介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理では、施設の介護支援専門員のあり方について、次のような提言がされている。
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(4)介護保険施設における介護支援専門員について

○ 施設における介護支援専門員については、社会保障審議会介護給付費分科会の審議報告においても「施設におけるケアマネジャーの役割が不明確なのではないか」といった指摘がされている。
○ 介護老人福祉施設及び介護老人保健施設については、入退所時における家族や居宅介護支援事業所の介護支援専門員などとの調整・連携、ケアカンファレンスにおける多職種協働の円滑化など、ソーシャルワークやケアマネジメントの知識や技術を有する者がその役割をしっかり担えるよう推進していくことが必要である。
介護療養型医療施設についても、施設の特性にかんがみながら、介護支援専門員が多職種協働の下で質の高いケアマネジメントを進めていくことが必要である。
○ 以上を踏まえ、ソーシャルワークやケアマネジメントに係る知識や技術を有する者による介護保険施設の入所者に対する支援を充実させるため、生活相談員や支援相談員について、介護支援専門員との現状の役割分担にも留意しながら介護支援専門員等の資格取得を進めていくべきである。
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施設におけるケアマネジャーの役割が不明確にされたのは、誰の責任か?それは介護支援専門員を、居宅介護支援事業所のサービス提供方法からの視点に偏って、この制度に位置づけた国の責任ではないか。

問題点だけ指摘して、その根本原因を見つめないと何の解決にもならない。しかしあの委員会は、施設ケアマネジメントとは何ぞやという実務を知らない連中ばっかりだから、問題の本質に迫れない。だから「こうすべきだ」という指摘はできても、そうなるための提言ができていない。ばかばかしい整理である。

もともと施設には、相談援助職としての「相談員」がいるにもかかわらず、相談員と介護支援専門員の関係性を全く考慮することなく、介護保険制度であるから、施設にも介護支援専門員が必要だとして、配置義務だけを課したことに位置づけが不明瞭になる原因があるのだ。

つまり施設ケアマネジャーと相談員との業務分掌や、それぞれの専門職としての機能の整合性が図られないまま、あらたに介護支援専門員が配置義務に加えられたことにより、何をする人かわからない施設介護支援専門員が増えたのが今生じている問題の本質なのである。

そもそも介護支援専門員とは、相談援助職であり、ソーシャルワーカーであるはずなのに、相談援助ができない介護支援専門員を大量に生産する、資格付与の仕組みが問題なのだ。

施設で介護職の実務5年を経験したからといって、あの程度の内容の試験を合格しただけで、実務者研修を僅かな日数受けて、「はい貴方はこれから介護支援専門員ですよ。ケアマネジメントの知識を十分に持っているのですからソーシャルケースワークの業務について頑張ってね」と言われたって、できないものはできないって。

介護福祉士がその業務を行った経験で、介護支援専門員の資格を得た瞬間から、介護支援専門員と介護職員を兼務して、何人かの利用者を担当するなんていう業務体型では、ケアプランナーにしかなれない。入退所時における家族や居宅介護支援事業所の介護支援専門員などとの調整・連携、ケアカンファレンスにおける多職種協働の円滑化を図るスキルなんて持てないって。

ケアマネジメントを含む相談援助業務は、本来はほかの業務と兼務できる業務ではないのである。

施設の他職種と兼務して、両者の配置基準1を満たすというルールは、施設の介護給付費を引き上げないまま、新しい職種として介護支援専門員の配置義務を課したためのルールであるが、この弊害は相談援助職以外の業務とケアマネジャーが兼務することで著しく現れる。

しかし相談員はもともと相談援助職で、その延長線上にケアマネジメントに長けた、ソーシャルワーカーのスーパーバイザーとなり得る職種としてケアマネジャーが位置づけられても良いもので、両者の区分はもともと難しいのだから、この兼務はあり得るだろう。

相談員以外の他職種とケアマネジャーの兼務は無理だが、相談員とケアマネジャーの兼務はありだ。というよりソーシャルワーカーとして、利用者の相談援助業務全般に関わる業務の中で、施設サービスにおいて、ケアマネジメントという社会福祉援助技術をつかいこなせる専門家という意味では、両者は分けられない。

だから僕が主張するケアマネジャーのあり方とは、そうであればいっそのこと、施設ケアマネジャーなどなくして、今一度原点に返って、相談員の役割として担うべき社会福祉援助技術の1技術としてのケアマネジメントに着目し、ケアマネジメント技術をしっかり身につけたソーシャルワーカーの養成を土台にした新しい配置基準の考え方があってよいというものだ。

施設サービスにケアマネジメントが必要ではないという意味ではなく、ケアマネジメント技術を実際に使いこなす専門職として、現在の介護支援専門員の資格付与過程には問題が多く、いっそのことケアマネジメント技術をしっかり学んだソーシャルワーカーが、相談員として、その役割を担った方がよいという意味である。

当然その考え方の延長線上には、相談員が行政職の任用資格である「社会福祉主事」資格を基礎とするのではなく、社会福祉士を基礎資格とするという議論があって当然と思う。相談員の配置基準だって対利用者比50:1では足りないのではないかという議論があってよいというものだ。

ケアマネジメント実務をこなすソーシャルワーカーとしての配置義務は、介護支援専門員という資格のみならず、社会福祉士であってもよく、それは施設が人事採用の際に選択すべきとする基準に直すべきだ。そして現行の相談員配置基準より、それは上乗せ配置されるべき基準で、給付費による手当も避けられないと思う。

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