時折報道される介護施設や居宅サービス事業所における利用者に対する虐待。それは本当に信じられないほどひどい行為であったりする。
そのような虐待がなぜ起こるのか? それらの虐待は一部の特殊な人間によって生み出されるものなのか ?そしてそれは我々とはまったく無縁のものなのか・・・。
僕はそうした信じられない虐待行為を生む原因は、日常の感覚麻痺だろうと分析している。そしてそれは日常の何気ない「鈍感さ」によって生まれ、エスカレートするものであると考えている。
そうであるがゆえに、素晴らしい介護を目指す前に、普通の生活という意識が重要になってくるのだと主張している。普通を失ったとき、虐待としか思えないひどい対応さえも、その行為を行っている人にとっては普通の行為になってしまうのである。世間の非常識が、その人にとっての常識になってしまうのである。
こうした感覚麻痺を防ぐために、僕は「介護サービスの割れ窓理論」を唱え、割れ窓は日常的に我々が使う「言葉」であると主張している。それを正しく使うべきであると主張している。
割れ窓理論とは、もともと割れた窓を放置しておくと、割られる窓が増え建物全体が荒廃していき、やがてそれは地域の荒廃につながり、犯罪が増えるという「犯罪心理学」で唱えられている理論である。
このことを介護サービスに置き換えたとき、介護現場の割れ窓は言葉の乱れであり、介護のプロとして顧客である利用者に適切な言葉遣いができないことを放置することが、介護サービスに携わる人々の心の荒廃につながり、感覚麻痺を生み、虐待行為を虐待と感じなくしてしまうのだという主張である。
このように言葉の乱れが常識ではない感覚麻痺を促進させ虐待に繋がるからこそ、逆に言えば言葉を正しくすることで心の乱れをある程度までは防ぐ効果もあると主張している。
そのような「介護サービスの割れ窓理論」 の提唱者である僕であるがゆえに、その責任として、僕自身は施設の中で利用者と接する際に、丁寧語以外の言葉で会話をすることはない。100%丁寧語で話している。
しかし残念なことであるが、我が施設の全職員が100%丁寧語を使っているかといえば、その答えはNoと言わねばならない。再三注意し、個人指導しているのもかかわらず、その場では反省の態度を示すのに、時間が経過すると、またもとの汚い言葉遣いを使っている職員が複数存在する。
そう言う言葉を使っている際に、僕が近くを通ったら必ず注意するが、それが何度も繰り返され、そのことを恥と思わない職員が存在する。
そういう職員は、責任ある役職には決して就けないし、職員としての評価は最低である。今後も注意し続けるが、それでも直せない人は、介護施設の職員として、看護や介護のプロとして失格の烙印を押さざるを得ない。それは軽蔑されても仕方のない姿勢だと思う。
しかしそれらの人々は、なぜ言葉を正そうとしないのか。乱れた言葉で利用者と接する醜さになぜ気がつかないのか?
もしかしたらそれらの職員は、丁寧語で話すことが何故、固苦しさにつながると考えているのではないか。それは間違いだろう。世界一ボキャブラリーの豊富な日本語であるがゆえに、丁寧語で話すことで「固苦しくて肩がこる」なんてことにはならない。それはコミュニケーション技術の問題であり、丁寧語を使い慣れておらずにぎこちなく使うから、利用者の方が気を使って「もっと普段使う言葉でいいよ」って言ってくれているという意味だ。利用者が気を使っているという意味だ。
どこの世界に、顧客が従業員に気を使う職業があるというのか。どこの世界に、顧客に気を使ってもらって、従業員が生活の糧である給料をもらえるというのか。それはもうプロの仕事ではなく、自らの職業を誇りの持てない恥ずべき職業に貶めるものである。
利用者を顧客と見ない意識では、適切な労働対価は支払われない ということに気づくべきだ。介護サービス従事者の給与の低さは、この言葉遣いに代表される「素人でも誰でもでいる仕事」と思われていることにも一因があることを知るべきだ。
介護のプロとして、顧客満足度を意識すれば、丁寧語を使わないという選択肢は有り得ないということをもっと真剣に考えるべきである。
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介護・福祉情報掲示板(表板)
職員の感想は、「言葉が難しい」「よく意味がわからない」といったものから、「普段から意識しないといけない」「日頃の自分にとっての『普通』が他者から見れば違うかもしれないということがわかった」「気を付けたい」など、受け取り方は様々でした。
前半の感想は「もうちょっと勉強しろ〜」というところですが、半分くらいの職員には伝えたいことは伝わったのではないかと思います。
施設全体で「魂」のこもったケアサービスを提供できるよう、皆で「云」い合える職場環境づくりをしていきたいと思います。