても良いことなのである。

特養に関して言えば、個別機能訓練加算や栄養ケアマネジメント加算など、専門職の行うべきサービス実務に関する費用算定基準は、現場のことをよく知っている僕自身が間違いないところまで読み込むし、サービス提供体制や職員配置に関する、人事管理に関連する加算などは、むしろ配置数の問題だから単純に解釈可能である。算数が出来る人なら間違える余地がない。介護職員処遇改善加算の算定ルールなどは、多少複雑な算定ルールになっているが、それは人事や経理のスペシャリストが確認できるのだから、わざわざ外部講師に算定方法を伝授してもらう必要もない。

むしろ実地指導対策講座の中で、求められているサービス提供方法や、それに関わる記録の方法を伝授され、理解しようとすれば、それは利用者へのサービス提供に必要な、最低限求められている手順や手続きを理解する中から、何が利用者にとって必要なのかと考えることを忘れ、すべてが費用算定ありきという方向からしかものが見えなくなるという弊害を生む。暮らしを支援する方法が、金銭対価を先に見ることによって、歪んだ方法論に陥ってしまうことさえある。

さして難しくもない算定ルールなんだから、実地指導対策講座にかける時間や費用は無駄と考え、そんなものに頼らないスキルを日常から磨くべきである。

実地指導対策講座を受講する暇があったら、運営基準や解釈通知をじっくり読み込んで、自分で解釈を考える方がよほどスキルになるだろう。解釈しようとする限り、報酬返還になるような重大な請求ミスも起こらないはずである。

今後の事業者スキルとして、「実地指導対策」と銘打った講座には、一切参加しないと決めて、それを目指した日頃の勉強と、事業運営を模索したほうが良いと思う。その程度のプライドを持てないでどうすると言いたい。現に僕はそうしている。

※今日の記事と直接関係のないことですが、先週金曜日に講演を行った宮城県登米市の研修主催者である「宮城県ケアマネジャー協会登米支部」の皆さんから、「先日は大変素晴らしい講演誠にありがとうございました。登米市津山町にある木工芸です。私たち宮城県ケアマネジャー協会登米支部の心ばかりの御礼です」というメッセージとともに。クラフトショップもくもくハウスというところで発売している、小物入れと名刺入れが届きました。講演料を別に頂いているのに恐縮です。この場を借りてあらためてお礼を申し上げるとおもに、送られてきた木工品を画像で紹介します。
登米市もくもくハウス木工品

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