居宅サービス計画については、他者の計画を作成する場合は、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員でなければならない。

つまり介護支援専門員という資格は当然必要だが、その資格を持っていても、「指定居宅介護支援事業所」に配属されていなければならないのである。

しかし居宅サービス計画は、自己作成することが認められている。自分自身の居宅サービス計画を立てる場合は、何の資格も必要ないし、指定事業所に配属されている必要もない。これは常識といっても良い問題であろうが、一応その法的根拠を示しておく。

まず介護保険法第41条6項で、居宅サービス費が現物給付化(利用者1割負担を介護サービス事業者に支払って利用できること)される条件について

居宅要介護被保険者が指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けたとき(当該居宅要介護被保険者が第四十六条第四項の規定により指定居宅介護支援を受けることにつきあらかじめ市町村に届け出ている場合であって、当該指定居宅サービスが当該指定居宅介護支援の対象となっている場合その他の厚生労働省令で定める場合に限る。)は、市町村は、当該居宅要介護被保険者が当該指定居宅サービス事業者に支払うべき当該指定居宅サービスに要した費用について、居宅介護サービス費として当該居宅要介護被保険者に対し支給すべき額の限度において、当該居宅要介護被保険者に代わり、当該指定居宅サービス事業者に支払うことができる。

↑このように定めている。つまり指定居宅介護支援を受けることにつきあらかじめ市町村に届け出て介護支援の対象となっている場合(つまり居宅介護支援事業所の介護支援専門員により居宅サービス計画が立案されている場合という意味)の他に、厚生労働省令で定める場合には保険給付対象である居宅サービスは現物給付化(利用する際に1割自己負担分を支払って利用できること)されるわけである。

この「厚生労働省令で定める場合」とは、介護保険法施行規則第64条において規定されており、その二には、「当該居宅要介護被保険者が当該指定居宅サービスを含む指定居宅サービスの利用に係る計画をあらかじめ市町村に届け出ているとき。」としている。

つまり当該居宅要介護被保険者(つまり利用者自身という意味)が居宅サービス計画を立案し、市町村に届け出ている場合も、居宅介護支援を受けるのと同様に、居宅サービスは現物給付化されるわけである。これがセルフプランの法的根拠である。

このように居宅ザービス計画を、介護サービスを利用する本人が立案することを、マイプランとかセルフプランとか言う。これは法令上の言葉ではなく、あくまで通称だ。

ところでセルフプランを立てることについて、僕自身はあまり推奨しない立場をとっている。それは制度があまりにも複雑になりすぎて、介護保険制度や介護報酬の構造に精通していない人が適切なサービス計画を立案することが難しくなっているからだ。

だからといってセルフプランを完全否定しているわけではない。自分自身の計画を立案したいという希望を持つ人が、それなりに勉強して、自身にふさわしい計画を立案できるということであれば、それは充分認められると思う。大賛成だ。

ところが先日、道内のとある地域の方から、セルフプランの届出をしようとしたら役所の窓口で担当者職員から、そのことについての数々の妨害を受けたという相談を受けた。セルフプランといえど、介護支援専門員が作成する居宅サービス計画と同様に、効果がある内容の指導もするということも言われたらしい。

セルフプランを作成する場合、本人が作成して届け出た居宅サービス計画の介護報酬コードや、指定事業所番号などの記載内容をチェックして国民健康保険連合会に給付管理表を送付する事務処理は、市町村の担当職員が行うことになる。それに対する報酬が別に発生するわけではなく、市町村の業務が増えるだけだから、地域によって担当職員がそのことを歓迎しない場合があることはよく聞こえてくる。しかし露骨な妨害行為は、利用者の権利侵害ではないだろうか。そもそもケアマネジメントの適切性を、行政担当課が指導する根拠は、居宅介護支援に関する法令に基づくものであり、それをそのまま被保険者に対する指導根拠にすることにも無理があるだろう。

細かい相談内容は記せないが、当該ケースでは、訪問看護の導入に際して、役所の窓口でその必要性はないと計画に組み入れることを妨害されているということであったので、そこまでの指導はできないだろうと回答した。

相談者は法的手段も辞さないということであったので、それは最終手段として、まず正式に市町村や道の苦情担当窓口に苦情申し立てをするようにアドバイスした。

どちらにしてもそこから得た印象としては、行政職員が自分の持つ職権というものを勘違いしているのではないかということである。そこには権力に酔う見識の低い行政職の醜い姿が浮かぶばかりであった。

介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理」の中では、保険者機能の強化によるケアマネ支援が盛り込まれており、居宅介護支援事業所の指定権限を市町村に与える案が示されている。

しかし本記事に登場する行政担当者のように、ケアマネジメントのなんたるかも知らない、権力に酔うお馬鹿な行政担当者が多い現状で、市町村に「指定権限」を与えることになれば、利用者本位のケアプランが作られるのではなく、今後は保険者本位の流れを生みかねないだろう。

そして市町村の担当者が変わるたびに、変なローカルルールによって、居宅介護支援事業所のケアマネジャーは右往左往することになることは確実だろう。困ったことである。

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