介護施設の中で、あるいは居宅サービス利用中に、利用者同士が口論をしている際に、職員である我々が介入すべきなのか、介入すべきではないのか、あるいは介入するとしたら、どういうふうに、どの程度介入すべきなのかという議論がある。

それに対して、介護施設や居宅サービスの提供場所といえども社会の一部分なのだから、そこで利用者同士が口論することもあるだろうし、それは当事者間の問題であって、職員といえども介入する権利はないという意見もある。

たしかに介護施設や居宅サービスの提供場所も、社会の様々な場所で起こりうる現象が起こって当たり前の場所である。よって介護施設であるから、利用者同士の口論は未然に防がれ、そういうことが起こらないようにすべきだということにはならないだろう。

だからといって、当事者間の問題で、我々職員が介入しないのが当然という考え方はどこかおかしい。当事者間で解決すべきであるという意見も違うと思う。

そういう意見を述べる人々は、介護サービスといえど、顧客サービスであるという根本を忘れているのではないだろうか?

顧客サービスを行っている最中に、サービス提供の場で、誰かと誰かが口論していた時に、それは利用者同士の自由だろうと放置できるサービスがどこに存在するというのか。当事者問題として関わらないというのは、顧客サービスとしての責任を果たさないという意味だ。

どこかで福祉援助や、介護サービスは、他の顧客サービスとは違うんだという観念を持ってしまって、主体性というものがサービス提供側の都合の良い意味で使われ、暮らしの場で起こる出来事に、できるだけ介入しないことが普通の暮らしを作るという間違った考えを生んでしまっているのではないだろうか。

普通の暮らしは大事だが、誰かと誰かが傷つけあうのが普通と考える方が間違っているし、我々が提供する顧客サービスは、暮らしの援助なのであるから、環境をはじめとした様々な状況に介入していく必要があるはずだ。

人間関係の調整介入も、社会福祉援助・介護サービスとして求められるものだろう。

顧客同士がサービス提供場所で口論になった時に、そこに居合わせた従業員が「お客様、どうかしましたか」って声をかけ、他の利用者の方々の迷惑にならないように配慮をお願いしますって誘導することができない顧客サービスって他にどこにあるんだ?

我々の介護サービスの現場も同じではないか。

しかも我々は、人間関係全般に、そして暮らし全体に介入する福祉援助のプロなのだから、単に口論を中止させて終わりではないでは済まない。口論されていた当事者間の人間関係の調整役も担わにゃあならん職業である。だから相談員がいるし、看護職員や介護職員も相談援助の基礎を勉強しているのだろうに。

そうであれば、その場を収めて別室で話し合いましょうとか、プロとしての介入は必要とされるのは当然である。その時、お互いの言いたいことを言い合ってもらうのか、心を沈めて冷静に話し合っていただくのかを見極めるのが我々の専門性である。

口論していた当事者のパーソナリティ、日頃の関係性、口論の原因等を様々な角度から考えて、その時のベターな対応を探すのが我々の技である。ここに線引きもできないし、原則論なんて通用しない。一番近くで気づく専門家として、その人々の表情を見て感じないと答えなんて出ないのである。

そうした努力をしないで、なんでもマニュアル化できると考えること自体が不遜な態度である。

すべての対応方法をマニュアル化できないからこそ、我々の仕事の根幹には、人を見つめ、その心に寄り添うという、共感的理解による受容の原則が求められるのである。

マニュアルを作って線引きできない部分が、人の暮らしにはあるのだ。そこにどう介入できるのかというのが我々のプロの技だ。その介入の積み重ねをケース検討し、それをエビデンスになったとき、はじめてマニュアル化が可能になるかもしれないが、人の暮らしであるがゆえに、そこには線引きできない部分が常に存在し続けることを肝に銘じて、その困難さに真摯に向かい合うべきである、

忘れてはならないことは、我々は介護サービスという商品を提供するプロフェッショナルであるということだ。

生活支援というのは暮らしの場で行われるものなので、我々は家族と同じ存在になりうると勘違いしてしまう傾向が強いが、それは間違った考え方である。我々は家族そのものにはなれないし、なろうとしてもいけない。家族であれば許されることも、我々介護のプロには許されないのであり、家族よりもっと専門性の高い支援が求められると理解すべきだ。

利用者に寄り添うという姿勢は、そうしたプロフェッショナルとしての知識と援助技術があってはじめて成り立つ概念である。

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