先日、僕が受講した介護支援専門員資格更新研修は、施設サービス計画を担当する介護支援専門員を対象としたグループであったが、サービス種別としては、特養、老健、介護療養型医療施設に加え、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)や特定施設の介護支援専門員も数多く参加していた。

グループホームや特定施設は、介護保険制度上は「居宅サービス」に分類されているとはいえ、そのサービスとは、自宅ではない別の「施設」に住み替えた要介護高齢者等が、その中で24時間、365日に渡りサービス提供を受けるもので、認知症対応型共同生活介護計画や特定施設サービス計画も、施設サービスと同じように、その「施設」の中で提供される「単品サービス」である。よってそこでのケアマネジメントとは、居宅介護支援の方法ではなく、施設ケアマネジメントの手法で行われるものであるから、施設ケアマネジャーの研修に参加したほうが、整合性が取れるわけである。
(参照:グループホームは在宅であるという誤解

しかしグループホームや特定施設の計画書については、居宅サービスに分類されているがゆえに、老企29号規定の対象とはならず、施設サービス計画書や居宅サービス計画書(居宅介護支援事業所)として定められている標準様式を使う必要はなく、どのような書式形態であっても、法令上に規定された内容が網羅されておれば良いわけである。

ただ今回の研修における事例検討で見た限りは、書式名称はさまざまであったが、様式自体は「施設サービス計画書」の1〜3表とほとんど同じものを使っているグループホームや特定施設が多かった。そのため、第2表の内容もほとんど特養の計画と同じ項目となっていた。

それ自体は、特に問題となるわけではないが、しかしグループホームと特定施設の介護支援専門員の方々は、機械的に施設サービス計画書と同じ様式を使って、そこに定められた項目をすべて埋めなければならないという「間違った」理解をしないように注意してほしいと思った。

施設サービス計画や居宅サービス計画と、グループホームや特定施設の計画に求められている法令上のルールは異なっているのである。以下にその内容を示すが、まずグループホームの法令との違いから、両者のケアプランに書くべき内容の違いを見てみよう。

まず特養のケアプランについては、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第三十九号)において次のように示されている。(地域密着型介護老人福祉施設も同様である。)

(指定介護福祉施設サービスの取扱方針)
第十一条5  計画担当介護支援専門員は、入所者の希望及び入所者についてのアセスメントの結果に基づき、入所者の家族の希望を勘案して、入所者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、指定介護福祉施設サービスの目標及びその達成時期、指定介護福祉施設サービスの内容、指定介護福祉施設サービスを提供する上での留意事項等を記載した施設サービス計画の原案を作成しなければならない。

↑このようにされ、さらに老企43号解釈通知(5)施設サービス計画原案の作成(第5項)において

また、当該施設サービス計画原案には、入所者及びその家族の生活に対する意向及び総合的な援助の方針並びに生活全般の解決すべき課題に加え、各種サービス(機能訓練、看護、介護、食事等)に係る目標を具体的に設定し記載する必要がある。さらに提供される施設サービスについて、その長期的な目標及びそれを達成する為の短期的な目標並びにそれらの達成時期等を明確に盛り込み、当該達成時期には施設サービス計画及び提供したサービスの評価を行い得るようにすることが重要である

↑このように目標は達成時期を定め、かつその目標は長・短期目標に分けて両者の達成時期をそれぞれ定めることとされている。

一方、グループホームのケアプランについては、指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年三月十四日厚生労働省令第三十四号)において

第九十八条  
3  計画作成担当者は、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえて、他の介護従業者と協議の上、援助の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等を記載した認知症対応型共同生活介護計画を作成しなければならない

↑このように目標については「目標と当該目標を達成するための具体的なサービスの内容等」が書かれておれば良いとされているだけであり、「達成時期」を定める規定は存在していない。

さらに 指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について(老計発第0331004号)の(5) 認知症対応型共同生活介護計画の作成、を読んでも達成時期の規定はないし、目標を長・短期目標に分ける規定も存在していない。

つまり、グループホームのケアプランでは、目標を定めておれば「達成時期」を示すための「期間」は記入する必要もなく、目標も長・短期に分けなくてもよいのである。だから両者の計画書には、単に「目標1」「目標2」などと記載し、それに対する当該目標を達成するための具体的なサービスの内容が書かれておればよいのである。

もちろんケアマネジメントのやり方として、目標を長短期に分けて、期間も定めるという方法が悪いわけではないが、そうしない方が職員や利用者がシンプルでわかりやすいという場合は、そうしない方法もありだ。これは決して法令違反にならない。

このことを理解しながら期間を定めているのならよいが、そうした理解がないまま「目標は長短期目標に分けなければならない」とか、「目標期間を記入しなければならない」と考えているのは問題だろう。なぜならそれは法令理解がされていないという意味だからである。

同じように特定施設入所者生活介護の省令を読んでみると、

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第三十七号)

第百八十四条 3  計画作成担当者は、利用者又はその家族の希望、利用者について把握された解決すべき課題に基づき、他の特定施設従業者と協議の上、サービスの目標及びその達成時期、サービスの内容並びにサービスを提供する上での留意点等を盛り込んだ特定施設サービス計画の原案を作成しなければならない

このように達成時期が含まれるが、解釈通知にはグループホームと同様、目標を長期、短期に分ける規定はない。つまり目標達成時期としての期間を書かねばならないが、目標は長・短期に分ける必要がないということで、グループホームのプランとも、特養のプランとも異なっているというわけである。特養、グループホーム、特定施設を3つ並べると、法令上のケアプラン作成ルールはそれぞれ異なるということになる。

また施設サービスと居宅介護支援のプラン作成ルールにも大きな違いのある部分がある。しかし今回の研修で事例検討を行った僕のグループのメンバーで、この違いを明確に理解している人は皆無であったので、ここであらため両者の法令上の違いを示しておく。

それは「サービス担当者会議」に関する法令ルールの違いである。

まず居宅介護支援におけるサービス担当者会議のルールは、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第三十八号)において

(指定居宅介護支援の具体的取扱方針)
第十三条
九 介護支援専門員は、サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者(以下この条において「担当者」という。)を召集して行う会議をいう。以下同じ。)の開催により、利用者の状況等に関する情報を担当者と共有するとともに、当該居宅サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。ただし、やむを得ない理由がある場合については、担当者に対する照会等により意見を求めることができるものとする。

↑このように必ずサービス担当者会議を行わねばならないという原則となっており、「やむを得ない理由がある場合については」担当者に対する照会を認めているに過ぎない。よって例えば「状況変化もほとんどないので、今回は会議を行わず照会と連絡だけで済ましましょう」ということはできないのである。

ところ介護老人福祉施設の法令で「施設サービス計画」の原案作成に伴うサービス担当者会議の規定を見てみると、ここに大きな違いがある。

指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日厚生省令第三十九号)の(指定介護福祉施設サービスの取扱方針)

第十一条6  計画担当介護支援専門員は、サービス担当者会議(入所者に対する指定介護福祉施設サービスの提供に当たる他の担当者(以下この条において「担当者」という。)を召集して行う会議をいう。以下同じ。)の開催、担当者に対する照会等により、当該施設サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする

わかりやすいように括弧を外して表記すると、「サービス担当者会議の開催、担当者に対する照会等により」となる。そして居宅介護支援の規定に書かれている「やむを得ない理由がある場合については」という規定はここには存在していない。

つまり施設サービス計画原案の作成に関する、「利用者の状況等に関する情報を担当者と共有」の方法は、サービス担当者会議と照会が同列に扱われており、最初から「会議を行う必要はないケースですから、照会だけで確認しあいましょう」という方法が認められているのである。

これは施設サービスという単品サービスについては、同じ職場で勤務している職員同士ということで、日常的にコミュニケーションを交わしながら情報共有が可能であり、あえて会議形式をとらずともケアマネを中心にして情報伝達を行うことでサービス計画の作成や、その内容の把握に問題はないと考えられるためであろう。

だから施設の介護支援専門員は、この法令上のルールを十分理解して、それを利用しない手はないということだ。機械的にサービス担当者会議(ケアカンファレンス)を開催して、施設サービス計画原案を作るということではなく、それが特に必要ではないケースについては、照会によって原案作成して、業務負担を減らしたり、職員が会議のために現場から離れる時間を削減するなどの配慮も必要だろう。

このルールの理解があるか、ないかで仕事に大きな差が出るかもしれない。

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