今年のプロ野球ドラフト会議で、日本ハムファイターズが1位指名した花巻東高校の大谷翔平投手をめぐって、様々な意見が出されている。

一度は米大リーグ挑戦を公言した大谷投手が日本ハム入りへ気持ちが傾いていく過程で、学校には激励も寄せられたが、同時に非難の連絡が数多く寄せられているという。

でもこれはおかしいと思う。気持ちが変わっちゃあいけないとでも言うのだろうか。18歳の若者の選択肢が、一度決めたものしか許されないということなんてあり得ないだろうに。様々な状況で気持ちを揺らして、結果的に信念と思えたものの他に、新しい選択肢があったことに気づいたって批判・非難されるような問題ではない。

表立った批判の急先鋒は、東北楽天ゴールデンイーグルスの星野監督だ。

星野の主張は、
「日本球界に行くんなら、ウチも指名しとった。彼の将来は本人が決めることだけど、ちょっと大きな問題になる。これをやったんであれば、ドラフトの意味がない」
「記者会見したんだから、ドラフト指名されずに米国にいくという格好だった。地元(東北地方)の選手だし、ウチが取らんといかん選手だった。前から(入団への)話ができていたとか、そう思いたくないし、そうではないと思うけど…」

というものだ。

はっきり言って負け犬の遠吠えにしか聞こえない。論旨がめちゃくちゃな身勝手な理屈としか言い様がない。

>前から(入団への)話ができていたとか、そう思いたくないし、そうではないと思うけど…

もしこういう密約があって、日本ハム入りするために、球団と大谷投手側が「大リーグ入り」という表明を仕組んだとしたなら、それは大事件だし、両者は批判されるべきだろう。罰則もあって然るべきだ。

しかし全国的にはさして人気球団でもない日本ハムファイターズという球団に、縁もゆかりもない大谷投手が絶対に入団しなければならないなんていう動機付けはあり得ないだろう。さらに密約で変なパフォーマンスをして入団にこぎつけるなんてことは、あまりにリスクが大きくてありえない話である。事実そういう密約も存在していないということが真相だということは多くの関係者が気づいているはずだ。

こういう荒唐無稽な非難を浴びせること自体が問題である。

大谷投手はドラフト前にはメジャー挑戦を表明し、1位指名された際には入団拒否の姿勢を打ち出したが、その気持ちに偽りはなかったはずである。そうであるがゆえに指名球団に入らないということで、その球団に迷惑をかけたくないということで「メジャー挑戦のため日本の球団にはいかない」という意思表示を、ドラフト会議前にしたのであって、そのこと自体は、その時点での彼の誠意であり、まったく問題ないはずだ。

しかし現行ドラフト制度には、指名拒否を事前表明した選手は指名できないというルールは存在しない。

そうであるがゆえに、日本ハム球団は、最悪入団拒否もあるというリスクを覚悟の上で、「その年に一番良い選手を指名する」という球団のポリシーを曲げずに指名しただけである。

これは昨年「巨人にしか入団しない」という意思を強く持っていた東海大学の菅野投手を強行指名し、結果的に指名権は得たが、入団を拒否されたということを見てもわかるように、揺るがない方針だったのである。

しかも大谷投手を指名するという意思を、ドラフト会議の前日にマスコミを通じて流していたという事実がある。決して「抜けがけ」ではなく、正々堂々と指名することを表明した上で、ドラフト会議に臨んでいるのである。

指名後の入団交渉が、この時点で成功する確率は極めて低いと予測する人が多方であり、球団関係者もそれは承知の上だったろう。

しかし誠意ある交渉と、将来的にメジャー挑戦するための近道という説明を、A4判25ページと別紙5枚にも及ぶ「大谷翔平君 夢への道しるべ 日本スポーツにおける若年期海外進出の考察」と題した冊子を作成するなどの高等戦術と、栗山監督らの誠意ある説明の結果、「計6度の交渉で気持ちが動いていった。」(記者会見での大谷投手の発言)のである。

大谷投手が自ら発言しているように、ドラフト当日入団の可能性は「ゼロ」と断言した気持ちは本当であったと思う。しかし徐々に気持ちは日ハム入団後に、一流選手になってからメジャー挑戦するという方向に傾いたのである。このことを誰が批判できるというのだろう。

星野の発言内容に至っては、笑止千万。

本当に欲しい選手、取らんといかん選手だったのなら、日ハムと同じように、入団拒否のリスクを犯してでも指名して、日ハムと指名権を争い、大谷投手と入団交渉をするという覚悟で臨めばよかっただけの話である。日ハムが指名するのはドラフト前日から分かっていたのだからなおさらだ。そうであるのに、楽天がリスクを回避し、他の選手を1位指名して、のんきな交渉をしている時に、ルールを守って指名した日ハムと大谷投手の交渉結果をもってして「ドラフトの意味がない。」というのは、頭がおかしいとしか言い様がない。同じリスクを負わずに結果から批判するのはフェアじゃないって。これが正論だと思い込んでいるなら、もう彼は野球を論ずる頭脳はないということだろう。○○の穴が、これほど小さい人物だったとは・・・がっかりにも程がある。

今回の一連の動きをもってして、「ドラフト制度の形骸化」なんてことにはならない。このことと完全ウエバー制は切り離して考えなければならない。なぜなら現行制度が完全ウエバー制であったとしても、同様の状況なら日ハムしか彼を指名しなかったという同じ状況にしかならないからである。

もし今回のドラフト会議で、どこの球団も大谷投手を指名しなかったならば、大谷投手という素晴らしい素質を持った選手が、一度も日本のプロ野球界で活躍する姿を我々は見ることができなかった可能性が高いわけである。彼が高校卒業後、そのまま海を渡って米国でプレーすることになったら、日本の子供達は、160キロという直球を投げる選手を、国内で生で見る機会がなくなったかもしれない。

日ハムが、入団拒否されるリスクを犯して、彼を指名して、結果的に当初の彼の希望を変えて、日ハムに入団することによって、我々は素晴らしい素質を持った選手を身近で、生で見ることができる機会を得たわけである。

そういう意味では、日ハムのファンだけではなく、すべての日本プロ野球ファンが、そのことを喜ぶべきだと思う。

それにしても、えげつないことが水面下で行われたという報道がある。

日刊ゲンダイの12/4配信ニュースは
「ドラフトで大谷を指名したのは日ハムだけ。多くの球団は意志が固いと判断して、大谷から降りた。それだけに仮に大谷が日ハムに入れば、結果として担当スカウトの調査不足になる。だからといって日ハムに文句や因縁をつけるわけにはいかず、学校や野球部関係者に当たり散らしている。メジャー球団の嫌がらせにしても同様で、要は自分たちの責任を問われるのが嫌なだけ。それでヨタ話をあちこちで吹聴、大谷の日ハム入りを何とか阻止しようと目の色を変えている。その実態はいまもなお大谷とその周辺を苦しめている。〜(中略)大谷が日ハム入りに傾いているにもかかわらず、周囲の雑音によって一歩を踏み出せないでいるとしたら、これほどバカらしいことはない。」

以上のように報じている。もしこれが本当なら、日本を代表する投手になる可能性のある一人の高校生を、特定球団の思惑で抹殺しかねない馬鹿げた行為だと思うのは僕だけだろうか。

日本プロ野球ファンは、将来日本を代表する選手になるかもしれない若い芽を摘まない様に温かく見守って欲しい。そして日本プロ野球のペナントレースという戦いの中で、厳しく育てて欲しい。

それがスポーツマンシップであり、日本プロ野球ファンの心意気だろうに。

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