先月末に発生した、登別大停電については、「登別大停電の影響と教訓(その1)」「登別大停電の影響と教訓(その2)」の中で報告しているが、その後に考えたことを追記しておきたい。

登別市では、停電被害の際に市内に避難所を5ケ所設置し、最終的にはその数を7ケ所に増やしている。

しかし1日目に、ここに避難した住民はわずか180人。最終的にも300人に満たない人しか避難しなかったという。

本年11月末現在の人口が51.547人で、65歳以上の人の数が、14.920人(高齢化率29%)の市内全域が停電をしていて、避難所を使った住民が300人にも満たなかった事情はいろいろあるだろう。

市が避難所の設置作業と運営に追われる状況で、広報活動や避難支援に手が回らなかったため、設置を知らなかった市民が多く、高齢者ら自力避難が困難な災害弱者が自宅待機を余儀なくされたケースもあったという。

このような災害時に、避難所の設置をどのような方法で住民に伝えるかは今後の大きな課題だ。特に停電時においては、テレビから情報を得られないため、市の広報体制が重要になる。今回は、スピーカーを付けた市の広報車両が地域を巡回しアナウンスして回ったようであるが、その巡回ルートは、くまなく住民に周知できるルートであったのかという検証が不可欠だ。

ところで、この広報車の巡回について、高齢者世帯からは、「何かアナウンスしていたようだが、内容が聞き取れないうちに通り過ぎた」とか、「耳が遠くて、家の中からでは何をアナウンスしているのかわからない」といった声も聞かれた。ここは単にアリバイ作りという考えは捨てて、もう少し有効な周知方法となる具体策を考えるべきである。

そんな中で、一番機能したのは、町内会の互助組織のようである。高齢者の自宅を1件1件丁寧に回る「見守り隊」が在宅高齢者世帯の支えになった地域がある。しかしこうした組織が全市内を網羅しているわけではなく、そういう方法が全く取られていない地域もあるので、今後は全市をくまなく網羅する「見守り隊」を組織化できるように協議が必要ではないだろうか。

この「見守り隊」の活動については、昨夕18:15からのHBCテレビ(北海道放送)の「NEWS1」で紹介されたが、そこで気づかされたことは、各家庭に戸別訪問しても、停電しているために、多くの家庭で玄関のチャイム・ブザーを鳴らすことができないということだ。

そうなると、直接ドアを開けて、声をかけないと安否確認ができない。普段からある程度、馴染みの関係を築いている人ではないと、ドアさえも開けられないことがあるかもしれないと思った。日中も鍵をかけることが習慣化している家庭なら、訪問に気がつかず、安否確認さえできないケースが、今後は増える恐れもある。ここにも対策が必要だ。

ところで、こうした避難所は、市庁舎の次に一番先に電源確保が必要となるので、配電車や自家発電機は優先的に配備されている。

そしてその次は医療機関である。介護施設は何番目の優先順位か分からないが、医療機関よりもその優先順位が低いことが今回の災害で明らかになった。結果的に配電車も当施設には回ってこなかったし、公的な援助による支援は手が届かなかった。自前で対応する以外なかったわけである。

そんな中、一番優先された避難所に行かない高齢者が多かった理由について、「NEWS1」では、歩行器を使っているため、ほかの人の迷惑になるから自宅で頑張ったという高齢者や、病状から排泄ケアが必要なために、避難所ではほかの人の迷惑になるし、自身のストレスにもなるので自宅から離れなかった人などが紹介されていた。

僕も取材を受け、同番組には僕のインタビューの映像が流されたが、取材記者から聞いた話では、流動食などの特別な食事が必要な人は、避難所の炊き出しでは対応困難なため、そこに行くという選択肢はなかったというケースもあった。

僕の施設は発電機を自前で確保したが、そうでなければ夜の寒さを考えると、避難所に移動しなければならない事態が生じたかもしれない。しかし100人もの要介護者を、寒空の中避難所まで移動するのは大変なことだし、食事や排泄のことなどを総合的に考えると、それは現実的ではない。

そうであれば介護施設には、多くの人を一時的に受け入れることのできるホールなどのスペースがあり、障がいを持っている方が使えるトイレや、特食を調理できる厨房があるのだから、災害時は市の公共施設のみを避難場所にするという考え方だけではなく、介護施設を避難所にして、そこに配電車などを優先的に配備し、地域住民を受け入れれば一石二鳥以上の効果があるのではないだろうか。

現在の避難場所の考え方は、介護施設があまり充実していない頃からの考えを踏襲しているものと思え、このあたりの見直しも必要ではないだろうか。

放映されたインタビューは、そうした方向から発言したものである。

でもそれって僕の施設を避難所に指定しろって言う意味ではない。市内の便利な場所の、別施設でもいいわけだ。そういう避難所も、そういう考え方も必要になってくるんじゃないかっていう意味だ。

高齢化率が10%代の時代と、その率が30%を超えようとし、さらに後期高齢者の数が増える時代の避難所のあり方は、従前の考え方と違うべきだろう。そういうことを真剣に議論する時期に来ているのではないだろうか。

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