来月2月16日(土)14:00〜、東京都北区の北トピアで行われる、「東京都社会福祉協議会・高齢者副支部会、ショートステイのあり方委員会主催研修」において、「ショートステイに関わる人達へ〜介護サービスのこれからについて〜」をテーマとした講演を行う予定である。

この研修では、前半と後半に分けてそれぞれ90分ずつ2講演を行う予定である。

前半の90分は、「ショートステイケアプラン作成の視点」というテーマで、短期入所生活介護計画の作成実務について、法令に基づく作成手順や作成方法を示しながらプランに盛り込まねばならない内容とは何か、どのような目標を立てるべきかなどをお話する。レスパイトケア目的のショート利用の際の計画目標の考え方なども具体的に示す予定だ。

さらにショートステイ滞在時に求められるサービスとは何かということを、顧客ニーズという視点から示した上で、それをショートステイプランの中に具体的にどのように落としていくかなどについて、事例を示しながら説明する予定である。

後半の90分講演は、前半とはかなり視点の置き所を変えた内容になる。テーマは、「介護サービスの今後のあり方〜誰かの赤い花になるために〜」である。

本来この研修はショートステイ担当者が集うのであるから、ショートステイというサービスが、いかに社会的に求められているサービスであるかということや、その事業に携わることの喜びを最大限に伝えるべきであろうが、今回はショートステイ関係者にとって、少し耳障りなお話もしなければならないと思っている。

なぜなら滞在サービスに対する社会的ニーズは、「ショートステイが一番」ということではなくなっているという現実があり、その原因の一つには、ショートステイというサービスが、顧客確保に困らないことによって、担当者がそのことに胡座をかいて、利用者や居宅サービス計画担当者(ケアマネジャー)の要請に応える姿勢に欠けているという問題があるからだ。

居宅介護支援事業所の介護支援専門員の人たちから聞こえてくるショートステイに対する不満の声とは、なかなか利用できないくらい申込者が多いことから、「担当者の態度が高飛車だ」、「申し込み方法や申し込み期限など、勝手なルールを押し付けられる」などである。

しかしこうした顧客確保に困らない状況は、都市部であってもいつまでも続きはしないだろう。

介護保険創設時、滞在サービスといえばショートステイ(短期入所生活介護及び短期入所療養介護)しかなかったが、2006年の制度改正では小規模多機能居宅介護が創設され、そこでは宿泊サービスが費用は保険外であるが、機能としては基本サービスとして位置づけられており、事実上は滞在可能なサービスとなっている。

しかしそれ以前に、ショートが利用しづらい地域では、デイサービス事業所で、保険外宿泊サービスを行いながら、宿泊前後のデイサービスと一体的にサービス提供を行うという「お泊りデイサービス」が行われ、そのサービスは既に必要なサービスとして一般化しているといっても過言ではない。

デイサービスの本来機能として、長期に宿泊しながら毎日のようにデイサービス利用するのはどうなんだという疑問の声は根強く存在するとは言っても、利用者やその家族が、そういう利用形態を望み、事実ショートステイで対応しきれない利用者が、それによって生活が支えられているという現実がある限り、お泊まりデイが否定され廃止されるようなことはありえない。

むしろ通い慣れたデイサービスで、馴染みの関係ができている職員に、夜間のケアを受けながら宿泊できるということにメリットを感じて、ショートステイ事業所が別にあっても、そこのベッドが空いていても、あえてお泊りデイを選択する利用者も増えているのだ。

この時、ショートステイ事業者が考えなければならないことは、ショートステイに対する利用者や家族の一番の不満は、「ショートステイを利用したことによって身体機能が低下する」ということであるという点だ。特に認知症の人で、転倒の危険性がある方を短期間受け入れるショートステイでは、「転倒骨折させない」という点に主眼が置かれ、事故なく一定期間ショートステイを利用さえできればよいと考えがちで、結果的に安易な車椅子の使用や、運動機会を作らないで、部屋でおとなしくさせておくという傾向が見られる。

その結果、ショートステイ利用後に身体機能が低下し、居宅でのケアがより大変となるというケースが数多く報告されている。

この点お泊まりデイの場合は、デイサービスという本体事業に、宿泊サービスを上乗せしているので、日中の豊富な活動メニューがあり、長期間そこに宿泊しながらデイサービス利用しても、日中はずっと宿泊スペースにいて活動が低下するということはない。ここが強みである。

小濱道博氏(小濱介護経営事務所代表)の著書「まるわかり介護報酬改定」(日本医療企画)によれば、「通所介護は、認知症デイサービスを含めて全国で3万事業所に近い事業所数という経営環境に一変しました。この件数は、3大コンビニといわれる、セブンイレブン(13.685軒)ローソン(10.447軒)、ファミリーマートam/pm(8.697軒)の2011年末の合計3万2.829店舗に近い事業所数です。この市場環境では、介護サービス業を開業しても、容易に利用者を獲得できる環境とはいえず、事業者間の競争も厳しくなってきます。」とされている。

そうであればデイサービスは、淘汰の時代を生き抜く新たな経営戦略が必要とされるであろう。そのために日中の通所に加えて、夜も滞在できるという、「お泊まりデイ」を顧客確保の戦略として推進していく事業者が増えることは容易に想像できる。つまり今後の通所介護事業者は、デイサービス事業者間のみで競合するのではなく、今まで以上にショートステイ利用者も顧客としてターゲットとする経営戦略をねってくるということだ。

その結果、滞在サービスは、お泊まりデイも含めて、小規模多機能居宅介護とショートステイはどちらが良いのかという選択肢の一つとして競合していくという様相が見えてくる。

それらのサービス事業者とショートステイは競合し、今までは考えられなかった顧客の奪い合いが始まるということだ。(既に始まっている地域もある。)お泊まりデイvsショートの軍配はどちらに挙がるのか?

そこではショートステイという事業種類だけで選択される要素は極めて少ない。

なるほどショートステイは、お泊まりデイや小規模多機能居宅介護と異なり、医師の配置義務がある(基準該当サービスは、昨年からこの配置義務はなくなっているが)が、このことはショートを積極的に選択する理由にはならないだろう。なぜなら居宅サービスを受けている人は、ほとんどの場合、かかりつけ医師が別にいて、ショート滞在時はショート事業所の配置医師が治療に当たるというルールを、知らない医師に診て欲しくないとしてむしろ迷惑に感じる場合の方が多いからだ。特に短期入所生活介護の場合、医療ニーズから滞在サービスを選択するわけではないので、この傾向は強い。

するとショートステイを選んでもらうためには、もっと別な理由が必要だ。広がる選択肢の中で、他の滞在サービスとの競争の中から選んでもらえるショートステイ事業でなければ価値はなくなるのである。 そのために顧客サービスとしての、介護サービスの品質を向上させる戦略が必要だ。それらのサービスの質を担保する職員のスキルアップが必要だ。

後半90分の講演は、そういう視点で介護サービス全般について、求められることについてのお話をしようと思っているので、この後半の90分は、ショートステイ事業の関係者以外が聴いても役に立つと思う。

なお北区の後半90分の講演を少しバージョンアップした内容として、前日の2月15日(金)18:30〜福生市民ホール(東京都福生市)で人を語らずして介護を語るな〜誰かの赤い花になるために〜」というテーマの120分講演を行う。こちらは案内チラシのリンクを貼り付けてあるので、お近くの方はぜひおいでいただきたい。参加費は無料で、申し込みも必要ないそうである。

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