当施設の施設内職員研修は、文献や事例研究などを中心にした伝達研修という形で月1回のペースで定期実施されているが、毎年1回だけは職員全員が直接僕の講義を受講する機会を設けている。

その直接講義週間が今日から始まる。僕はこの期間中、同じ内容の講義を何回かに分けて行うわけである。伝達だけでは理解しにくい現時点で重要だと思う講義内容をその都度考えている。その時点で、直接全員に伝えたい内容の講義を行うのがその目的である。

予定は以下のとおりである。
24日(月)15:00〜
25日(火)18:00〜
26日(水)14:00〜 及び 16:00〜
27日(木)19:00〜
28日(金)17:00〜

この6回で全員がどこかの日程で受講することとなる。時間はその年によって異なり、120分とか90分とかいう年もあるが、今年はテーマと内容をぎゅっと絞って40分程度にまとめる予定である。普段レクチャーしていることは、今更繰り返す必要はないが、レクチャーしているのに実行出来ていない部分は、今回は深く突っ込む。

特に制度改正と報酬改定で、広域型特養の中でも、既存型特養で多床室中心の特養の経営実態は厳しくなった。そして今後は要介護高齢者の「住まい」の選択肢がさらに広がっていくのであるから、いつまでも特養の利用者確保が容易で、サービスの高品質かの工夫と努力をしなくても、利用者が確保できて運営に支障を来さないということではなくなりつつあるし、そもそも団塊の世代の方々が、介護サービスを利用する割合が増えてくることにより、介護サービスに対する利用者ニーズというのは、多様化するとともに、どんどん変化していくことが想定される。今後はそれに見合った介護サービスの提供という視点が、今以上に求められるだろう。

そのためにも、利用者は単なるユーザーではなく、「顧客」であるという意識をしっかり持って、全従業員が「顧客満足度」を意識したサービス提供を行っていく必要があるだろう。

顧客満足度を意識するということは、それとのミスマッチがあれば、顧客に変化を求めるのではなく、自分たちが提供するサービスを変えていかねばならないという意味になる。そこに介護サービス提供方法の工夫や進化が求められるわけである。

介護サービス事業の管理者の方々が、現場の職員の成長動機がなかなか生まれにくい、成長しようとしないことを悩んでいる声を聞くことは多いが、その理由は何だろうか。

少なくとも職場内に研修システムがあれば、職員教育は万全であると考えるのは間違いであろう。 なぜなら研修システムがあっても、システムに乗って、システムの中の教育過程を「こなす」義務しか感じられないところでスキルは獲得や向上は図れないからである。システム化された研修プログラムをこなすことが通過儀礼化してしまう恐れがあるということを考えなければならない。

同じく受講者に積極的な動機付けのない外部研修や他施設見学では、自施設の業務システムを変えるモチベーションに結びつかないという考え方も必要だ。特に他施設見学の問題点は、他施設(他事業所)の「いいとこどり」は自施設(自事業所)のケアに根付かない、ということである。 研修テーマをしっかり持って、他施設のサービスからヒントを得るという積極的な姿勢のない見学研修は、ほとんど意味がないだろう。

外部研修も受講させさせておれば、受講しないよりはマシだろうと考えるのは間違いである。参加させる外部研修の中身も問題なのだ。理念は大切だが、理念を実現する具体的方法論の伴わない講義を聞いても、受講者は現場に何も持ち帰れない。 理想論より大切な「常識」を理解していない職員が多いという現実から言えば、今求められている研修内容は、常識は何か、それを守ることがなぜ大切か、それを守るだけで何が変わるのか、ということの具体論が大事である。

特に、職員に対して介護サービスの意義や、目指す方向性を明確にしないとスキル向上の動機付けは生まれない。 そのために僕は、介護サービスの現場で職を得る人々の「誇り」を明確にすることで、スキルアップの動機付けが意識できるようになるのではないかと考える。 そうなると、介護技術の向上を目指す「動機付け」は、自分の方法論を変える必要性とイコールである。 そこで初めて自らの介護技術の限界を感じて、新しい方法論を勉強しようという動機付けが生まれる。逆に言えば、その必要性を持てない限り、新しい介護技術を得る必要性を感じられず、講義を受けても身にならないと思う。

そう言う意味での「基礎研修」が、僕の全職員を対象にした講義の位置づけである。そこでのキーワードは「普通の暮らし」である。

それって普通


「人を語らずして介護を語るな2〜傍らにいることが許される者」のネットからの購入は
楽天ブックスはこちら
アマゾンはこちら
↑それぞれクリックして購入サイトに飛んでください。

介護・福祉情報掲示板(表板)