全国老施協が11/6〜7日までの2日間の日程で開催した『科学的根拠に基づいたケアの構築に向けて−看護職員への期待と展望』の中で、総務・組織委員会の村上勝彦委員長は次のように語っている。

地域包括ケアシステムは『施設から在宅』を打ち出しているが、全国老施協では『施設も在宅も』でなければならないと考えている。そのためには、科学的介護の実践に加え、特養を『終の棲家』プラス『在宅復帰』という循環型の施設にすることも重要だ。さらに、『看取りの実践と支援』機能を持たせることで地域の介護・福祉の中核でありセーフティネットになる。次期改正に向けた闘いは始まっている。(JS Weeklyより抜粋)

以上である。この発言内容に特に異論はない。目指すべき方向性はその通りであろう。

このことの実現に向けて、会員施設のトップをはじめとした管理職、そして全職員がこのことを自覚するように啓蒙していくことは職能団体としての全国老施協の役割だろうと思うが、同時にそれだけで良いのだろうかという疑問も抱いている。

そこを担う人材育成を、会員事業者に任せ、実際のサービス提供現場に任せるだけで良いのかという疑問である。介護福祉士養成段階から教育しておかないと、そうした高品質サービスを実現し、将来的にその質を継続していくことは難しいのではないだろうか。そこが我々の業界に一番欠けていることではないだろうか?

特に現状で言えば、次期改正に向けての5期計画では、サービスの量は、その計画に応じて確実に増える。しかしそれを支える人材は枯渇していると言って過言ではない。その手当を具体的にどうするのかということが問題であり、この人的資源の確保を、すでに何らかの理由で退職した潜在的介護福祉士の再就職を促すことや、異業種からの転職で補うということは困難だ。仮にそうした方法で人員確保がされたとしても、老施協が目指すサービスの質を支える人材がそこで確保できるのかといえば、それは不可能である。

若いうちからきちんとした教育を受け、基盤となる基礎知識や基礎技術をしっかりと持つ人材を増やし、それらの人材が全国で介護サービス事業のリーダーとなっていかねばならないと思う。その絶対数が少なすぎるのだ。少なすぎるから有能な人材が、無能な多数派に潰されて質の向上が図れないという現状が存在するのである。

一番大事なことは、少子化が進行する我が国の現状においても、若い世代が介護福祉士を目指すことで、ある程度の絶対数確保ができることである。そのための対策が最も求められる施策である。そうでないと有能な人材をピックアップできないではないか。

そこで考えなければならないことは何か?

人材確保は、適正待遇の確保の視点から、介護給付費の水準の適正化ということを含めた政策として行われる必要があるだろうが、それと同時に、魅力ある介護福祉士養成校を作るということも必要なのではないだろうか。

少子化社会でも、看護師の養成校は大学・専門学校を含めて人気があるのだ。そこに人が集まらないという状況ではなく、新設の大学にも募集定員をはるかに超えた応募がある。それはもちろん看護師という資格と業務に対して適正報酬・適正待遇が得られるという社会的認識があるということは間違いないが、看護師養成課程の教育レベルへの信頼感でもある。

介護福祉士養成校に関して言えば、定員を満たすだけの応募さえない状況が全国津々浦々に見られる。その理由は、卒業後の有資格者に対する待遇という面にも不安を感じているという現状と同時に、介護福祉士養成校自体の教育レベルへの信頼感が低いという要素もあるのではないだろうか。

そこでこんな提案はどうだろう。

全国老施協が母体となって、介護福祉士養成校を全国の主要な地域に創設し、全国老施協が目指す介護を担う人材を直接養成するということである。

全国老施協という組織力を活用すれば、教育理念やカリキュラムに基づいて教育できる人材を探すことも容易だろうし、会員施設の中から随時、特別講義を行う人材を探し、講義を担当してもらうことも容易だろう。そこでは基本的に優秀な人材を選抜し、将来介護サービス分野でのリーダーとなるべき人材を養成し卒業させる。そして就職先も、老施協が推薦できる体制のある法人・施設に斡旋することにより、卒業後の待遇保障もできる、ということになれば、そうした養成校に入学したいという動機付けは確実に生まれるのではないか。

そうすれば自ずと、そこを目指す高校等の新卒者も増え、人材確保の一助となり得るのではないだろうか。

政治力も持つ組織なのだから、その力を生かした人材育成ということも考えても良いのではないだろうか。

これは組織の中の有力者が、個々に養成校を運営するという意味とは違って、老施協という組織自体が前面に出て人材を養成するということに意味があり、そこから新たな展望が開けると考えるのは的外れだろうか?

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