介護保険制度が始まってから誕生した介護支援専門員という資格について、その有資格者が制度の中心的役割を担うために、ケアメネジメントの研修会が制度開始当初より必要とされたが、その研修のほとんどは、居宅介護支援事業所の介護支援専門員を対象にしたものであった。

その理由は、この制度が利用者が住み慣れた地域で暮らし続けるために、居宅サービスを重視するという理念を立っているため、居宅介護支援という方法で利用者の居宅生活を支える方法をとるというシステムを導入したことにより、新たな事業である居宅介護支援の方法論をまず明確にする必要があったことと、実際に居宅介護支援事業所という新しい事業所で、介護支援専門員として勤務する人々が一挙に増え、それらの人々が何をすれば良いのかわからないという実態があったからだろう。

そんな中、施設の介護支援専門員は、その役割も明確ではないまま、各施設独自で法令上のルールを踏襲しながらケアマネジメントを行ってきたわけではある。しかしそのことによって施設ケアマネジメントのあり方が不明瞭となり、今まさにその方法論を体系化する必要に迫られてきたといえるであろう。

全国老施協が施設ケアマネジメント研修を定期的に実施しようと動き出したのは制度開始からなんと8年も経ってからであった。2008年7月3日、老施協事務局の入っている東京都内のビルで、施設ケアマネジメント研修の企画を話し合う委員会が行われたが、僕はアドバイザーとして出席を求められ議論に参加した。

しかしいざ研修会を企画運営するにしても、施設サービス計画の作成実務や施設ケアマネジメントを実務に即して、具体的に講義できる人がなかなかみつからなかった。こういう実務については、それを行ったことがない学者に頼んでも無意味だと思い、現場の職員で講義を行えないかを考えたが、これといった人材の情報に欠けていた。
(※人材がいなかったわけではなく、誰がその人材なのかという情報がなかったという意味である。)

そのため同年12月5日、東京ファッションタウンビルで行われた最初の「施設ケアマネジャー研修・シンポジウム」では、僕自身が施設ケアマネジメントの講義と、シンポジウムのコーディネーター役を務めることになった。

その時、僕はケアマネジャー実務から離れ施設管理業務を行っていたが、実際に実務経験があって法令ルールも理解しているということから、講師役を受けたわけであるが、これ以来施設サービス計画作成実務や、施設ケアマジメントの方法論、施設ケアマネジャーの位置づけや相談員との業務分掌などについて講演・講義する機会が増えた。

現在も全国の様々な場所で、施設ケアマネジャーを対象にした研修講師を務めているが、いまもって居宅介護支援事業所のケアマネジャーを対象にした研修に比べ、施設ケアマネジャーを対象にした研修は少ないため、研修主催事務局には、開催地からかなり遠くの施設に所属するケアマネジャーから参加申し込みの打診が届くことが多いそうである。

先日、京都市で行われた京都府介護支援専門員会主催研修において、「施設ケアマネジャーの役割と施設サービス計画作成の要点」というテーマでお話させていただいた際にも、近畿圏だけではなく、四国や九州からも研修を受講しにこられている方がいた。

それだけ施設ケアマネジメント実務の研修ニーズはあるのに、実際にそうした研修機会が少ないということだろう。

相変わらず施設ケアマネジャーと相談員の業務分掌に悩んでいる施設が多かったり、施設ケアマネジャーの役割を明瞭化出来ていない施設があったり、そもそも法令に沿った施設サービス計画作成実務を理解していないケアマネジャーがいるので、もっと施設サービス計画作成実務と、施設ケアマネジメントのあり方に関する研修機械は増やすべきであろう。
(※できれば施設サービス計画作成実務と、施設ケアマネジメントのあり方については、それぞれ独立した別講義として時間設定したほうが良いと思う。)

その際には講師としてお手伝いすることはやぶさかではないので、お気軽にご相談いただきたい。

ただひとつだけ指摘しておきたいことは、施設ケアマネジャーと相談員の業務分掌を含めた施設ケアマネジャーの役割の明確化には、施設ケアマネジャーが相談援助部門の責任ある地位であることを理解し、施設サービス計画は単なる実地指導に必要な書式ではなく、施設サービスの質を作る基礎ツールであることを理解する必要があるということだ。

そうであるなら、その担当者たる施設ケアマネジャーが、その能力に基づく知識や援助技術を発揮できるように、ある程度の権限というものを与えるという組織としての方針の明確化が必要だ。

つまり施設長が、このことを理解していなければ、施設ケアマネジャーが介護施設でいくら頑張っても、その機能は永遠に発揮できないという意味である。

そうであるがゆえに、施設ケアマネジメントのなんたるかを勉強して欲しいのは、施設ケアマネジャーより、施設長であるとも言えるわけである。

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