アルツハイマー型認知症を病理学的に表現するとすれば、「脳内で特殊なタンパク質異常が起こり、脳内のニューロンが消失する病気」ということができるだろうか?

アルツハイマー型認知症が発症する過程では、
1.ベーター蛋白質が増える。
2. タウ蛋白が増える。
3.神経細胞死が起きる 。
4.アルツハイマー病が発症する 。
ということが分かっている。よって脳内神経細胞が死滅することにより、脳萎縮が引き起こされると考えられている。

ところで、現在アルツハイマー型認知症の原因として有力視されている「アミロイド仮説」を、ごく簡単に説明するとすれば下記のようになる。

脳内にはアミロイドβの前駆体である、「アミロイド前駆体蛋白」というものがあるが、これがセレクターゼという酵素によってばらばらにされて、分解排出されていくという過程が繰り返されている訳である。ところがアルツハイマー型認知症になる人の脳内では、この分解排出がうまくなされず、無害であるはずの「アミロイド前駆体蛋白」が、アミロイドβ蛋白質に変化する。

このアミロイドβ蛋白質は非常に凝集(集合し沈殿することをいう)しやすい特徴を持つため、脳内でどんどん凝集し、沈着(たまって固着すること)してしまう。ここがアルツハイマー型認知症の始まりとなって、この状態は実際に症状が発生する10年以上前から起こっていると考えられている。そしてアミロイドβ蛋白質の沈着から、次にタウ蛋白という物質が細胞質中で線維化(繊維化)し、沈着し、神経が変質して神経細胞死が起こり、認知症の症状が出はじめ、神経細胞の炎症が広がることで、症状が進行悪化すると考えられる。

アミロイド仮説」に基づく認知症の予防薬の開発では、このアミロイドβ蛋白質の凝集がアルツハイマー型認知症の原因であるとして、アミロイドβ蛋白質が凝集する段階で、このタンパク質を攻撃してなくしてしまうワクチンを開発するというもので、厚生労働省が「10年以内にアルツハイマー型認知症の予防薬を開発する」と宣言してから久しい。

前述したように、アルツハイマー型認知症の症状が出るのは、アミロイドβ蛋白質が凝集する段階から10年以上経ってからだと考えられており、症状が出ている段階で、アミロイドβを除去しても神経細胞の死滅を止められないため、認知症の予防や改善には繋がらないのである。

しかし日本におけるアルツハイマー型認知症の予防薬の開発が進展しているという話はあまり聞かれない。マウスの実験では、マウスの脳内にアミロイドβ蛋白質を作り出すことに成功して、これを攻撃してなくすというところまではできたとされているが、それから既に数年経っている。そして今でも厚生労働省は、「10年以内にワクチンを開発する」と言っている。

一部の関係者は、このことに対し、「永遠の10年」と揶揄している。本当に我が国で、アルツハイマー型認知症の予防薬が開発される日は来るのだろうか。

ちなみに、アミロイドβ蛋白質を標的にして治験が進んでいた、米イーライ・リリー社の「セマガセスタット」は、2010年8月に一旦開発中止になった。その理由は、軽度から中等度の患者約2.600人が参加した2つの長期フェーズ3の予備段階の結果において、セマガセスタットの投与を受けた患者群では、疾患の進行の抑制が見られず、認知機能の改善度合いを測る臨床的スコアの悪化を伴い、日常生活動作能力も低下し、皮膚がんリスクも統計的に有意に高まることがデータで示されたというものだ。つまり単純に言えば、アミロイドβを取り除くことができても、認知機能の低下は抑えられなかったということである。

こうした状況を鑑みると、アルツハイマー型認知症の予防薬の開発はまだまだ先の先であるし、本当に人類のたどり着けるゴールなのかは大いに疑問であると感じざるを得ない。

ちなみに、100歳を超えた双子の姉妹として有名だった「きんさん、ぎんさん」のぎんさんは、アミロイド斑が出来ていたにも関わらず、アルツハイマー型認知症を発症しなかったそうである。ぎんさんは毎日魚を食べていたが、脳の神経細胞が炎症を起こしても、魚に多く含まれているDHAが修復することが分かっており、魚を毎日食べていたぎんさんは、そのためにアルツハイマー型認知症を発症しなかったのではないかと言われている。

最近では、ぎんさんの3人の娘さんが、テレビ等に頻繁に登場して、「人生相談」を受けたりしているが、きっと彼女たちも、ぎんさんと同じような食生活をしているから、いつまでも頭脳明晰なのではないだろうか。ラーメンばっかり食べている僕はかなりやばい。

またフランスのボルドー大学のジャンマルク・オルゴゴザ教授らの研究グループが、65歳以上の高齢者焼く3.800人を数年間、追跡調査した結果、ワインをグラスで3〜4杯飲んでいる人の場合、アルツハイマー病の発生率が、酒を全く飲まない人のわずか1/4にとどまっていることが分かった、としている。

予防薬も治療薬もない現況では、アルツハイマー型認知症を予防するために、ワインを適量飲みながら、魚を中心にしたバランスの良い食事を心がけるしかないのだろうか。

なお糖尿病になるとアルツハイマー病を発症する危険性が2倍以上になることは、国内外の疫学研究から知られていることで、血糖値の高い僕等は、糖質制限食などを考ええばならないのだろうかと思ったりする。

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