厚労省のサイトにも掲載されている介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理の中に、次のような指摘事項がある。

・施設における介護支援専門員については、社会保障審議会介護給付費分科会の審議報告においても「施設におけるケアマネジャーの役割が不明確なのではないか」といった指摘がされている。
・介護老人福祉施設及び介護老人保健施設については、入退所時における家族や居宅介護支援事業所の介護支援専門員などとの調整・連携、ケアカンファレンスにおける多職種協働の円滑化など、ソーシャルワークやケアマネジメントの知識や技術を有する者がその役割をしっかり担えるよう推進していくことが必要である。


「施設におけるケアマネジャーの役割が不明確なのではないか」というが、国や各種委員会がそれを明瞭にするような施策をとってきたのか?むしろ国が決めたルールそのものが施設ケアマネジャーの役割を不明瞭にしているのではないのか?

日本の介護保険制度は、居宅サービスを重視するという理念を法第2条に盛り込み、そのため居宅介護支援というシステムを新たに構築して、その中心的役割を担うために介護支援専門員という資格を新たにつくり施行されたため、ケアマネジメントの方法論は、居宅介護支援の方法論に偏って考えられてしまう傾向にある。

介護保険制度施行によって、介護保険施設には介護支援専門員の配置義務が課せられ、施設の中で施設サービス計画作成業務を中心的に担うという責務は与えられたが、施設ケアマネジメントとはなんなのかという教育はほとんど行われないまま新制度がスタートした。

さらに新しい支援システムの理解や、ルールの共有のために、介護支援専門員の研修は、居宅の介護支援専門員に向けたものから始まり、施設ケアマネジメントについては、制度施行から数年間は全くと言ってよいほど行われなかった。

そのため施設ケアマネジメント業務は、施設の介護支援専門員の個々のやり方に丸投げされた実態がある。そこでは制度施行以前から個別ケア計画作成を担当していた施設相談員が、介護支援専門員の資格を取って、そのまま介護支援専門員と相談員の兼務で、両者の業務分掌を必要としないで業務をこなすという状況を生み、介護支援専門員と相談員業務の分掌・区分がますます不明瞭になった。

これに拍車をかけているのが、「介護支援専門員については、入所者の処遇に支障がない場合は、当該指定介護老人福祉施設の他の職務に従事することができるものとする。この場合、兼務を行う当該介護支援専門員の配置により、介護支援専門員の配置基準を満たすこととなると同時に、兼務を行う他の職務に係る常勤換算上も、当該介護支援専門員の勤務時間の全体を当該他の職務に係る勤務時間として算入することができるものとすること。」(老企第43号)という配置ルールである。

このルールは、施設のために配置基準を緩やかにしたというより、介護保険制度施行時、介護施設に新たに介護支援専門員という職種の配置義務を設けたことによって、介護給付費にその人件費分を上乗せしなければならないという理屈を封じ込めるために、従来から配置されている相談員が、介護支援専門員の資格を取得して相談員兼介護支援専門員という配置を想定しながら、そのことによって職員を新たに雇用しなくてよいとして、給付費を押さえ込んむルールであるという側面がある。

しかしこれにより、相談員だけではなく、相談援助の仕事をしたことがない看護職員や介護職員等が、その実務で介護支援専門員の資格を取って、看護職員や介護職員としての業務を行いながら、一人数件のケースを担当し、その担当利用者の施設サービス計画を立てるという傾向が見られた。その兼務実態であっても介護支援専門員と介護職員の両方の配置1としてカウントされるのだから、施設によっては、このような状況を推奨する風潮が生まれた。

しかし本来相談援助業務であるケアマネジメントを、その実務ではない経験により介護支援専門員の資格を取った看護職員や介護職員等が、現場の看護・介護業務のかたわらケアマネジメント業務をこなすなんていうことは現実には不可能である。それは単に数人の担当利用者の施設サービス計画を立案するだけの業務で終わらざるを得ず、まさにケアプランナーとしてしか機能しない結果をもたらす。この実態がある限り、施設ケアマネジャーの役割の明確化などできるわけがない。

そもそもこの中間的な整理の中には、「ソーシャルワークやケアマネジメントの知識や技術を有する者がその役割をしっかり担えるよう推進していくことが必要」という文章を書かかれている。この文章から見えるのは、報告書作成者のケアマネジメント理解のなさである。なぜならケアマネジメントとは、ソーシャルケースワークの1技術を指すもので、「ソーシャルワークやケアマネジメントの知識」というふうに、並立的に表現するのは間違いだからである。こんな間違った文章を報告書に書いて、恥ずかしいと思っていないこの委員会はどうかしている。

ケアマネジメントの本質がわかっていない連中の書き上げる報告書に基づく「今後のあり方」に、一体何の意味があるのだろう。バカバカしいにも程がある。

施設の介護支援専門員は、利用者の生活課題を解決する具体的目標を定め、目標達成に必要な生活支援の具体策を立て、実行するチームの中心を担うコーディネーターの役割を持つ。そこではケアプランは生活援助の手立て、道具にしか過ぎない。だから施設サービス計画を作ることが介護支援専門員の役割ではないのだ。施設サービス計画を立案し、それを使って利用者の暮らしをよくするのが施設の介護支援専門の役割である。

つまり施設ケアマネジャーはケアマネジメント技術をきちんと持ったソーシャルワーカーでなくてはならず、単にケアプランを作る人(ケアプランナー)ではない。

そして施設ケアマネジャーと相談員の関係とは、両者は両者ともソーシャルワーカー であり、施設ケアマネジャーは関連職種実務5年の経験者であり資格試験に合格した者というだけではなく、高度なケアマネジメント技術を学んだソーシャルワーカーという意味を求めるべきである。そうであれば施設ケアマネジャーとは、他のソーシャルワーカー(相談員)のスーパーバイザー的存在に なるという相談員の中のリーダー として機能せねばならない。

つまり施設ケアマネジャーと相談員との兼務はあり得ても、他職種との兼務は事実上不可能なのだ。

ましてや看護・介護業務を続けながら1日数時間、ケアマネ業務をこなすなんていう状態は、ソーシャルワーカーとしてのスキルを発揮できない、一番悪い体制である。

なぜなら介護支援専門員は、ソーシャルワーカーとして、看護・介護職員とは少し違う立ち位置で現場の業務内容を検証する役割を持たねばならないからだ。

それは現場において、蟻の目と、鳥の目との両方の視点から現場のサービスをチェックできる存在としての役割であり、介護職員と同じことを出来るというスキルは大事だが、同じ業務を行っている状態は望ましくないのである。

このことは、施設介護支援専門員が理解することも必要だが、それ以前に施設長など、施設の管理者が正しく理解しないとならない。

必要なのは、施設において介護支援専門員を専任化することではなく、こうした立ち位置や役割を正しく理解した上で、施設の中でどういう形で勤務できるシステムを作り出すかということなのだ。

結果的にそれが相談員との兼務であっても、ここが明確なら業務に支障は出ない。支障があるとすれば、介護支援専門員を100人に対して1人しか配置しなくても良いという配置基準そのものの問題であり、これを変えるためには給付費のアップが欠かせない条件になるということだけである。

感動のシリーズ完結編、好評発売中!!
カバー帯付き3
人を語らずして介護を語るな THE FINAL 誰かの赤い花になるために」の楽天ブックスからの購入はこちらから。(送料無料です。

人を語らずして介護を語るな THE FINAL 誰かの赤い花になるために」の出版社からの購入はこちらからお願いします。(送料無料です。

「人を語らずして介護を語るな2〜傍らにいることが許される者」のネットからの購入は
楽天ブックスはこちら
アマゾンはこちら
↑それぞれクリックして購入サイトに飛んでください。

介護・福祉情報掲示板(表板)